現在 岬有紀を中心で起きている出来事 2
夏の香りを感じながら私は家の前に居た。
最後にお母さんに会おう。千穂の所に行こうか迷ったけれど、今の私が彼女の所に行ったら迷惑になるのだし、最後にお母さんの所に行って罪を償いたい。きっと事件の発生した次の日なのだから警察も居るであろう。そこで母に謝罪して捕まりたい。
会ったら私の事を殺すかもしれない。されて当然なことを私はした。だから親に私は裁いてほしい。そんな身勝手な考えで家に向かう。
誰とも遭遇しないように家に向かうと私の予想とは違って家の周りにはパトカーも停まっておらず、家の周辺にも誰も居ない。
疑問に感じながらも玄関前まで向かい家のドアを叩くと反応は無く、蝉の音が響き渡る。暫く待っても反応が無いのでドアノブを捻ってみると「ガチャリ」と音をたてて扉が開いた。
『なんで扉が開いているのだろう?』不安な感情が溢れ出てくるが、私は扉を開けてゆっくりと家の中に入る。
ひたひたと床と足が触れ合う音が不安感を膨張させる中、突然声が聞こえる
「今、私の横にあなたの母親がいる。もし抵抗したら母親の命は無い。逃げても母親の命は無い。」声変わりし始めた中性的な声が私の耳元まで聞こえる程の声で話を始めた。
私と同じ超能力に目覚めた人間がこの家に乗り込んできて、母親を人質に獲っている事はすぐに理解できた。
だが、家の玄関前で動きを止められてしまった私からは何も見えない。
「…母さんの声を聞かせて。」私の声を聞き入れた男は数秒の間黙りこみ、何か木と木がこすれ合う音が聞こえ始め、叫び声が聞こえた。
「痛い!痛い!!止めて!!」
「母さん!!」タバコと酒によりし枯れた声が聞こえてきたは。母の叫び声は何度も聞こえやがて弱ったように不安定なリズムで呼吸をする声になる。
「お前の母を今包丁で刺した。今すぐお前が自殺をすれば助ける。すぐに選択をしないと母親は死ぬぞ。」男は淡々と語りを終えると、傷口に指を入れる音と共に母親の叫び声が再び聞こえ始めた。
「止めて!!」私の叫び声を無視して母親の叫び声は続く。奥から聞こえてくるのはもはや言葉ではなく叫び声であった。
「もう死ぬぞ、早く決めないと母親が助からないぞ。」
「わかった!わかったから止めて!!」私はそう言うと母親に振るわれていた行為は中断されたのか、叫び声は先程の様な不安定な呼吸音に変わった。
「決心がついたか。早くお前の力で死ね。」男は先程、母親は助けると言ったが、そんな保証はない。だから私は少しでも時間を稼ぎ、せめて母親だけでも救う方法を考えなくては…。
「…死ぬ前に質問をしていい?」
「なんだ?」その場から動けない私はとりあえず質問をすることにした。
「なぜ、私を狙っているの?」理由なんて解っている。私の力が目的なのであろう。あの石に掛かれていた『他の能力者を殺せ』と言う文字に従って殺しに来たのであろう。
「お前の心に聞け。」だがなぜ解ったのだろうか、私は家以外でこの力を見せたのは力を理解できていなくて空き缶を浮かせてしまったあの日だけだ。他の日に行った超能力の練習は部屋の中でしか行っていない。という事はどこで知ったのだろう?
一番可能性が高いのは男の能力が予知、調査等の第六感の力。そう考えれば男の発言もつじつまが合う。もし相手が予知能力者だとしたら私が反撃することを理解しているはずだ。だが今母親の荒れている呼吸音は聞こえている。という事は、男の予知能力は常時発動しているものではないのではない?
つまり、一瞬で相手を倒せば母さんは助かる可能性はある。やるなら今しかない。
決心をした私はまず、声のする方向に向かって床に置いてある靴を全部飛ばす。野球ボールの様に向かっていく靴と共に私は声の聞こえた方向に走る。
数歩歩いた所で男の位置を認識できたので飛ばした靴達を全部男の体に向かわせる。
男は驚いた表情を取ると、一瞬でドーム状の巨大な炎が男の周りで発生し靴を全て消滅させる。
読みが外れた!?私は驚いたが理由など考える時間はない。男の周辺で椅子に縛られている母親を見つけると頭の中で母親を外に出す為に家の壁を巨大なドリルで開けた穴の様なイメージをすると、無理やり壁を壊し外へとつながる巨大な穴が出来たので母親をその中から外に飛ばす。
母親は椅子に縛られた状態で穴に向かって飛ばされる。私も自分の体を穴に飛ばすように念じ吸い込まれる様に穴から外に出た。




