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遠藤徹の視点 4

 意識を取り戻すと先ほどの暗い空間とは対なる真っ白な空間にいた。綺麗に磨かれて埃がない電球の光が私の完全に光に慣れ切っていない目を刺激する。

 「先生。秋山さんが意識を取り戻しました。」意識が完全回復したわけではないが近くから女性の声が聞こえ僕の名前を言っている

 声の下女性の方を見てみると汚れが一切付着していない真っ白な白衣。同様に真っ白な被り物。衣装でこの女性が看護師ということが解り、同時に僕はあの後病院に運ばれたのだということが解った。

 看護師の女性は僕の意識が回復したかの確認をしてきたのでそれに応じるとしばらくして齢をとった見た目をしている男性が白衣をまとって私の所に来た。

 「名前を言えるかね?」私が名前を答えると男性は満足そうな顔をして問題なしと言ってきた。

 「なぜここにいるか解るかね?」男性の質問に答えると男性は再び問題なしと自分に念じるように呟く。

 「問題はなさそうだ。腹部に異常なほど打撃を与えられた跡があるが骨が折れていたりはしていないからすぐに退院できると思うよ。」男性は僕にそう言うと少し複雑な顔をしながら再び言葉を発する。

 「ただね。その君が意識を失っていた場所で事件があったらしくてね。その件で警察が話をしたいと言っているんだ。」事件?あの後火事でも怒ったのであろうか。

 「でも意識を取り戻してすぐそんな事はさせられないから明日警察の人には来てもらう。明日朝からもしかしたら警察が君に会いに来るかもしれないからそこは頭に入れておいて。」男性は私にそう告げると看護師に指示をして私から離れていった。

 事件ね。僕以外にも人間は居たのだからそちらに話を聞けばいいのではないのか?


 「井上君の死体が発見されたのです。」目の前にいる男性の恰好は警察官というよりセールスマンのようなスーツ姿だが話は淡々と進む。

 捜査上の関係で詳しくは話すことが出来ないのだが僕の近くで井上の死体が発見された。何か知っている事はないかという事を聞かれた。

 だが僕は意識を失っていて何もわからないし言えることは井上に連れていかれて殴られたという事、彼が途中で大塚を呼んでいた事その二つぐらいしか言えることはない。

 僕は警察官に説明している時に思わず「僕を疑っているのですか?」と聞きそうになった。質問も教えてくれる情報も明確に教えてくれずぼろを出すのを待っているように感じる。だが僕は犯人ではないし何も言えることはない。

 「ボイスレコーダーが落ちていませんでしたか?あの時ボイスレコーダーを使って井上君との会話を録音していました。途中で彼に見つかって投げ捨てられてしまいましたが、電源は切られていなかったはずです。」僕の質問に対して驚いた表情も見せずに淡々と警察官は答えた。

 「まだ発見出来ていませんね。本当にそんなものがあったのでしょうか?」やはり僕を疑っている。僕が反論をしようとした時に警察官は再び話し始める。

 「捜査に協力していただきありがとうございました。」立ち去ろうとする警察官に私は思いきって質問をすることにした。

 「すいません。」

 「なんでしょう?」

 「僕を疑っていますか?」警察官は少し驚いた様な表情を見せた後先ほどの無表情に戻り質問に答えた。

 「いえ、参考に話を聞きたかっただけですので。」無表情に戻った警察官は工場機械の様に僕にお辞儀をして去っていく後ろ姿を見て聞こえないように「嘘つき」と言った。

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