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弱者は誰かを呪いながら死に絶える  作者: 海原 川崎
岬 有紀を中心で発生する出来事
30/49

回想 岬の場合 1

蝉の「ジーンジンジンジーン」と独特の鳴き声にストレスを感じる夏。少女はタバコの煙に嫌悪感を抱きながら生きていた。両親は私の小さい頃に離婚しており父親の顔は覚えていない。汚い空気に覆われている家になるべく居たくない彼女はいつもの様に学校へと逃げ出していた。

美術室に来た理由は絵が好きとか絵を描くのが好き等という理由ではない。ただ単に誰にも出会わなくて済むのだ。だからいつもの様に職員室から鍵を借りて1人で時間を潰す。

だが美術室に居るのに絵を描いていないのは可笑しいと思われるのを心配して時々絵を描いている。

今日はそんな日である。適当に絵を描いて私は家に帰った。

家に帰るといつもの様に豚みたいに太った母が狂ったようにタバコを吸っている。

「…あら、お帰り。」アルコールによって壊れた喉から出てくる声は豚の鳴き声より醜い音。壊れた変成器みたいな声で話しかけてくる豚を無視して私は部屋に戻る。

いつものことだが母親は私が無視をするといつもの様に舌打ちを聞こえるように行ってからタバコを再び吸い始める。

 あの女と同じ血が流れていると考えるだけで吐き気がする。

 いつもの様に部屋に篭ると私はため息をついてしまう。毎日毎日あの母親はタバコを吸っては吐き、吸っては吐きを繰り返している。一体いつ働いているのであろうか?疑問と同時に自分の将来を心配してしまう。

 私はため息を小さく吐き夜ご飯の支度を始める。

 あの女はタバコの煙を撒き散らすだけで何もしない。料理、洗濯、掃除、全て私が行っているのだ。

 タバコは壁も黄ばむし、煙も臭い。おまけに寿命も短くするのにどこがいいのであろう?中毒性がすさまじいのだろうな。そんな事を考えながら黙々と作業を行う。

 

 食事は終始無言だ。私達はお互いを嫌っておりお互いの生活に感傷はあまりしない。

この女に対して最後に話したのはいつだろう?そんな事を考えるが話はしない。食事が終わったらお風呂に入って洗濯を回さないと…。

 家事を終える頃には睡眠時間が迫ってきている。だが、勉強を怠りはしない。

 ノートブックを取り出して夏休み前に行った授業を振り返る為に勉強をする。

 普段なら美術室で行うのだが、今日はいつもとは違う出来事があったから…。

 そんなこんなで一日は終了する。

 私の生活は新たに家庭を作って出て行った父親が毎月送ってくる金で保護されている。

浮気をされたショックで母親はブクブクと太りだし、仕事を辞めアルコールとタバコの中毒者になった。最初の内は同情をしたが、改善する気もなく、注意をすると悲劇のヒロインの様に被害者ぶって泣き喚き、部屋を荒らすからもうあれは親とは思えない。

 豚だ。タバコを吸って酒を飲み無駄に金を消費する豚だ。

 「ため息をすると幸せが逃げる。」なんて言うが幸せな人間はため息なんかつかないし、自分に何かしらのマイナス要素があるからため息は出てしまうのだ。

 「…はぁ。」そんな屁理屈を考えてもため息は出てしまう。家に帰りたくない気持ちで一杯になるがそんな事を考えていると後ろから肩を叩かれた。

 「やぁ、久しぶり。」後ろを振り向くと短髪の好青年が私に向かって笑顔を向けている。

 一瞬誰だかわからなかったがそれが近所に住む伊藤さんだと気がつくと私は形式的に返事を返す。

 「お久しぶりです伊藤さん。」近所に住む彼は社会人で、子供の頃から知っている人だ。

 「いやー。いつの間にか大人っぽくなったね。」漫画の登場キャラクターの様にわざとらしく褒める伊藤さんは現在独身。

 「お世辞が上手ですね。」私が皮肉気味に言うとやけに大袈裟に手を振って私の言葉に対して否定をする。

 「いやいや本当だよ。最近見なかったからびっくり中。」

 「最近って、最後に家に来たのは三ヶ月以上前ですよ。」私は言ってからしまったと思った。

伊藤さんは私の母が離婚した後しばらくして恋人関係になっていた。どういう馴れ初めなのかは知らないが、時々家に遊びに来て母親の手作り料理を食べたりした。

 それが数ヶ月前までの話。どういうわけか突然遠藤さんが家に来なくなり母親は荒れだした。

 「…あのさ。きみ子さん最近どう?」後ろめたさを感じているのか小さな声で私に問いかけてきた。

 「酷いですよ。あれから一切動かなくなってブクブクと太り始めて、昔の面影はどこにも存在しないですもん。」

 「あぁ、そうか…。」私の言葉を聞いて愕然とする。

 「あのさ。今きみ子さんってお家に居るかな?」この人は母に会いたいから私に話し掛けてきたのであろうか?そんな事は私にはわからない事だが恋人が居た時の母親に戻って欲しいという気持ちがあるので正直に言う。

 「ええ、居ますよ。あれからあの人は家から出ずにいるはずです。」私の言葉を聞き終えると遠藤さんは先程までの腑抜けた表情から真剣な表情に変えると私に言ってくる。

 「そう、じゃあ今からお話でもしてこようかな。ずっと謝りたいと思っていたし。それに、まだ未練タラタラだし。」そう言って私に別れを告げると遠藤さんは私が来た道を引き返し自宅に向かった。

 未練?なんで別れたのだろう?


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