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月夜  作者: 琶苑
7/13

No.7:真実

―お願い・・・遠くに行かないで・・・―




クロノの血が飛び散る。どう見てもクロノが負けている。それでもクロノは剣をかまえ、ブラドに襲いかかる。ブラドは軽々とクロノの剣を剣で受け止める。

「くっ!」

「どうした?その程度か?」

ブラドがクロノの剣を弾くとクロノはバランスを崩しよろめく。ブラドはクロノにできた隙を見逃さずクロノの腹部に剣を刺す。

「ガァァァァ!!!」

「クロノ!?」

水鈴はクロノの腹部に剣が刺さったのを見て顔色を悪くした。

「(近寄りたい。助けてあげたい。なのに、何で足は動かないの!?クロノに言われたから?)」

水鈴はあまりの悔しさに涙を流した。

「私はなんて無力なの・・・」

自分にしか聞こえない声で呟いた。「ガァァァァァ!!!」

突然のクロノの叫び声に驚き水鈴は顔を上げた。そしてクロノの方を見ると、クロノが先程よりも大量の血を出し倒れていた。倒れながらもクロノはブラドを睨んでいる。

「クロノ!」

水鈴は我慢できなくなりクロノのもとへ駆け寄った。そしてクロノを守るようにしてクロノの前に立ちブラドに銃を向ける。

「す・・・い・・り・・ん・・・」

クロノが弱々しく水鈴の名を呼ぶ。

「クロノに近づかないで」

水鈴は強い目をし、ブラドを睨む。

そんな水鈴を見てブラドは無言だった。水鈴はブラドに対して口を動かす。「吸血鬼なんて大嫌い!私の大切にしているのを奪う!吸血鬼なんて大嫌い!!!」

「くくく・・・ハハハハハ!」

ブラドは水鈴の言葉を聞いて笑いだした。水鈴は更に強くブラドを睨む。

「吸血鬼が嫌い、か。いいことを教えてやるよ」

ブラドはクロノを見て口をつり上げる。クロノはブラドが言おうとしている内容に気付いたようだ。

「言うな!!!」

「クロノはな・・・」

「やめろ!!!」

「実は・・・」

「やめてくれ!!!」

「吸血鬼の血を持っているんだ」

ブラドの言葉に水鈴は目を見開いた。あまりの驚きに何も言うことが出来ない。

クロノはブラドを強く睨む。しかし、半面哀しそうだった。

「く、クロノが・・・吸血鬼?」―信じられない。信じたくない。―

水鈴は何度もその言葉を心の中繰り返した。水鈴はクロノの方を向いた。

「嘘・・・でしょう?」

―信じられない。信じたくない。―

水鈴は何度もその言葉を心の中繰り返した。水鈴はクロノの方を向いた。「違う・・・よね」

水鈴の言葉にクロノは無言だった。

「“違う”って言ってよ!!クロノは吸血鬼なんかじゃないって!!」

水鈴はクロノの身体を揺らした。

―“違う”と言って欲しい。―

ようやくクロノの口が開いた。

「・・・そうだ。俺の身体には吸血鬼の血が混じっている」

しかし、返ってきた言葉は今、一番欲しくない言葉だった。「ブラド、こちらは終わった」

ドサッ

アークが手から放り投げたモノは神無とラルだった。

二人の身体は血だらけだった。

「ラル、神無・・・」

二人はまだ生きている。ラルと神無は水鈴の声が聞こえたのか目を覚ました。

「水鈴・・・」

「ラル!大丈夫なの!?」

ラルが水鈴に話しかけた。

「クロノを・・・連れて・・・逃げろ・・・」

「でも、二人が・・・」

今度は神無が水鈴に話しかけた。

「大丈夫だ。私達が食い止める」

神無がそう言うとラルと神無は力を振り絞りそれぞれの武器を持ち、ブラドとアークに攻撃する。

「まだ動けたか」

アークがラルに攻撃する。ラルはアークの攻撃を避ける。

「ラル!神無!」

水鈴が手助けしようと銃を強く握り、駆け寄ろうとしたがクロノが水鈴を掴む。

「放して!ラルが!神無が!」

「二人の犠牲を無駄にするな」

クロノは無理矢理水鈴を連れて逃げる。

ブラドは逃げていく二人に気付き追いかけようとするが神無に邪魔された。

「どけ」

「お前の目的は陰水晶のはずだ(それでいい)」

「ここを通りたければ俺を殺してから行くんだな(少しでも遠くに逃げろ)」

神無とラルは同時にブラドとアークに攻撃をする。




クロノと水鈴はラルと神無が戦っている所からそう遠くない所に隠れていた。

「クロノ・・・大丈夫なの?」

クロノは息が荒かった。「ねぇ、クロノ」

「何だ?」

水鈴は真剣な眼差しでクロノを見つめる。

「吸血鬼がずっと血を吸わなかったらどうなるの?」

クロノは水鈴の問いに下を見た。そして、ゆっくりと口を動かす。

「殺戮衝動に目覚め、やがては死に至る・・・」

返ってきた言葉は今の水鈴にとってはとても残酷だった。

「クロノが死ぬ?」

思わず口にした言葉。クロノは水鈴が口にした言葉に対して笑んだ。

「・・・そうだな・・・。俺は母の血を吸ってから血を一滴も口にしていない・・・」

「―んで・・・」

水鈴が小さく呟く。クロノの耳には聞こえたのがしっかりとは聞き取れなかった。

「何だ?」

クロノが尋ねると水鈴はクロノを睨む。

「クロノの馬鹿!!何で死ぬのに笑っていられるの!?何で・・・」

水鈴は涙を流し始めた。クロノは黙って見ている。水鈴は突然顔を上げ、クロノを見つめる。

「クロノ、私の血を吸って」

「!!!」

クロノは驚き水鈴を見た。

「何を・・・!」

クロノは反論しようとしたが水鈴の目が強い眼差しをしていたために反論をしなかった。

「血を全て吸わなければ大丈夫なんでしょ?」

「・・・だが・・・俺は長年血を吸っていない。お前の血を全て吸ってしまうかもしれない・・・」

水鈴はクロノに微笑んだ。

「大丈夫。私は覚悟が出来てる。それに、クロノを信じてる」

「・・・(不思議だ。こいつを見ていると吸血鬼の血に勝てる気がしてきた)分かった」

クロノは水鈴を引き寄せ水鈴の首筋を撫で、そして水鈴の首筋に噛みついた。

「あ・・・う・・・(変な感覚・・・頭がボーッとしてきた・・・)」




「くっ!」

ラルと神無はブラドとアークにやられていた。

「てこずらせやがって」

「ブラド、陰水晶だ」

アークは神無から陰水晶を奪いブラドに渡した。ブラドは受け取るとラルと神無を睨む。

「アーク、この人間を殺せ」

アークはブラドに言われると剣を手にし、剣を振り上げた。

「くっ!(身体が動かない!)」

「(クロノ、水鈴、逃げろ!)」

二人は目を瞑った。だがいつまでたっても痛みがこない。恐る恐る目を開くとアークの剣を持っていた方の腕が無くなっていた。

二人は突然のことで驚きを隠せなかった。

「何が・・・」「クロノ・・・」

ブラドの呟きはラル、神無、アークにもはっきりと聞こえた。

「ブラド、貴様は・・・ここで殺す!!!」声のした方を見るとそこにはやはりクロノの姿があった。

ラルと神無はクロノを睨み、クロノに言う。

「何故・・・戻って来た・・・」

「俺と神無の時間稼ぎを無駄にする気か!?」

「助けたいから戻って来たの」

二人は聞きたくない声まで聞こえてきて驚き声のした方を振り向いた。やはりそこには水鈴の姿が・・・。

「何故・・・お前まで」

「ありがとう・・・でも二人の時間稼ぎを無駄にしてゴメン。でも二人が私達のために死ぬなんて嫌だから」

「何故・・・?」

神無が問いかけると水鈴は微笑み二人に手を伸ばし言う。

「だって“仲間”でしょう!」

水鈴の言葉を聞き、ラルはフッと笑い、水鈴に手を伸ばし、水鈴の手を取った。

水鈴とラルは互いに笑い合うと神無を見る。神無は少し抵抗があったが水鈴に目線を合わせずに水鈴の手を取った。水鈴は二人を立たせるとクロノの方を見る。

クロノはブラドと対等に戦っていた。



「この力・・・」

ブラドとクロノの剣が重なりあい、剣と剣の押し合いが始まった。ブラドはクロノを笑う。

「やはり!!クロノ、お前、あの娘の血を吸ったな!!!」「クロノ・・・」

ブラドの呟きはラル、神無、アークにもはっきりと聞こえた。

「ブラド、貴様は・・・ここで殺す!!!」声のした方を見るとそこにはやはりクロノの姿があった。

ラルと神無はクロノを睨み、クロノに言う。

「何故・・・戻って来た・・・」

「俺と神無の時間稼ぎを無駄にする気か!?」

「助けたいから戻って来たの」

二人は聞きたくない声まで聞こえてきて驚き声のした方を振り向いた。やはりそこには水鈴の姿が・・・。

「何故・・・お前まで」

「ありがとう・・・でも二人の時間稼ぎを無駄にしてゴメン。でも二人が私達のために死ぬなんて嫌だから」

「何故・・・?」

神無が問いかけると水鈴は微笑み二人に手を伸ばし言う。

「だって“仲間”でしょう!」

水鈴の言葉を聞き、ラルはフッと笑い、水鈴に手を伸ばし、水鈴の手を取った。

水鈴とラルは互いに笑い合うと神無を見る。神無は少し抵抗があったが水鈴に目線を合わせずに水鈴の手を取った。水鈴は二人を立たせるとクロノの方を見る。

クロノはブラドと対等に戦っていた。



「この力・・・」

ブラドとクロノの剣が重なりあい、剣と剣の押し合いが始まった。ブラドはクロノを笑う。

「やはり!!クロノ、お前、あの娘の血を吸ったな!!!」「・・・」

「やはりか!旨いだろう?人の血は!」

「黙れ!!!」

クロノはブラドの剣を弾いた。ブラドは反動でよろめく。クロノはブラドにできた隙を逃さずブラドを斬ろうとする。しかし、アークがブラドの前に現れる。

「邪魔だ!」

「うっ!ガァァァァ!!!」

だがアークは簡単にクロノに斬られ、灰となって死んだ。

その様子を見ていた水鈴、ラル、神無は驚いている。

「俺と神無の二人がかりでも倒せなかった吸血鬼をいとも簡単に・・・!」

クロノはブラドを斬ろうとしたがブラドは避けた。

「死ね!ブラド!!」

「そこまでよ」

突然、クロノとブラドの間に氷の柱が現れた。二人は動きを止めた。氷の柱の上に一人の女性が降りた。

「エリトリア、何だ?」

ブラドがエリトリアという名の女性に話しかけるとエリトリアはブラドの前に立った。

「ブラドがいつまでたっても戻って来ないから迎えに来たんじゃない。アークは死んだし」

「・・・そうだな。クロノ、北の城で待っている」

「逃げる気か!」

「何とでも言うがいい。それと―」

ブラドは突然、姿を消した。

「何するの!?離して!!!」

突然、水鈴が悲鳴をあげたため、クロノは水鈴の方を見るとブラドが水鈴を捕まえていた。ラルと神無がブラドを攻撃しようとしたが簡単に避けられた。

水鈴はブラドを銃で攻撃しようとするが簡単に腕を掴まれ、首筋を叩かれ気絶させられた。

「ブラド!水鈴を離せ!!!」

「この女は我々が預かる。この女で遊びながら北の城で待っている。何かされたくなければ早く北の城に来ることだな!」

ブラドとエリトリアは飛び去ってしまった。

雪が降り始めた。その場には先程の騒がしさはなく静けさが残った。

「水鈴・・・ゴメン・・・」

クロノは自分にしか聞こえない声で呟いたあと雪の上に倒れた。






―俺はまた・・・大切な人を守るどころか犠牲にしてしまった・・・―

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