もはやスポーツではなくヌポーツ、です。客観的にみてそう思いました、です。
探偵者・三条愛莉は、瑠々の言葉にヒントを得て、青春者が何かのスポーツ物語の主人公であると当たりをつけ、独力で総合体育館コートにたどり着いていた。そんな彼女は、目の前で繰り広げられた光景に、ただただ息を飲むしかなかった。
青春者の方は先ほどから非常識なショットを何度も繰り出しているし、対戦相手の異能者も、明らかに何もない所からラケットを取り出してみせた。というか、ボールは発火してるし、異能者の周りには不自然な冷気が発生しているし、最早何でもありの様相を呈してきている。
目にも止まらぬ速さでボールが天井を、四方を、後ろの壁に当たっては跳ね返り、相手に襲い掛かる。それを事もなげに返す。先ほどからこの単純なやり取りを繰り返しているだけだが、非現実的な速度に達したボールは、悲鳴を上げながら空気を震わせ、縦横無尽に室内を駆け巡る。
それにしても、たかが練習試合で、「まだ立っていられるのか」とか言って驚いているあたり、二人は完全にスポーツをやめている。
「これが、主役狩りの戦い……」
魔術とスポーツの異色の決戦は、最早誰にも結末が分からないほどに互いに拮抗していた。