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弱者は誰かを呪いながら死に絶える  作者: 海原 川崎
岬 有紀を中心で発生する出来事
34/49

回想 岬の場合 5

「何泣いているの?」扉を開くと千穂が地面に土下座をするように丸まりながら嗚咽を漏らしていたので声をかけると彼女は私の腹に向かって抱きついてきた。

少し腹部に痛みが生じるが、目の前で泣いている彼女の方が大事だからそんな事は言っていられない。

「えっ、何?どうしたの?」腹部に発生した痛みによって一瞬私の動きは止まってしまったが、彼女の体が震えていることに気がつくと、すぐに背中に手を置きとりあえず撫でた。

泣いているときはこういう優しさが一番効くものだ。荒れる前の母さんがよく泣いていた時に私の背中をさすってくれたのを思い出す。

「なんか生えた。」彼女は一言そう言うと再びギャアギャアと喚きだした。これは落ち着いてから話を聞くしか無いな…。

やがて落ちついた千穂は私から離れ涙を袖で拭くと顔をこちらに向けた。

「何それ?」驚いた。彼女の真っ白な額の中心に鬼の角のようなものが皮膚に覆われて生えているのだ。

「わかんない。」再び泣き出しそうな不安げな表情を受かべながら彼女は答える。

「わかんないって…、私が居なくなる前は生えてなかったけど一体いつ生えてきたの?」

「いつの間にか生えていたの!気が付いたらなんかこれが、生えていたの!」パニックになった時の様に彼女は叫びながら泣き出した。

「じゃあ、私がいなくなった後に何があったのか説明して。」

彼女の話を全て聞いても特に可笑しい事は無かった。本読んで、先生と会話をした後1人でいたら角が生えた。

わけがわからない。

「その読んだ本ってなに?」

「それ。」彼女の指を指す方を見ると1冊の本が机の上に置いてあった。

手に取ってページを適当に捲るが特に可笑しいところは見受けられない。

「うん、本だ。特におかしな所はないし、じゃあ先生の方?でも先生は来た時に驚いた表情なんてしなかったらしいし…。その時は生えて居なかった?いや、先生がこの角と関わりがあるのか?」この本に特に変な所はない。いくらページを捲ってもただの本だ。いくら考えても答えは出ない気がしたので視線を本から千穂の方に向けると彼女はまるでかさぶたを触るようにペタペタと角を触っていた。

「え、触れるの?」私は思わず聞いてしまった。そういうものって触ったら痛みが生じたりするんじゃないの?

「なんか普通に触れる。」そう言いながら彼女は自分の角をペタペタと触り続けている。

「触っても大丈夫?」私が恐る恐る聞くと彼女は不思議そうな顔をして答えた。

「うん大丈夫。」許可をもらったので、人差し指で角の先端を触ってみると、額と同じような質感で、プニプニとした薄い皮膚の奥に堅い骨があるのがわかる。

小さい飲料缶程の大きさをした角が一瞬で生えるなんて不思議だ。疑問を覚えながら彼女の額を見ていると突然目の前から千穂の体は消えた。 

驚いて辺りを見回すと彼女は大粒の汗を流しながら床に倒れていた。


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