大塚由紀夫の視点 1
-何処かの意思-
地球は壊れてきている。大きな原因は人間と言う罪の塊が存在しているからだ。だが、地球が自分の手で全ての存在を消そうとすると自分自身もくたばってしまう。そこで地球は考えた。
-ニュースの音声-
なお行方不明になった遠藤徹さん。ですが…。
あれから何日経った?一日、二日?いや、それ以上経っている。あいつが死んだ。正確に言うと殺されたというのが正しいのだろう。
犯人は不明。第一発見者が俺だ。
なんであいつが殺されたんだ。あいつが殺される理由なんてないだろ。
だが、あの時の事を思い出そうとすると胃液が口から出てきそうになる。布団の中に閉じこもっていると扉から軽く叩いた音がして母親の声が聞こえる。
「…お母さんだけど、大丈夫?」大丈夫なわけがないだろ。友人の死体を見ちまったんだから。お願いだからしばらく一人にさせてくれ。無言でいると「お腹が空いたら降りて来なさい。」という声の後、扉の前から離れる足音が聞こえた。
心配をしてくれているのだろうが今の俺は他人と会いたくない。携帯電話に電源は切ってある。何か他のものと関わりを持つと思い出してしまいそうで怖いのだ。
電話に出た俺は井上の声を聞きとれずにいたが、少し時間が経った後にきたメールの指示にしたがって学校近くの森林に向かった。森林と言っても遭難する程の広さではないし小学生等が遊ぶのによく使っている。
あの時目が少し痛かったからそれを理由にあいつの指示なんて従わなければよかったんだ。だが過去は変えられない。
小さい森林に自然の素晴らしさなんてものは存在せず、少し進むだけでポテトチップスの袋が泥だらけで落っこちている。湧いている蚊の大群にストレスを感じながら歩いていると視界の中に巨大な人形のようなものが二つ転がっている事に気がついた。
あんな大きな人形を二つも不法投棄するのは少しおかしいと思った。少しずつ近づいていくが、転がっている物に土はほとんど被っておらず置かれてからそれほど時間が経っていないのもすぐ理解できた。
疑問を覚えながら歩くとようやく物の正体を理解した。形が人間なのである。片方は眠っているように動かずもう片方の服は赤黒い絵の具のようなものが付いていて動かない。恐怖心を覚えながら倒れている人間の正体を確かめるためにゆっくりと近づく。
「おい。」声を出しても反応がない。近くにあった細長い棒で突いても反応はない。俺はゆっくりと近づいてうつ伏せで倒れている人間の顔を確認するためにゆっくりとひっくり返すと見覚えのある顔がそこにあった。
よく人が死んだのはすぐに理解できるという話を聞いたことがあるが本当だった。初めて見る死体は人形のように生命の鼓動を感じられなかった。肌に触れても元の形に戻ろうともせず、眼球は生気がない。先ほど電話をしてきた井上が死んでいた。
俺は喉元から出てくる悲鳴を抑えることができなかった。
今考えたら近くに犯人が居たのかもしれないけれど、そんな事を考える余裕がなかったのだ。呼ばれた場所に着くとそこに呼んできた人物が死体になっていたのだからほとんどの人間が同じような状況になったら俺と同じように叫んでしまうと思う。
そこからはあまり覚えていない。気がついたら先ほどいた場所とは全く違う場所にいて目の前にいる見知らぬ大人が警察だと理解するのに少し時間が掛かった。
やがて冷静さを取り戻した俺は警察に自分の知っている事を全て説明して親に送られて家に帰宅した。
そういえばあの日に感じていた眼球の痛みは消えている。




