遠藤徹の視点 2
久しぶりに外に出た。なぜ出たかって気分転換というわけではない。別に病んではいないし勉強が嫌ではないからそもそも病みはしない。
買い物である。何を買いに来たかを説明すると本である。何の本かと聞かれたら別に勉強に関係ない本なのだが。
書店に着くと僕は目的の本を探し始めた。書店特有の少し張り詰めた空気を全身で感じながら本の背表紙をざっくりと見てみるが目的の本を探すが見つからない。まぁ目的の本を探すより新たに出た本を見ておきたかったからいいのだけれど。
結局何も買わないまま書店から出て家に帰ろうとすると問題が発生した。
「あら、あらら?徹ちゃんじゃーん。いつものお勉強はどうしたんですかー?」僕が帰って姿を見つけたクラスメイトの井上が突然話しかけてきた。
本当にかったるい。別に僕が休日に歩いていようが何をしていようとも自由じゃないか。人を馬鹿にした態度で話す彼を僕は無視をして歩き始めると、僕の肩を掴んできた。
本当に面倒だ。学校で僕の悪口を聞こえるように言うのも本当に苛々するし多分僕が苛々しているのを見て楽しんでいるのだろう。それで休日までそんな他人を馬鹿にするような態度を取った奴と関わりなんて持ちたいと思う方が可笑しい。
「待てよマザコン。俺が話しかけてあげている無視はないだろ?」肩を掴んだ主の方を向くと彼はブライドを傷つけられた糞ガキの顔をしていた。
掴んでいる手の力が段々強くなっていき、肩に痛みを感じるほどの強さで掴まれているが僕に力がないので肩の手をどかすことも出来ない。
「そう、そう。お前みたいな勉強しかやらない弱者は俺達が喜ぶような欠点を見せ付けてくれればいいんだよ。そうすれば俺達はお前を馬鹿に出来て優越感に浸れる。弱者は強者のいう事を聞いていればいいんだよ。徹君。」肩に置いた手を僕の力では退かせられないのを解っている井上は優越感に浸った厭らしい笑顔を向けながら私に言ってきた。
「それで何?」痛みで歪んだ顔を隠すように精一杯無表情で彼に聞くと、餌を得た魚の様に嬉しそうな顔をだした。
「ちょっとね、着いてきてほしいんだよ。部活動が禁止になってさ、俺暇なんだよ。だから暇つぶしを手伝ってほしいんだよね。」
「嫌だ。」僕の反論に対して先ほどの笑顔が消え、不快感に満ちた表情をした。
「うるさいな。お前に拒否権なんかねぇんだよ。とにかく着いて来ればいいの。」肩を掴まれたままの僕は引きずられる様について行った。