遠藤徹の視点 3
井上の後について行くと学校近くにある森林にまで着いた所で彼は立ち止まり僕のお腹を突然殴ってきた。
突然腹部に生じた痛みに僕は思わず腹を押さえると井上の手が頭の上を押さえつけてきて地面を顔にくっ付けさせられる。
地面に顔を押し付けられた僕の口に微量ながら水分を仄かに帯びている土が入ってきて、臭いが広がりとても気分が悪い。
「徹ちゃん。こんなんで泣いていちゃ駄目ですよ?まだまだ始まったばかりなんだからさ。」井上は言葉を言い終えると同時に地面に倒れ込んでいる僕のお腹を思い切り蹴とばした。蹴られた事により空気が口から一気に出ていき、腹には痛みが生じ、中に納まっていた食事が口から出そうになる。
「お前さ、何なの?最近調子乗っているだろ?」
「別にそんな事はな…。」僕が言葉を言い終える前に彼が再び僕のお腹を思い切り蹴とばす。
「いいか、最近お前の態度存在全てが俺達にとって不快そのものなんだよ。つまりよ、二度と学校に来るなよ。」井上の顔を見ると再び優越感に浸った笑顔の表情になっていた。
「君にそんなの決める権限なんて…。」僕が全て言い終える前に再び僕のお腹を蹴り飛ばしてきた。
「さっきも言ったよな?お前に拒否権なんてないんだよ。お前は弱者なんだから強者の言葉に従うしかないの。馬鹿か?お前は馬鹿か?もう喋んじゃねぇよ。その声も不快だし息も臭いんだよ。」そうして再び数々の暴力が僕にやられた。やがて体力を使い果たしたのか、井上は突然暴力を止め僕を椅子代わりにして座り携帯をいじり始めた。
「グットアイディア!俺って天才かもな。徹ちゃん意識ある?」僕はうなずく気力も残っていなかった為無反応でいると再び腹を足の裏で蹴られる。
「…ヴっ。」
「きちんと答えろよ。頭いいんだろ勉強馬鹿が。これからよ、俺の仲間を呼ぶからよ。さらに楽しいことが始まるぞ。嬉しいだろ徹ちゃん?…答えろよ。」そして再び僕の腹を足の裏で蹴り飛ばした後、携帯を操作して電話を始める。
「電波悪いな。音が途切れ途切れになっている。お?繋がった、繋がった。もしもし。大塚?今大丈夫?電波悪いな。ちょっと電波悪いからメールかなんか送るからそこに書いてある場所に来いよ。じゃあな。」電話を切ると再びスマホを操作し始めた。
大塚は確か井上の後ろに金魚の糞みたいについて行っている奴だ。井上が女子に人気があるからそのおこぼれをもらおうとついて行っているのかは知らないが要は糞野郎という事だ。あぁ死ねばいいのにこの僕の上にいる馬鹿。ろくな会話が出来ていない時点で低能さが解るし、こんな森林で電波が言い訳ないだろう。暇つぶしの為なんかで僕の貴重な時間を取らないでほしい。
「なぁ徹くん。最近よ、お前見たいに気持ちの悪い女子が居たんだよ。」突然、井上は一人語りを始めた。
「俺の事をストーカーして来やがってよ。気持ち悪いったらありゃしねぇよ。まぁ何日か前にそいつがどうやら美術室で意識不明になったらしくてよ。当分の間学校が使用禁止になっちまって、暇なんだよ。」聞いてもいないのに自慢するように話を続ける。
「で、暇を潰している時にお前が居たんだよ。なぁ、お前みたいな勉強しかできない人間失格野郎が俺みたいなクラスの人気者のストレス発散に使われるんだから、ありがたいと思わないとな。」何がありがたいと思えだよ。お前みたいな性格ゴミ野郎と関わりたくもない。まぁ僕が隠し持っているボイスレコーダーが現在お前の行っている事を録音中だけどな。そんな事を考えている僕の考えに気が付いたのかは知らないが井上は僕のポケットを漁り始める。
「おい、財布持ってんだろ?お前みたいな甘ちゃんはママとか言いながら親に媚びを売って暮らしているからな。それはもう私なんかじゃあ想像できないようなお金をもらっているんだろ?」井上はポケットを漁り僕のポケットに入っている中身を外に出すと隠し持っていたボイスレコーダーも見つけてしまった。
しばらく固まったようにボイスレコーダーを見つめるとやがて子供が起こった事に対して口では怒っていないという親のように妙に冷めた表情で僕に聞いてきた。
「なぁ、なんだこれ?」解っているが聞いたのだろう。
「なんだって聞いていんだよ!」再び腹を蹴られた。
「ふざけやがって。お前みたいな奴が俺に逆らおうとしやがって。何度も言うがお前にそんな権限も権利もねぇんだよ!」怒りの沸点が限界を超えたのかはわからないが先ほどの蹴りとは代わり何度も何度も連続で僕のお腹を蹴り飛ばしてきた。
なんで僕がこいつに蹴られないといけないんだ。こんな奴は死んじまえばいいんだ。死ねばいい。こんな奴は死ね。
消えていく意識の中僕は何度も何度もこの男が死ねばいいと念じていた。