大塚由紀夫の視点 3
一発、二発と俺の頬を親父が殴ってくる。
「てめぇ、なにイジメなんてかっこ悪い事しやがってんだ?」どうやら遠藤に暴力を振るっていた事がどこからか親父の耳に届いたらしい。
こいつは普段から仕事、仕事。ろくに帰ってこない癖にこういう時だけ一丁前に親のような事をする。
今度は腹部を思いっきり蹴られた。痛みで殺虫剤をかけられたゴキブリのようにもがいている俺に対して親父はなおも暴力を振るう。
「おめぇみたいな人間を最低野郎って言うんだよ!」
「やめて!!」振るわれ続けていた暴力は母親の叫びによって止まり。親父は怒りを抑えながら体を震わせて床に倒れている俺を睨んでいる。
「いいか!お前の友達が死んだことなんてどうでもいいんだよ!そいつだってお前みたいに人様をイジメていたんだろ!そんな人間は死んでも文句なんて言えねぇんだよ!」親父は捨て台詞を俺に吐き俺から離れていった。
殴られた顔や蹴られた腹部の痛みを堪えて立ち上がり部屋に戻ろうとすると、母親が俺に近づいてきて何かを言おうとしたが、言う言葉が見つからなかったのか何も言わずに目を反らした。
母親の悲しげな表情を一瞥すると俺は部屋に戻り再び部屋に閉じこもった。
親父に殴られて数時間経った。外から両親が口喧嘩をしている声が聴こえる。原因は俺。
井上が死んだと同時に行方不明になった遠藤を警察が捜査をしていく内に俺達が遠藤対して暴力を振るっていたのが噂となって何処からか流れたのであろう。それが親父の耳に入った。
帰ってくるなり親父は俺の顔を確認すると顔面を思いっきり殴ってきた。
「おい、いるんだろ!!出でこい卑怯者!!」ドアを叩く音と母親の親父を止める声に対して聞こえないフリをして時間が過ぎるのをただ待つ。
「止めて!今はそっとしておいてあげてよ!」母親の叫ぶ声は虚しく響き渡り。親父は大声で俺に訴えかけてきた。
「お前は人として一番やってはいけないことをやったんだぞ!なに被害者顔して部屋に閉じこもってんだ!出てこい!」親父の声は先程からずっと荒げていた為しゃがれた声に変わっている。
「止めてよ!あの子は今とっても傷ついているの!」母親のすがるような声など関係がないと言うように親父は俺の部屋の扉を力強く叩き続ける。
扉から響いてくる音が俺の心を不安にさせるがそんなものはお構いなしと言うように親父は扉をたたき続ける。
響き渡る音の後ろからすすり泣くような音が微かに聞こえ、母親が泣いているのだと気がついた。
親父でも虐めていた遠藤でもなく母親に対してなんだか申し訳無いような気持ちになり、俺は扉の鍵を開けてしまった。
扉が開いた時の親父は驚いた表情を一瞬だけ見せ、すぐさま激昂して殴りかかってきた。
「お前は申し訳ねぇと思わないのかよ!!」再び俺の顔面を何度も殴ってくる。ここまで来るとこの人には暴力しかないのかと思ってくる。
殴られ続けるのにも限界というものがある。殴られ続ける中で反撃の為にどこをまず殴ろうかと考えたがとりあえず顔面を殴ることにした。
目で親父の顔を見ると狂人のように怒り狂った形相で拳振り上げている。心の中の恐怖心を抑えながら顔面に拳をぶつけると冷水を突然浴びた時みたいに驚いた表情を見せた後、すぐさま怒りの表情を見せる。
一度殴ってしまうと俺もなかなか引っ込みが付かないので無駄だとわかっていながら大声で文句を言っていた。
「こういう時だけ父親面するなよ!!死ね!!」大声で怒った後に心の中の怒りはフッと消え、大変なことをしてしまったという恐怖感が胸の中で広がっていくが、先程まで怒りで顔を真赤にしていた親父は動くのを止め棒立ちになり、母親も親父と同じような棒立ち状態になる。
頭の中で疑問を感じていると二人は突然自らの両手を口の中に入れ、上顎と下顎が離れていくように口の中を広げ始める。
ブチブチと筋肉が悲鳴をあげながら壊れてく音が聞こえると、血が吹き出はじめ下顎は粘土のようにぶらりと垂れ下がって二人は倒れた。
驚いたように二人の様を見ていた大塚は目の前に転がった死体を見て吐瀉物を吐いていた。
この日彼の両親は死んだ。




