表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月夜  作者: 琶苑
2/13

No.2:町の支配者

北の地にある町に初めて足を踏み入れたクロノと水鈴。

まだ昼だというのに町には人が一人も歩いておらずとても静かで淋しかった。

「やっぱり吸血鬼が支配下にあるのね・・・此処《北の地》は・・・」

水鈴は下を向き、クロノは無言だったが表情は暗かった。

二人は今日はこの町に泊まるため宿を探す。宿を見つけ、中に入った。


キィ・・・カランカラン

中に入ると宿の主人は驚き震えていたが顔を確認すると安心し、深呼吸をした。

「お客さんか・・・。てっきりラドウかと・・・」

「ラドウ?」

「この町を支配している吸血鬼の名前だよ。町の娘達を一人連れていき遊んでその娘に飽きたら血を吸い殺すんだ。気に入った娘は同族にするし・・・。僕の娘が連れていかれると思ってね・・・。さて、泊まるのは二人でいいんだね。一人、一部屋でいいかな?」

宿の主人は鍵を一つずつ渡した。




そして時間は進み、最も恐れる夜・・・闇の時間となった。人々は恐怖に怯えている。宿の2階で休んでるクロノと水鈴。


「何か下が煩いわね」水鈴が煩いのに気付いた水鈴は一階を覗きに行った。




「女、この町を助けたかったら俺様に大人しくついてくるんだな!」

「お父さん。私、行くね。私一人のためにこの町が犠牲になることなんてダメだから」

水鈴は影で様子を見ている。

寂しそうに笑っている女が宿の主人の娘だろう。そして・・・

「あの吸血鬼がおそらくラドウ・・・」

その場にいるのは宿の主人、宿の主人の娘、そしてラドウと予測される人間とは異なる姿をした吸血鬼。

「えと、確か人間とは異なる姿をしてて理性があるのが中級吸血鬼なのよね」

「リサ!」

宿の主人が娘の名を叫ぶ。

「さようなら、お父さん」

「待ちなさい!」

吸血鬼が娘を連れていこうとしたとき水鈴が姿を見せた。その場にいる全員が水鈴を見た。

「吸血鬼!その娘を放しなさい!」水鈴は吸血鬼を睨む。

「あぁ!?女、この町を支配している吸血鬼ラドウ様に対しての口のききかたに気を付けな!敬語使えよ!」

「アンタに敬語?やめてよね。私が馬鹿みたいじゃない」

水鈴は鼻でラドウを笑った。強気の水鈴に対しラドウは笑った。

「面白い女だ。この町の女は俺様を恐がって話にならねぇ。お前が俺様についてくればこの女、放してもいいぜ」

「誰がアンタなんかに―!」

水鈴は銃を取り出そうとしたが銃がない。

「(しまった!銃も弾も部屋にある!)」

「どうするんだ?女」水鈴は怯えている主人や主人の娘を見た。

「・・・いいわよ。その娘を放して」

「お客さん!ダメだ!」

「お父さんの言う通りです!私が!」

主人と主人の娘が言うが水鈴は無視しラドウの元へ歩いていく。ラドウは水鈴を抱くとそのまま外へ出て行き屋根の上に昇った。

「!」

水鈴は押し倒され首筋を出された。

「何、するの?」

震える声でラドウに尋ねる。ラドウは笑みを浮かべて答える。

「俺様が気に入った女は同族にして俺様の下僕にするのさ。安心しな、大切に扱ってやるよ」

「い・・・や・・・!」

抵抗しようとするが手足を押さえられ身動きでいない。

ラドウの牙が水鈴の首筋に近づいてくる。

「クロノ!」

水鈴がクロノの名を叫んですぐのことだった。

ラドウの腕が一本血を流して切れていた。

「ガアァァァァ!!!!!」

ラドウが痛がり叫ぶ。ラドウに隙が出来ると水鈴はラドウを足蹴りした。

ラドウは吹っ飛び地面に叩きつけられた。

「水鈴、常に銃は持っていろ」

声のしたほうを見るとそこには剣を抜いたクロノが立っている。

クロノは水鈴に銃を渡すとラドウの方を睨む。水鈴もラドウを睨む。

「グ!ギ・・・サマラアァァァ!!!」

ラドウが襲ってくる。クロノと水鈴はラドウの攻撃を避ける。

水鈴はラドウの頭部に弾を打つとラドウには隙が出来る。ラドウに隙が出来たところでクロノがラドウの心臓に剣を刺した。

「ギャアァァァ!!!!!」

ラドウは灰になって消えた。

「はぁ、助かったわクロノ。ありがとう」「別に・・・(こいつは中級吸血鬼の中でも雑魚の部類か・・・。やはり城はまだ遠い)」




日が昇るころ町中にラドウが死んだと知らされた。町はまだ暗いが町中には人の姿がちらほら見えている。

町の住人に感謝されたクロノと水鈴。町の住人に見送られ町を離れた。



「町の人達、喜んでたね」

「だが、恐怖が消えたわけじゃない」

「そうね・・・。そういえば、クロノって何で北の地に来たの?」水鈴の質問にクロノは反応し立ち止まる。そしてゆっくりと口を開いた。

「自分の・・・ため」

「え?よく聞こえない」

クロノの声が小さかったため大切な部分を聞き取れなかった。

「何でもない。さっさと行くぞ」

クロノは再び歩きだした。水鈴は疑問を浮かべながらクロノの後を追う。




クロノは言いたくなかったのだった。他人に知られたくなかったのだ。

“自分の存在を確かめるため”と・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ