遠藤徹の記憶 1
-少年の心の一部-
違和感が拭えない。
-ニュースのテロップ-
朧駅周辺で巨大な爆発音!!住民は!!
「とある場所に貴方を案内しますわ。」いつもの様に掃除を終え、練習をしていた俺に対して、ある日突然千里は言った。
千里の近くに居た白は予め聞かされていたのか、動揺の表情を見せず無表情で佇んでいる。
「はぁ?」だが俺は突然言われたその提案に対して、驚きと共に呆れてしまい妙に気の抜けた声を出してしまった。
「その気の抜けた声はなんですの?」
「いや、だって。あの襲撃以来この家を出ていなかったじゃないか?」数か月前に起こった大塚由紀夫の事件以来、俺を含む三人は家から出ずに一日をずっと過ごしていた。正確に言うと俺は外に出ることを禁止された。
そんなルールの元生活をしていたのに急に外に出ると言いだしたのだから驚くのは仕方がない。
「そうですわね。あれから何日経ちましたっけ?」千里が言うと近くに居た白は決まり文句の様に日付を言う。
「あれからちょうど1か月です。」
「そう…。もうそんなに時間は過ぎたのね。徹、あなたには情報を制限していたわね。」
あの日から俺はこの家での生活を保障された代わりに情報の制限としてテレビ、PCの使用は禁止。そして白の仕事を出来る範囲で手伝っていた。
「あぁ、そうだ。別に観たい番組とかはないからいいんだけど。ただ、ニュースはみたいとは思っていた。」俺が言うと千里は同意をしながら話を続ける。
「でしょうね。あなたは白の手伝いをして、私にも協力的で信頼できる人間だと確信しました。」徹は目の前で微笑む千里を見て心の中で今の発言は嘘だと思った。
「ありがたい。信頼したから俺を外に出すっていうことか?」徹は冗談交じりにそんな事を聞くと千里は再び優しげな微笑みを浮かべ答える。
「ええ、そうです。より正確には白からのお願いですけれど。」千里はわざとらしく白の方を向くと、白はずっと保ってきた無表情が崩れ動揺しながら小さな声で呟く。
「お嬢様…。その話は秘密にしてくれる約束では…。」
「お茶目っ気ですわ。」白の方を見ながらワザと真っ赤な舌を少し出しながら千里は言う。
「へぇ、ありがたい。ありがとう白。」俺が言うと白は無表情に戻り「いえ…。」と一言だけ返した。
「まぁ白のお願いと言うのと私の予知夢のタイミングが合っただけなのですけどね。」先ほどまでの微笑みは消え真剣な表情になると俺の方を見て千里は言った。
「次の戦いは明日ですわ。だからその前にあなたに見せなければいけない場所があるのです。」
白の運転する車に乗りながら、数か月前に突如出現した岩の話を千里はしだした。
「その事件は聞き覚えがある。駅前に巨大な岩が突如生えてきたという奴だろう?」俺の体調が悪くなった日に出現した岩の話だから記憶の中に残っている。
「ええ。あの岩が出現した後、いまだに何も処理をされていないのですわ。」千里の言葉に疑問を感じた俺は質問をする。
「なぜ?確かあれって駅前の道路を突き破って生えてきたんだよな。邪魔になるから工事とかをしてどかさないのか?」
「ええ、当初はその予定だったのですがそれが行えなくなってしまったのですわ。いえ、言葉が悪いですね。正確に言うと出来ないのです。」
「出来ない?」
「ええ、まずあの岩を破壊する為に工事を行おうとした者達は皆岩に触れる事すら出来なかったのですわ。」
「岩に触れられないってどういうことだ。まるで岩が破壊を阻止するように超能力でも…。」自分で言ってハッとした。その俺を見て千里は満足げに話しを続けた。
「そうですわ。あの岩が発生した日。私達は力を授けられたのです。そして岩は今もなお、破壊する者を拒んでいます。電動工具や銃器は岩に触れる前に動きを止め、人々は触れる前に吹き飛ばされる。あの岩は神様からの祟りなんて言われて恐れられています。」彼女話が終わると同時に車が停止し、白は「着きました。」と千里の方を見ながら言った。
車を降りると大して美味しくもない空気と、綺麗でもない風景が徹を迎え入れてくれた。
「相変わらず汚い町ですこと。」白に扉を開けてもらった千里は地面に足を付けるなりそんな事を言った。
正直言って千里のその意見には心の中で同意した。空気は別に綺麗でもないし、空は若干濁った色をしている。中途半端に大きい建物が少し建っていて都会にも田舎にもなりきれない中途半端な感じが強い。
「そうですねお嬢様。」白はいつもの様に同意をすると日除けの傘をさしながら千里の隣を歩く。
「さて、徹。少し歩きましょうか…。」千里はいつもの様に微笑みながら俺の横に立った。




