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月夜  作者: 琶苑
13/13

No.13:奇跡・・・


「やめて!クロノ、もうやめて!!!」


ブラドを痛め続ける吸血鬼となり、我を失ってしるクロノを水鈴は何度も叫んだ。

しかし、水鈴の叫びも空しく、クロノの耳には届かない。


「無駄だ・・・こうなった以上、止められはしない」


ブラドがそう言った。

ブラドは必死にクロノの攻撃を避けているが避けきれてはいない。


「私は・・・無力すぎるわ。クロノの力になりたいのに」


水鈴は涙をボロボロとこぼす。


「クロノもラルも神無も、みんな傷付いているのに私だけ」


水鈴はキッとクロノを睨めた。


「私だけ足手まといはいや!!」


水鈴はクロノの所へ走り出した。

しかし、クロノに簡単に弾き飛ばされる。


「クロノ!」


弾き飛ばされともまた、クロノの所へ走り出す。

しかし、また弾かれる。

何度も何度も水鈴はクロノの所へ向かう。

クロノが向かって来る水鈴を弾こうとしたとき。


「クロノ!!」


水鈴がクロノの名を叫んだ。

クロノの動きが一瞬止まった。

水鈴は出来た隙を逃さずクロノの目の前に立ち、クロノを抱き締めた。

「もぅ、苦しまなくていいよ」


クロノは水鈴の言葉に反応した。

水鈴は言葉を続ける。


「クロノのそんな姿、クロノのお母さんは望んでないよ」

「母・・・さん・・・?」


「クロノのお母さん、きっと悲しんでいるよ。クロノのお母さんはクロノが元気でいればそれでいいと思ってる」


クロノは水鈴を見つめた。

水鈴から目を離せなかった。


「復讐とかどうでもいいと思ってるよ。だから、いつものクロノに戻って!!!」


「無駄だ。吸血鬼王の血は止められない」


水鈴の言葉をブラドは否定する。

クロノは手をゆっくりと動かし始めた。

そして、水鈴の方へ向けた。

水鈴はクロノの手を握った。


「クロノの手はまだ温かい。人を殺さないからだよ。人を守ろうとしたからだよ」


水鈴がそう言った次の瞬間、クロノは水鈴を強く抱き締めた。

その行動に水鈴とブラドは目を丸くした。


「クロノ!?」


「ありがとう、水鈴。俺の手はまだ温かいんだ。人を守れてたんだ」


「うん。クロノは体が吸血鬼でも心は人だよ」

「水鈴、ありが―――ガッ!?」


突然、クロノは口から血を吐き出した。

倒れてくるクロノを水鈴は受け止めた。

クロノの背後にはブラドが立っていた。

ブラドがクロノをやったのだ。


「クロノをもう少しで吸血鬼王に仕立てあげられたが、この女に邪魔された」


「仕立てあげる・・・?」


「どういうことだ?」


クロノはふらつきながらも立ち上がった。

クロノの問いにブラドは口元を吊り上げて答える。


「我々吸血鬼は吸血鬼王がいるだけで力をより強力にする。だから吸血鬼王が必要だ」


「だから父を必要以上に追っていたのか」

「そうだ。でなければ裏切り者を求める必要はない」

クロノは

「それにしても」と口にした。


「吸血鬼というのは強力だな。人間なんかより優れている」


「下等生物と一緒にするな」


ブラドが冷たい目をクロノに向ける。


クロノは突然ブラドに襲いかかる。

ブラドはすぐにクロノの攻撃に気付き、クロノの攻撃を受け止める。


「自我を失っていたときの記憶は残っている。自我を失っていたときより劣っているな」


「確かにな。動きはスマートになったが。クロノ、貴様を吸血鬼王にする方法をずっと考えていた」


ブラドは水鈴を見た。

「あの女を殺せばいいのだ!!」


ブラドは水鈴に襲いかかる。

水鈴は驚く。

ブラドの動きは素早く、水鈴は対処出来なかった。ブラドが水鈴に斬りつけた。

水鈴の目の前には血が飛び散っていた。

しかし、それは水鈴の血ではなかった。クロノの血だった。


「水鈴、無事だな」


「クロノ!」


倒れてくるクロノを水鈴は支える。


「水鈴、これを・・・」


クロノは水鈴に一本の剣を差し出した。


聖剣だった。


「お前に伝えたいことがある。俺はお前の兄に会った」


「え?」


突然のことで水鈴は耳を疑った。

「お前の兄・・・火琉に会った」


「火琉兄さんに会ったの!?兄さんは何処にいたの!?」


「お前の兄は吸血鬼に血を吸われ、もぅ人間に戻ることは出来ない。お前の兄は死を望み、死んだ」


「兄さんが・・・死んだ・・・?」


水鈴にその言葉は辛かった。

あまりの辛い言葉に涙を流した。


「火琉はお前に『ごめん、ありがとう』と言っていた」


クロノは水鈴に銀色に輝く首飾りを渡した。

水鈴にはそれが何なのかすぐに理解できた。


「これは、兄さんが私の誕生日にプレゼントしようとしてた首飾り・・・。兄さん!」


水鈴は首飾りを強く握った。


「水鈴、剣を抜け」


水鈴は頷き、剣を抜いた。

剣はとても美しく輝いている。

ブラドは剣を見た瞬間目を見開いた。


「まさか、あれは聖剣!?ということは、あの女は聖なる血を持つもの!?」


バァンッ


突然、強く扉が開かれた。

開けたのは人間の姿に戻ったラルと神無だった。

二人は互いの身体を支えていた。


「二人とも、無事だったのね!」


「水鈴、その剣で陰水晶を壊せ!」


「え?でも、陰水晶は闇が入っているんじゃ?」


神無の言葉に理解出来ない水鈴。

今度はラルが叫んだ。


「違う!陰水晶を破壊すれば吸血鬼が滅びる!だから―――!?」


ラルと神無の身体が何者かによって貫かれた。

二人の背後にはエリトリアがいた。

エリトリアが二人を攻撃したのだ。


「アハハハハ!!!シネシネシネシネシネ!!!!」


神無はエリトリアを斬りつけた。

エリトリアは灰となり死んだ。


「私達、もぅ・・・だめだ」


「でも、最後の力を振り絞る」


二人は最後の力を振り絞り、陰水晶を水鈴に投げた。

投げたあとの二人は地面に倒れる。


「ラル!神無!」


「水鈴!聖剣で陰水晶を破壊しろ!二人の犠牲を無駄にするな!」


「させるかぁー!!!」


ブラドが水鈴を襲う。

しかし、それはクロノにより、邪魔される。

水鈴は剣で陰水晶を破壊した。


「そんな!!!」


今まで暗かった空に太陽が出現した。

太陽の光を浴びたブラドは灰となり消えていく。


ラルも少しずつ灰となり消えていく。


「ラル?」


ラルは消える前に意識を取り戻した。


「俺は吸血鬼だ。黙っててゴメン」


「いいの。今までありがとう」


神無も意識を取り戻した。

神無はラルを見て微笑んだ。


「ラル・・・消えるのか・・・」


「あぁ。神無、好きだ」


「私もだ」


互いに微笑み、ラルは消えていった。

神無も目を閉じ、そのまま目を開くことはなかった。

そして、クロノも足から灰になりはじめた。水鈴は倒れたクロノに近づいた。


「クロノ・・・消えないで!私の大切な人にこれ以上消えて欲しくない!!」


「水鈴・・・聞いて欲しいことがある」


「え?」


腕の力で水鈴に顔を近づかせ、水鈴に口づけをした。

水鈴は目を見開いた。

そして、水鈴から口を放す。


「好きだ」


「クロノ・・・」


「水鈴は俺にとって光だった。初めて会ったときから好きだったのかもしれない」


水鈴の目には大量の涙があった。


「クロノ・・・」


「答え、聞かせて」


水鈴はクロノを抱き締めた。


「私もクロノが好き!!!だから、消えないで!!!誰か!クロノを助けて!!!」


水鈴がそう叫んだ瞬間、水鈴の首飾りが光った。

光はクロノを包み込んだ。

クロノの消えていた足は元に戻り、クロノの姿は人間の姿になる。


「クロノ・・・」


「水鈴・・・」


二人は互いに抱き合い、口づけをした。






【1年後】


クロノと水鈴は北の城がある地に来ていた。

北の城はあの後、二人が燃やし、焼け跡から遺体が一人出てきたそうだ。

それは神無の遺体だろう。


北の城跡には墓が二人分ある。


その墓には“ラル”と“神無”と書かれていた。


「何で、俺だけ助かり、しかも人間になれたんだ?」


「思い出したの。あの首飾りは願えば一度だけ奇跡を起こすって」


「そうか・・・」


クロノの手を水鈴はギュッと握った。


「二人の分まで生きよう、ね!」


「あぁ」


二人はその場から立ち去った。




この一連のことは水鈴とクロノしか知らない。




end

“月夜”やっと終了です。

あまり良くない終わりかたかもしれません。申し訳ありません。


いつの間にか二人は両思いになってましたね。

ラルと神無もいつの間にか両思いになってました。




では、月夜を今まで読んでいただきありがとうございました。

他の作品も読んでくださいね。

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