現在の遠藤徹の視点
突然俺の方に向かってきた大量の靴は、自分の周りに発生させた炎によって消え去り、家の中は俺を中心にして炎が広がっていく。
自分の周囲に発生させた炎を消すと周囲の炎の燃え移った家具などの火は消えておらず、先程まで無かった巨大な穴から煙が外に漏れ出している。
敵はここから外に逃げ出したということがすぐに理解できた。
家の中が炎で燃え上がっているせいで煙が凄まじい。このままでは自分が一酸化炭素中毒で死んでしまう。
開いている穴に向かって飛び降りると、椅子の拘束は解かれ寝ている様に目を瞑っている母親を抱きかかえている少女がそこに居た。
「…お母さん。」少女は座った体勢で膝の上に母親の顔を置きながらじっと見つめている。
さて、どうしようか…。彼女に俺の火炎放射器の様に発生させる炎も、効かないだろうし、彼女に向かって突進をしたとしても動きを止められてしまう。
1人で戦ったら勝ち目なんて無いだろうな。そう思いながら彼女の方向に炎を発生させる。
ガスバーナーに火をつけたように一瞬で直進した炎は少女の方に向かうが、丸い盾に守られているように炎の行き先はエビの尻尾のように少女の目の前で二つに別れた。
「あなたが殺したのですよね。」少女は心のこもっていない声と表情で徹の方を見る。
「あぁ、そうだ。俺が殺した。」初めて他人を包丁で刺した。不快感と恐怖心で全身が震えそうになっているがなんとか隠さないといけない為、心の中で何度も落ち着けと命じる。
「なぜ関係の無い母さんを巻き込んだのですか?」今にも自殺をしそうな抑揚のない声で徹の方を見ながら彼女は聞いてくる。
「お前が力に目覚めたからだ。」
「ただそれだけですか?」少女は相変わらず母親の顔を見つめている。
「あぁ、それだけだ。」俺の言葉が引き金になったのか、先程までの無表情から怒りで全身を震わせ、少女の周囲に存在する石が音をたてて砕け始める。
これが俺達の狙いだ。
あの少女の力は念力。どんな時も敵からの攻撃を自分の居ない場所に反らすことが出来るはずだ。たとえ銃弾だろうと彼女は弾くことが可能であろう。
だが、怒りで力を制御出来ていない時は?
その時なら防御をする事も忘れて暴れまわるはずだ。
元に怒りで周囲の岩を粉々に砕いていることを彼女は気づいていないし、目には俺に対しての殺意しか存在しない。
目の前の少女の力は俺以上の力だと部屋を脱出する際に通った巨大な穴を見て確信した。
怖い。俺は心のなかで目の前にいる少女に怯えているが、そんな素振りを見せたらこっちが負ける。数カ月前の様な弱気な所を見せてはいけない。
どうにかこの少女の気をこちらに向けないといけない。俺が気を逸らしている時に白が遠くから狙撃を行い殺すという作戦だ。
この間と同じ、超能力より強力な鉛球をぶち込む。それで戦いは終わる。
少女の後ろに生えている数本の木は、埋まっている大根を引き抜いたようにメリメリと音を鳴らしながら空中へ浮かび徹の方向に向かって来たが、徹は火炎放射器のような炎を木の方に向かって放出し消滅させた。
「ふざけやがって。いきなり飛ばしてくるなんて、飛ばすなら何か一言言えって。」
「何もふざけていない。お前を殺す。何の慈悲も無く殺してやる。」そう言いながら空中に浮かんだ少女はその場で動きを止める。
徹は疑問に思ったが火を打とうが当たらないことは知っていたのでその場で動きを止めていると、後ろから無理やり草を引っこ抜いた時の音を数十倍も大きくした音が聞こえ振り返る。
「嘘だろ?」先程までいた住宅が地面から無理やり引き剥がされ空中に浮かんでいた。唖然として口を開けていた徹に無慈悲に少女は一言だけ告げる。
「死ね。」少女の言葉が終わると同時に住宅は徹の方に向かって突進をしてきた。
徹は住宅とは逆方向に向かって走ると、乾いた空気を壊す様に銃声が鳴り響いた。
徹の方に向かっていた住宅はその場で力を失い地面に向かって落ち、周囲は煙で包まれる。
地面に落ちた衝撃で発生した風と煙で辺りは見えなくなるが、徹は住宅には直撃せずにその周辺で意識を失っていた。




