No.3:森の中
クロノと水鈴がいる場所からさらに北。
そこに大きな城がある。
―吸血鬼の城―
城の一番広い部屋には玉座に座っている吸血鬼と部屋の至る所に立っている四人の吸血鬼。そこにいる全員は人間と同じ姿をしている。
玉座に座っている吸血鬼が口を開いた。
「我の支配している地の同胞が消えている」その言葉に全員が振り返る。
「どういう事ですか、ブラド様」
ブラドという玉座に座っている吸血鬼に一人の吸血鬼が前に出て尋ねる。
「何者かが同胞を消しているのだろう。アーク、確かめに行ってくれないか?」
「御意」
アークという吸血鬼は返事をすると姿を消した。
「(死んだ同胞がこちらがわに近づいている。・・・奴かもしれぬな)」
ブラドは怪しく笑んだ。
「ギャアァァァ!!!」
吸血鬼の叫び声が響き、灰となった。
「疲れた〜!少し休もうよ?」
水鈴は銃を仕舞い、座り込む。クロノも剣を仕舞い言う。
「駄目だ。いつまでもここにいると吸血鬼が襲ってくる」
クロノは歩きだした。水鈴はクロノの言葉に顔をひきつかせる。
「それはそれで困る!」
水鈴はクロノのあとを追う。
しばらく歩いていると森があった。水鈴はクロノに尋ねる。
「町はまだ?」
「この森を抜けた先にあるが・・・だ―」
水鈴は町が森を抜けた先にあると分かるとクロノの話を最後まで聞かずに森の中へ走って行った。
「はぁ。仕方ない・・・」
クロノは溜め息をつき、水鈴のあとを追う。
日は落ち、夜となった。
「夜になったんですけど?」
水鈴はクロノを睨んで言う。クロノは溜め息をつき答えた。
「最後まで話を聞かずに走って行くお前が悪い。『だが、森の中へ入ったら日が暮れる』と」
「それは・・・えーと、き、今日はここで野宿だね」
「ここでの野宿は危険だ。安全な場所を探す」
クロノはそう言うと再び歩きだす。水鈴は文句を言いながら渋々と歩きだした。
しばらく歩いているとクロノは何かに気付いた。
「水鈴、静かにしてろ!動くな!!」
「え!?キャ!?」
クロノは水鈴を押し倒し、水鈴の口をふさいだ。
水鈴の顔はだんだんと赤くなる。
しばらくその体勢のままだった。
ようやくクロノは水鈴の上から退いた。
水鈴の赤はまだ赤い。
「吸血鬼がいた。中級吸血鬼もいるみたいだ。いつまでもここにいたら吸血鬼の餌食になる。早く安全な場所に・・・何故顔が赤くなっている?」
「赤くもなるわよ!(いきなり押し倒すんだもん!)」
「?」
水鈴の顔が赤い理由をクロノは理由出来ていなかった。
「とにかく、ここにいつまでもいるのは危険だ。気付かれるまえに―」
「残念だったな!お前達は俺様の餌食だぜ!」
突然の声に驚き、クロノと水鈴は声のした方を見る。そこには吸血鬼がいた。
二人は咄嗟に武器を取り出す。
「ほぉ、女もいるのか。女からは血をいただくか」
クロノが吸血鬼を斬ろうとした時、吸血鬼は口を開いた。
「動くなよ!動くと女の命はないぜ?」
「何?」
「何するのよ!離して!」
水鈴の叫び声が聞こえ、クロノは水鈴のほうを見た。水鈴はもう一体の中級吸血鬼に捕まっていた。
「煩い」
吸血鬼は水鈴の口の中に指を入れ水鈴の口をふさいだ。
「くっ!」
「男に用はねえから死んで貰うぜ!」
吸血鬼の一人がクロノを攻撃しようとした瞬間
「ギャアァァァ!!!!!」
水鈴を捕まえていた吸血鬼が叫び声をあげていた。よく見てみると吸血鬼の腕が両方とも血を流して斬られていた。よく分からなかったが水鈴は身動きが出来ると判断すると手にしていた銃で腕が斬られていた吸血鬼の心臓を打った。
吸血鬼は灰となって消えた。
「何が起きたの?」
その場にいる全員は驚きを隠せないでいる。
「ギャアァァァ!!!!!」
すると今度はもう一体の吸血鬼が叫び声が響いた。クロノと水鈴が吸血鬼を見ると吸血鬼の心臓から血が出ていた。
「ギ・・ギザマー!」吸血鬼の背後には人影があった。吸血鬼が背後の人物を攻撃しようと手を挙げたが背後の人物に首を斬られ、灰となって消えてしまった。
「何者だ」
クロノが静かに尋ねるとその人物は姿を見せるため前に歩いた。その人物は赤髪でクロノと水鈴とはあまり年齢差は代わらい青年だった。手には一本の槍がある。青年は口を開いた。
「俺は“ラル”。道に迷ってたらさっきの事になってて助けたけど・・・駄目だったか?」「駄目じゃないよ。ありがとう、助かったわ。私は水鈴。そしてこっちの無愛想なのがクロノ」
水鈴はラルに自分の自己紹介をし、クロノを指差してクロノも紹介した。
「(人間・・・か・・・)」
クロノはラルを人間と判断すると剣をおさめた。
「ラルはどうしてここに?」
水鈴の質問にラルは頬をポリポリかきながら答えた。
「いや〜、よく分からないうちにここにいてお前達を見つけたから」
ラルの答えにクロノと水鈴は
“ラルは方向音痴”と思わざるを得なかった。
「ここは危険みたいだし・・・森を抜けるまで共に行動しないか?」
「私はいいけど・・・(ラルを一人にしたらまた道に迷いそうだし)」
ラルの意見に水鈴は賛成だった。しかし、水鈴はクロノの答えが気になりクロノの方をチラッと見た。クロノは水鈴の視線に気付くと溜め息をつき口を開いた。
「確かにこの森は危険だ。ラルの実力(不意討ちばかりだが)も先程の戦いで分かったし、いいだろう」
水鈴とラルは笑顔になる。
「さっさと安全な場所を探して休むぞ」
クロノはそう言うと先に歩いて行った。
「クロノ、待ちなさいよ!」
水鈴とラルはあわててクロノのあとを追う。
クロノ達がいる森の上空。一つの影があった。
「この森から中級吸血鬼の反応が二つ消えた?この森に現況があるのか?」
影は近くにあった一番高い木に立った。
「しかし、森の中にいては厄介だな。他の場所を探してみるか・・・」
影は別の所へ飛び去った。