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大塚由紀夫の視点 6

 日光が隠れて外が暗くなろうとも、蝉は鳴き喚くのを止めず、由紀夫はストレスを感じていた。

 朝の日照りとは違い、蒸し暑さが全身を舐め回すように巻きついてきくる。

 無言のまま歩いていると目的の場所に着いた。目の前には特徴的なものは特に無い。2階建ての一軒家。ただ、標識に書かれている漢字には「遠藤」の文字が記されている。

 由紀夫はインターホンを鳴らすと家の中からの反応がなく、外から家の中を見ようとしても真っ暗で人のいる気配等感じられない。

 再びインターホンを鳴らすと家の中からは何も反応が起きず静寂が周りに満ちる。

 「あらあら、反応が無いって事はいないんじゃない?」

 「そうだね母さん。いないって事は家の中を調べていいってことだよね。」

 「そうね。家の扉を壊しても文句は言えないはずよね。」妄想の母は由紀夫の言葉に対して一切否定をせずに肯定をすると、由紀夫は玄関から敷地内に入り庭に何かないかを探し始める。

 「おっ、あったあった。」庭の端っこに隠れるように放置されていたスコップを手にとると、家の窓に向かって思いっきりスコップを叩きつけた。

 大きな音をたてて割れたガラスに反応をして隣の家の二階から少女が顔を出し由紀夫の方を向いている。

 驚いたように由紀夫の方を見ている少女に対して由紀夫は顔を少女の方に向けると笑顔で「死ね。」と言い放った。

 開いた窓から少女は頭から飛び降り、家を囲うように設置されているコンクリートに頭を当てると鈍い音が周囲に響く。だが、由紀夫はそんなものはどうでも良いと言わんばかりに無言で割れた窓に手を入れ、ロックされているクレセントを解除すると窓を開き家の中に入り込んだ。

 靴を履いたまま室内に入り込むと照明が点いていない室内の中で冷蔵庫だけが鈍い音を鳴らして自己主張をしている。

 「…誰も居ない。遠藤の母親とかいるんじゃないのかとか思ったけど、誰も居ないって事は、これは調査していいってことだよね?」

 「そうね由紀夫。あなたは正しいことを行っているのだから胸を張って行動するのよ。」母親の優しい一声に元気をもらえた由紀夫は適当に部屋の中を漁ることにした。

 引き出しの中を漁っても井上殺しに関係するもの等見つからない。諦めて冷蔵庫の中を物色し始めるとタッパーに入った切り干し大根があった。

由紀夫はタッパーを開けると指を突っ込み、切り干し大根を手で掴むと口の中に放り込んだ。

 「…これは。」

 「…どうしたの?」

 「母さん。この切り干し大根、あまり冷たく無いよ。」

 「もしかして、冷蔵庫にこれを入れてからあまり時間が経っていない?」冷蔵庫の中に入っていた料理は時間が経てば冷たくなっていく。だが、冷たくないということはこの家に数時間ほど前まで誰かが居たということになる。

 「多分そうだと思う。もしかしたらこの家に誰かが潜んでいるのかもしれない。楽しくなってきたなぁ。」由紀夫は笑顔でタッパーを冷蔵庫に戻すと隣の家から悲鳴が聞こえてきた。

 さて、家に誰か居るとしたらこの悲鳴を聞いて何をするかな。震えてどこかに隠れる?とにかく出口に向かう?僕に見つからないように逃げる?攻撃?まぁどれにしても楽しみだな。

 隣の家からは先程の少女の母親らしき人の声が何か喚いているがそんなのは気にせずに違う部屋に通じている扉のドアノブに手を掛けようとしたところ扉が勝手に開き、中から誰かが由紀夫に向かって突っ込んできた。

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