5月は馬鹿を走らせる
紺の制服から、白のシャツへ。
一枚一枚薄くなり、肌を晒すが健全。
今まで涼しさなしの寒さばっかにしていた風は爽やかに
「女子のスカートは捲れねぇーかな」
「そーいう悪戯風に変わるもんだよなぁ」
男子高校生達は馬鹿を走らせる。
黄昏気分をかもし出して、考えることはアホな事に染めておく。そーいうくだらない事があって今、彼等は学校生活を送っているわけだ。
「……相場。ふと思ったことだが、え?あいつがあんなパンツ履いてたの?みたいな、リアクションしてしまう女子は誰だと思う?」
「言っている意味が良く分からないが、舟。とりあえず、俺は付き合ってくれる可愛い女子は誰だと思うか考えたい」
「どっちも夢ほざくなぁ~」
モテたいだろ。チヤホヤされたいだろ。男も女も関係なく、人間そーやってするものだ。
風に吹かれ、長くもねぇ髪が揺れ、廊下の窓から顔出して、舟虎太郎と相場竜彦は並ぶ。
お互い、彼女なしの友達である。しかし、それは今のことだ。いずれは、出し抜いてやると黒い男の友情を併せ持つ。
「ここから見えるのは町ばっかだな」
「だな。町というか、建物ばっかだ。3階じゃ景色も良くねぇ」
うにゃ~と体を前のめりする相場。男と一緒に景色見ても虚しいだけだ。
「なんか面白い事ねぇのか?」
「今はねぇな。金がねぇし。バイトしようぜ」
「だな。友達と一緒にやるとお得らしいぜぇ」
「お前と一緒にバイトか?」
「大人のお姉さんやお姉ちゃんと知り合いてぇな」
「高校生から見れば全員大人の女だろ」
「だな」
無気力感ハンパねぇ。だる過ぎる会話。
「履歴書書かないとマズイよな」
「あー。あと、顔写真」
「顔写真って、あのあれか。駅前とかにある奴。四角いボックスの」
「そーそー。高いんだよな、1コインって。複数枚付くけど……」
キンコンカンコーン
「やべぇ。次はクソダルイ国語だっけか?外見てたら、時間忘れた」
「いいんじゃね?面倒だしよ。それより顔写真、撮りに行かないか?自転車乗れば、すぐだろ?」
「あー。そうだな。そっちが大事かも。大事だな。履歴書も書こう」
「バイトの面接の練習もしようぜ」
「よ~し、先にバイトを決めてから、学校の授業を受けよう」
◇ ◇
とある仕事場の面接会場。
相場と舟の2人は同時に面接をしているところだった。
「えー。相場くんと舟くんだね」
「はい」
「うっす」
「よくこのお店のバイトの面接に来てくれたね。早速なんだけど」
もう一度、面接担当の人は時計を見る。
「……君達、学校は?今、11:00なんだけど」
「バイトしてから学校に行きます」
「先にお金が欲しいです」
「学校よりバイトを優先するほど、仕事はマジメに取り組みます」
「暇があれば金を稼ぎたい気持ちです」
それはある意味社蓄要素の高い発言であるが、明らかに言葉に力がない。そして、表情にも力がない。人手不足ではあったが、見込めない人間を雇ってしまうのは人事の責任。
「学校くらい真面目に過ごせないなら、仕事も真面目にこなせないよ」
「………えー……」
「……マジっすか」
お祈りの言葉にショックも受けない、軽々しさ。
常日ごろ真面目であれと言っているわけではないが、学校を卒業したその人は
「学校を0円で働く仕事場だと思いなさい。その仕事場に赴けない人は雇えませんよ」
「勉強、嫌いなんすけど」
「仕事するためには勉強してくれないと。真面目は言葉じゃなくて、行動だから」
「そっかー」
「まぁ、私もそーいう感じで学生してたから。今日はありがとうね」
面接は終了した。
◇ ◇
「なぁ、金なくても彼女できるか?」
「それは無理だろ」
「勉強しないとダメか」
「そうなんじゃないか。ダルイけど……」
「ずーっと勉強かよ」
高校生ぐらいではまだ気付かない。遊んでいる方が楽しいと思うのはそうだ。
そーやって遊びながら、ゲームをやっている。そのゲームには難しいテクニックや工夫も要求され、積み重ねと対策が必要なのだ。
まだその時は勉強とは認識できていない。
「金がない。最近、金かけないと勝てねぇや」
「バイトしないと、課金できねぇな」
そして、いつか止めるや捨てる、終わるがあるとも知らず。
高校生達は馬鹿をやって、より大人になっていく。しかし、馬鹿をやってこそ人生なのである。