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月夜  作者: 琶苑
8/13

NO.8:過去

―俺のせいで水鈴はさらわれた―




クロノは目を覚ました。クロノの目に映るのは暗闇。夜だというのがすぐに理解できた。そして、周りを見渡すと自分が洞窟の中にいるのも理解できた。

身体を動かしてみようとしたが身体に痛みを感じる。

「クロノ、気がついたか?」

声がした方を見ると二つの影がある。その影はラルと神無だった。

「二日間も目を覚まさないから心配した。此処らへんには人がいないし、俺と神無も怪我人でさ。お前を此処まで運ぶので限界だったんだ」

「そうか・・・水鈴はやはり・・・」

“水鈴”という名を口にするとさっきまで言葉を口にしていたラルは沈黙した。クロノも何も喋らない。

「クロノ、聞きたいことがある」

沈黙を破ったのは先程から何も喋らない神無だった。

「何だ?」

クロノが神無の方を見た瞬間、神無は小太刀を抜きクロノに刃を向けた。ラルは驚いているが、刃を向けられているクロノは驚いてはいなかった。その時のクロノには神無の次に発する言葉を予想できたからだった。

「率直に言う。クロノ、お前は吸血鬼だな」

「な、何を言って

「私はクロノに聞いている」」

ラルは神無の言葉を遮り否定したが神無はラルを睨み付け、ラルを黙らせた。「どうなんだ?」

「確かに、俺は吸血鬼の血を持っている」

「なっ!?嘘だろ・・・」

ラルは驚きを隠せなかった。神無は鋭く睨み付けたままだった。

「だが、吸血鬼なら陽の下を歩けないはずだ。北の地には太陽の光は差し込まないけどクロノは南から来たんだろ?血だって欲してないし」

ラルは疑問に思ったことを一気に口に出した。その質問に応えるためクロノは口を開く。

「確かに吸血鬼の血を持っているが、完全な吸血鬼ではない。俺の母は人間。そして、父は吸血鬼の・・・王だ」

その言葉を聞き、神無もラルも驚きを隠せない。




―北の城―水鈴は闇の中で目を覚ました。

「ん・・・此処は?私・・・そうだ!私、吸血鬼に拐われて!」

「ようやく、目を覚ましたか」突然、声が聞こえ声のした方を見ると、闇の中、月の光を浴びて現れたのはブラドだった。水鈴はブラドを睨み付ける。

「あんたは・・・」

「まだ、名を名乗ってなかったな。私は『ブラド』」

「私を拐って、一体何なの?」

「お前自身には用はない。だが、クロノを本気にさせるには効果的だと思った。だから拐った。お前に危害は加えない」

水鈴はブラドに対し睨み付けるのを止めようとはしない。だが、ブラドは気にすることなく水鈴に近づく。

「お前の名は?」

「アンタに名乗る名はないわ。アンタ、クロノに何の用なの?」

ブラドは水鈴の近くに座る。水鈴はブラドから少し離れた。

「クロノの昔話をしよう」

“クロノ”という名に反応した水鈴は目の色を変えた。

「その前に話すことがある。私は吸血鬼の王ではない」

「え?」

何を話しているのか、水鈴には理解できなかった。

「今、吸血鬼の王に一番近いのはクロノだ」

その言葉を聞いた水鈴は目を丸くした。ブラドは話を続ける。

「クロノは吸血鬼の王の血を持っている。クロノの父は吸血鬼の王。母は人間だ」

「クロノは半吸血鬼なの?」

ブラドは頷く。突然、声が聞こえ声のした方を見ると、闇の中、月の光を浴びて現れたのはブラドだった。水鈴はブラドを睨み付ける。

「あんたは・・・」

「まだ、名を名乗ってなかったな。私は『ブラド』」

「私を拐って、一体何なの?」

「お前自身には用はない。だが、クロノを本気にさせるには効果的だと思った。だから拐った。お前に危害は加えない」

水鈴はブラドに対し睨み付けるのを止めようとはしない。だが、ブラドは気にすることなく水鈴に近づく。

「お前の名は?」

「アンタに名乗る名はないわ。アンタ、クロノに何の用なの?」

ブラドは水鈴の近くに座る。水鈴はブラドから少し離れた。

「クロノの昔話をしよう」

“クロノ”という名に反応した水鈴は目の色を変えた。

「その前に話すことがある。私は吸血鬼の王ではない」

「え?」

何を話しているのか、水鈴には理解できなかった。

「今、吸血鬼の王に一番近いのはクロノだ」

その言葉を聞いた水鈴は目を丸くした。ブラドは話を続ける。

「クロノは吸血鬼の王の血を持っている。クロノの父は吸血鬼の王。母は人間だ」

「クロノは半吸血鬼なの?」

ブラドは頷く。「・・・少し、昔話をしよう。クロノの昔話だ・・・」




洞窟内では神無はクロノに向けていた小太刀を下ろし、これからクロノが話す話を聞こうと腰をおろした。「俺の父は吸血鬼の王。喉の渇きを潤そうと父は人間の地に行った。その時に会ったのが俺の母だ。

父は母の美しい姿、優しさ・・・全てに惚れたらしい。いつしか二人は互いに愛し合うようになり、父は母と共に毎日を過ごした。母は父が吸血鬼だと知っていたため父に血を与え続けた。二人は人里離れた地で毎日を楽しく過ごしたが・・・吸血鬼が父を探しにきたんだ・・・月夜の美しい夜・・・」




「王、お迎えに上がりました」

ブラドが吸血鬼の王に頭を下げた。

「ブラド、私のことは放っておいてくれ」

「・・・暫く見ない間に変わりましたね、王。昔の王ならばもっと恐ろしかった」

「黙れ」

吸血鬼の王が言ってもブラドは口を動かし続けた。

「原因はあの女・・・ですか」

ブラドはそう言うと吸血鬼の王の後ろにいる女性、『リア』を見た。

「ならば・・・あの女を殺せばあなた様は我らの元に戻るのですね」

「ブラド!やめろ!!!」

ブラドが指を鳴らすと、吸血鬼たちが現れ、リアを襲い始めた。リアは震えて動くことが出来ない。

「リア!!」

リアは咄嗟に目を瞑ったが痛みはいつまでたっても感じない。おそるおそる目を開くと吸血鬼の王がリアに襲ってきた吸血鬼を殺していた。「あ、あなた!!」

「大丈夫か?すまない、私のせいでお前に怖い思いをさせて・・・」

謝る吸血鬼の王に対しリアは優しく微笑んだ。

「あなたを愛した日から覚悟は決めていまいた。あなたが謝ることではありません」

「そうか・・・」

吸血鬼の王はブラドを鋭く睨む。

「私に勝てると思っているのか?ブラド」

「確かに、昔のあなた様なら我々は勝てないでしょうね。ですが、今のあなた様は血も満足に口にしていない。その為に弱体化しているあなた様なら勝てますよ」

ブラドは言い終えるとリアに向かって走り出した。吸血鬼の王はリアを護るため、ブラドを攻撃する。ブラドは攻撃を受け止めようとするが、弾き飛ばされてしまう。

「さすがですね、王。ですがあなたはもう息が上がっているではないですか。我々吸血鬼にとって血は生命の源。それを満足に口にしていないあなた様はもうボロボロです。このままでは死にますよ。あの女の血を飲まないのですか?」ブラドの言う通り、吸血鬼の王は息が上がっていた。上がっているにも関わらず、吸血鬼の王はまだ、ブラドと戦おうとしている。

「黙れ。お前は私が殺す!」




しばらく戦った末、吸血鬼の王の身体はボロボロだった。それに対し、ブラドは吸血鬼の王よりも傷が少ない。

「あなた・・・」

リアが心配そうに見つめる。そんなリアに対し、吸血鬼の王は優しく微笑んだ。

「大丈夫だ、リア。お前は私が護る」

「無理ですよ。今のあなた様では私には勝てない。諦めて、あの女を殺しなさい」

ブラドがそう言うと吸血鬼の王は再びブラドを鋭く睨む。

「黙れと言っているのが、分からないか!」

「あなた!私の血を飲んで!」

吸血鬼の王がブラドに攻撃しようとしたとき、リアが吸血鬼の王に言った。吸血鬼の王とブラドは驚いている。

「(人間、自ら血を飲ませるとは・・・)」

「リア、何を?」「あなたが私の血で生きることが出来るのなら・・・」

「リア・・・すまない」




「父は母から少量の血を飲み、ブラドを追い返した。だが父はその戦いで傷つき、やがて死んだ。母が俺を生んだのは父が死んでから3年後。そして、おれが12歳のときにブラドが現れた。目的は母を殺すこと。母を殺された俺は死んだ母の死体から全ての血を飲み干した」

話を聞いた後のラルと神無の表情はとても辛いものだった。沈黙が続いた。

「クロノが北の城を目指す理由は・・・」

「母と父の敵打ち」

ラルの言葉を繋げたのは神無だ。

「奴ら、許せない」

「北の城に行くぞ」

神無は立ち上がった。続けてラルも立ち上がった。

「ラル、神無。これは俺の問題。お前たちに関係ないはずだ」

「水鈴を助けなければならないだろう」

ラルが最初に言った。続けて神無も口を動かす。

「お前のためではない。私は陰水晶を取り戻さなければならない。行く先は同じだからな。それに・・・」

「それに?」

神無の口が止まるとラルが聞こうとしている。

「・・・一緒にいたほうが心強い」

神無は顔を赤くして答えた。ラルはニヤニヤしている。

二人はクロノを見た。クロノはため息をつくと立ち上がった。

「行くぞ、北へ」




―北の城―

「あなたが、全ての現況ね。許せない!!」

水鈴はブラドを鋭く睨む。

「そうなるな。私は行く。ちなみにこの部屋には鍵をかけておく。窓から逃げようとしても無駄だ」

水鈴が窓を見た先には谷底だった。「逃げないわ。クロノが助けに来てくれる。絶対に」

水鈴がそう言うとブラドは水鈴を見た。

水鈴の眼は強い眼差しをしている。

「(この女、王が愛した女・・・リアと同じ眼をしている・・・)」

ブラドは頭の中でそう考えていた。



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