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弱者は誰かを呪いながら死に絶える  作者: 海原 川崎
岬 有紀を中心で発生する出来事
33/49

回想 岬の場合 4

 それは安西千穂が恋愛話をしてきた際に起こった。美術室の鍵を借りてくる際に好きな男子とぶつかったらしい。私はその時は彼女のデレデレとした顔を見て呆れてしまったが、私も女子である。他人の恋愛事に関して気にならないと言えば嘘になる。

 「夕方だよ。」どうも集中すると周りが見えなくなってしまう。彼女はそんな私のために外がオレンジ色になると私に教えてくれる。

 「もうそんな時間。」ずっと同じ姿勢で描いていたせいで体の節々が安い糊で物をくっつけたようになってしまった。

背筋を伸ばすと全身からポキポキと気持ちの良い音がする。私は片付けをするために立ち上がり筆を持ち水道に向かう。

 恋、恋?…恋。どうも青春中だというのに自分にはそんなイベントには縁が無いなと思った。家があんな状況だというのは言い訳に聞こえるかもしれないけれど、心に余裕が無いのである。

水の冷たさに心地よさを感じながら私は気になった事があるので彼女の方を見ながら聞いてみた。

「で、告白とかするの?」恋と言えば恋人関係。そうする為には告白をしないといけない。

「いや無理。」即答された。そんなすぐ答えられる時点で勝負すらしていないと思うが私にはそんな事をいう資格は無い。私は無理にでも同意をするように軽い口調で答えた。

「だよね。素直に人に思いを告げるのって難しいもん。」私の発言を聞くとやけに演技かかった言い方で千穂は言った。

「そのわかるような言い方。お主もさては恋をしているな?」私も?確かに私はそう言った。ほとんど無意識の内に言っていた。私も好きな人がいるということなのか。でも、考えても異性の男性で好意を抱く程の人は居ない。

千穂が意味深な表情で私の方を見ながらニヤけている。思わぬ情報を得たという泥棒猫の様な嫌な表情だ。

「…私は別の事かな。」この気持を理解したくない私は逃げるようにこの場から去っていった。教室を無言で出る時に声が何度も聞こえた気がしたけれど気のせいだと思う。


自然と口から出てきた言葉と共に私の頭の中は真っ白になり気がつけば道の真ん中で息をゼーゼーと吐いていた。

気温湿度が高いということもあって全身からは汗がにじみ出ており、運動が苦手なせいか呼吸は定まっていない。どうやら教室を出た後、走っていたらしい。

呼吸を整えている途中で携帯がバイブレーションを起こしている事に気が付き呼吸が安定してから見てみるとメールが一件。送信者は安西千穂。

メール内容は「美術室の鍵、鍵!!」鍵?鍵というより私はなぜこんなに疲れているのだろう。酸素が全身に巡るにつれて私が美術室から逃げるように去った事を思い出す。

とりあえず彼女に連絡をしないといけない。

携帯の電話帳から彼女の欄を見つけ電話を始めると2コール目でつながった。

「…もしもし。」説明もせずに彼女を教室に置いてきてしまった申し訳無さにより少し声が小さくなった。

「岬、鍵。美術室の鍵。持っているでしょ?私帰れないんだけど。後大丈夫?」声色が怒りというより私を心配するような優しげな声である。

鍵、鍵は私が持っているのであろうか?そう考えた私は鞄の中を漁って探している途中で鞄の中に携帯を落としてしまった。

「あーあ。」慌てて携帯を取り出すとその横に美術室の鍵が入っていた。

「…今から戻る。」とにかく戻らないと行けないけれど久しぶりに走って疲れた。

なんだか無我夢中に走った気がする。なんで走ったんだろう?そう、千穂の恋話を聞いていて私は自分の胸の内をつい発してしまったからだ。

(私も気持ちを伝えられない。)でも、私には気になる異性なんて居ない。自分の気持ちを伝えていない人が居るのだ。誰にも言っていなかった事だし自分も気がついていなかった。

きっと心に余裕が少し出来たおかげで考えられたんだ。

「戻ろう。」母親に私の気持ちを伝えよう。もう前みたいに荒れないでほしい。私は母さんが心配なんだ。


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