狩りはもう止まらない
突如画面に現れた文字に、一般生徒はただ困惑の表情を浮かべていたが、森羅を含めこの場に居る候補者達は驚愕の面持ちでモニター画面を凝視していた。
伸るか反るかはともかく、主役狩りというゲームの性質上、自身の正体が割れていない事は最大限のアドバンテージになる。それが何故、こうも早くあっさりと正体が看破されたのか。
異能者、日常者は表示された事が事実かどうか判じえず、やや戸惑いの方が強かったが、名指しされた三条愛莉本人はそうもいかない。暴かれた事実に心臓が早鐘を打つ。
「あの戦いに巻き込まれて、果たして無事で済む、です?」
いや、ともかく今画面を見続けているのはまずい。
予想だにしない事態の変化に、思考が追いつかないながら、ようやく愛莉はそこまで考えた。
◇◇◇
「さあ、候補者諸君。丸腰の異能者と探偵者、狩るなら早々に!」
嘲るように笑う声が徐々に遠くなり、やがてスピーカーは完全に沈黙した。
後に残されたのは、状況が飲み込めずパニックになる生徒たち。
その中にあって、森羅は沈黙した魔導書を見つめ、茫然と立ち尽くしていた。
「ちょっと、何してるのよ!? すぐにここから離れるわよ!」
「え――」
不意に、女の子の声がしたかと思う間もなく、森羅はその人物に腕を引かれ、引きずられるように体育館を後にするのだった。