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遠藤徹の視点 5

 「まぁ徹ちゃん可愛そうに。こんな姿になっちゃって。許せないわね。全く許せないわ。」母さんは僕の怪我に対して異常に心配してきた。

 「別に大した怪我じゃないよ。」

 「大した怪我ですわ!徹ちゃんがこんな事になってお母さん毎晩涙で枕を濡らしてしまよ。」そう言うと母さんはハンカチを手に持ちながら流れてきた涙を拭き始めた。

 「本当に許せませんわ。徹ちゃんを虐めていた人!殺されてまで徹ちゃんに迷惑を掛けるなんて全く許せませんわ!」

 「…ねぇ母さん。あいつは、井上はどうやって殺されたの?」僕がうつむきながら聞くと母さんは再び涙をこぼしながら答える。

 「まぁまぁ、虐めてきた人間の心配をするなんて立派!立派を通り越して聖人の域よ!私はなんて素晴らしい息子を持ったのでしょう。」いつも以上に目から涙を流す母さんは僕の頭を撫でると微笑み言った。

「でも知らなくていいのよ。」

 僕が気を失っている間にいったい何があったのだろうか。解らないけれども何かがあったのだろう。ボイスレコーダーも消えたのも謎だし…。まぁそんなものは警察が解決してくれるはずだ。僕に火の粉が行かなければ後はどうでもいい。

 「後、父さんは?」僕が聞くと先ほどの涙を流す母さんとは別人みたいな引き締まった表情になる。

 「お仕事です。」そう、母さんはいつも父さんの事になると恐ろしいほど人が変わる。まるで訓練された犬の様に僕に甘い母さんではなくなり軍隊の兵隊のような人間になる。

 「そうですか。」予想出来た言葉に僕が納得をすると母さんは再び先ほどのような緩い表情に戻った。

 「徹ちゃんが怪我したって聞いて本当に、本当に心配したのだから。涙で枕がびしょびしょに濡れて枕の役目を果たしていなかったし。」その話はさっき聞いた。同じ様な話を母さんは私に何度もすると看護師が僕に話しかけてきた。

 「遠藤さん。遠藤徹さん。診察の時間です。」母さんが何度もする同じ話に飽き飽きしていた僕はこの会話から抜け出せると心の中で感謝をしていた。

 「じゃあ母さん。診察があるからまた。」僕が立ち上がると母さんは名残惜しそうな顔をしながら僕に手を振ってきた。

 「頑張るのよ徹ちゃん。あなたは強い子なのだから。」母さんが手を振るのを一目した僕は看護師の後ろについて行くととある部屋の一室で看護師が立ち止まった。

 「では、お入りください。」検査室と書かれた扉を開けると幼い見た目をした白衣を着た女性が椅子に座っている。

 「失礼します。」僕が扉を閉めると白衣を着た女性は手に持っていた資料を読みながら私に命令をしてきた。

 「こんにちは。」女性は持っていた資料から目を離すと僕の方を見て笑顔で挨拶をしてきた。

 「こんにちは。」

 「ではそこで寝転んでください。」女性の指差す真っ白なベッドの上に寝転ぶと視界は目を覚ました時と同じような天井が僕の方を見ている。

 「はい。では準備が終わるまで少しお待ち下さいね。」僕が天井を見ていると近くで何かを漁るような音がする。こういう時に何か不安を感じるのは僕だけだろうか。そんな事を考えていると胸の上に何か物を置かれた。

 「準備が終わりました。これを頭に被って下さい。」胸の方を見ると色々なケーブルが繋げられているヘルメットが置いてある。手に取ってみるとプラスチック材質のヘルメットだという事が解る。ちょうど内側の耳の当たる所にスピーカーのようなものが付いており聴力の検査でもするのか?僕が痛めている場所は腹部だから聴力なんて関係ないと思うのだが。

 「これは何をする物ですか?」私が女性の方を向きながら聞くと女性は相変わらずの営業スマイルを私に向けて説明を始める。

 「聴力の検査をする物よ。遠藤さんが意識を失っている間出来る限りの検査を行ったけれど、意識を取り戻していない間に出来なかった検査を今から行うのよ。今から行うのは聴力の検査。脳に異常があるかの確認もかねてなんだけどね。多分何もないと思うけれど念には念をとあなたのお母様から言われたからね。納得した?」女性は僕に笑顔で説明をすると近くにあった機械をいじり始めた。

 「はい。」

 「じゃあ、それを被って力を抜いて下さい。」女性の指示に従ってヘルメットを被り、目を瞑って力を抜くと再び女性が話しかけてきた。

 「では今から30分間ほどそのままでいてくださいね。耳から音が出ますがあまり気にせずに。ただし眠らないで下さい。」過去に寝た人でもいるのだろうか。質問をしようとしたが止めた。こんなに無駄に質問をされても迷惑だろう。

 「では、始まりますよ。」何か機械をいじる音がすると突然耳元で爆音が流れ「     」私の意識は一瞬で失われた。

次から話が進んでいきます。


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