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弱者は誰かを呪いながら死に絶える

-誰かの心-

もうすぐおしまい。


-ニュースの一言-

近隣の住民は外出を控えて下さい。

 目を覚ました徹はまず眼球を動かし前方の状態を確認する。

 とりあえず生きている。周囲には色々な破片が落ちているのが確認できる。

 起き上がろうとするが徹はその場から何故か動けずにいた。

 疑問に感じ右の人差し指を動かそうと試みるが、肉体と脳が離れたように一切動かず感覚も無い。

 「…。」声を発しようとするが、何も音を発せず空気が出入りするだけの音が虚しく響いた。

 もしかして俺は死んだのであろうか?だがこの眼球がゆっくりだが自由に動かせるのだから生きているとは思うのだが確証は持てない。

 再び全身を動かそうとするが力を失ったように全身は動かない。これが死というやつなのか?どうしてだ、だがそう考えても何も出来ない徹はただその場で砕けたコンクリートを見ていた。

 眼球を必死に動かすと倒れている徹の上に何か人影が見える

 レンズのピントが合っていない時のようにぼやけて見えるがレンズのピントを合わせる為に集中をするとその人影が白ということが判明した。

 「……。」口を動かそうとするが声は発せず乾いた呼吸音だけが口から出てきた。

 「目を覚ましましたか。」白は表情を変えぬまま徹のちょうど頭を見下ろしながら立っている。

 「……。」徹は白に答えようと話そうとするが、声帯が振動するだけで何も話すことが出来ない。先程から何か力の源が無くなったように全身に力が入らないのだ。

 「声が出せないのですか?」白は心配した表情を見せながら膝を曲げ、顔を近づけてきた。

 「……。」何度も試すが声は発せずにいた。

 「声が出ませんか…。とりあえず安心してください。目標の少女は死にました。とりあえず危険は去りました。」白の言葉を聞いて安心するが、胸の奥にある突っかかりが取れないような違和感を覚える。

 「とりあえず帰りましょうか。」そう言うと白は倒れている徹を軽々と背中に乗せ崩壊している住宅と有紀の死体から離れていった。


 車に乗せられた徹は後ろの席で車酔をした人間の様に口をポカンと開けながら前方の少し上を何も考えずに見ていた。

 揺れる車の中には前方の席で白が運転を行っており、その隣に千里は無言でいる。

 時々強く揺れる車の中では音楽も流れず、徹の呼吸音と車のエンジンの音、それとタイヤが地面と擦れる音が響き渡っている。

 徹は視線だけを動かし自分の横にある窓ガラスから外の景色を見る。移動をして数分経ったからなのか、外は昨日岩を見に行く際の移動時に見た風景は特に変化は見られなかった。

 暫く移動をしているとやがて車は臨時駐車場の近くで止まり駐車を始める。

駐車を終えると、騒々しい車のエンジン音が止み徹の呼吸音だけが社内でか細く聞こえていた。

 「徹様。」沈黙を破り、白は徹の方を向きながら名前を呼んできた。彼女の顔を見た時徹は彼女の額に先程までは無かった物を見て驚いた。

 白の額にはかつて意識を失う前に安西千穂と同じ角が生えていたのだ。

 「……。」驚く徹は未だ声が出ない。

 「短い間でしたがご苦労様でした。」表情を変えぬまま白は徹の目を見ながら命令をする。

 「死になさい。」彼女の言葉と共に徹の心臓はゆっくりと動きを止め、眠るように死んだ。 

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