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月夜  作者: 琶苑
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No.10:北の城

「ここが・・・北の城・・・」

クロノ達の目の前には城がある。

「神無は此処に来るのは二回目だよな?」

神無はラルの問いかけに黙って頷く。

「なら、神無に案内してもらったらいいんじゃねぇの」

「私は此処が嫌いだ。目的を達成したらすぐに立ち去った。道など全ては分からない」

ラルは残念な顔をする。神無は『それに』と付け足した。

「この中は複雑すぎる。水鈴の所まで無事に着けるとは限らない。しかも、この中は吸血鬼が数え切れないほどいる」

「見かけたら逃げるのが正しい選択肢だな」

クロノの言葉に神無は頷く。

「それでも行くのか?死ぬかもしれない」

神無がクロノとラルを見て問いかけた。

最初に口を動かしたのはラルだ。

「此処まで来たし・・・引き下がる訳にはいかないな」

「ラル、お前はもともと関係ない。引き下がってもいいんだぞ」

クロノの言葉にラルは首を横に振る。

「いや、俺は家族を守るために北の城を目指した。森で道に迷っていたとき、クロノと水鈴と出逢ったのは偶然だ」「(すごい偶然だな)」

クロノと神無は同じことを思っていた。

三人は城の中へと入って行った。




―北の城内―

「おそらく水鈴と陰水晶は別々の所にあるだろう」

神無はラルとクロノにしか聞こえない程度の声の大きさで話す。

二人は足を止め、神無の方を見る。

「別行動を提案する」

「き、危険すぎる!」

ラルは神無の意見を拒否する。

クロノは顎に手を置き、考え始めた。

「危険は承知のうえだ。だが、城の中に長居するのはもっと危険だ」ラルは黙り込む。神無は口を動かし続ける。

「私が陰水晶を取り戻したらすぐに水鈴のもとへ行き、陰水晶を破壊する」

「分かった。俺は神無の意見に賛同する」

ラルはクロノの意見を聞き、溜め息をついた。

「分かったよ。多数決的に負けてるし・・・俺もその意見に従う。ただし、俺は神無について行く」

「陰水晶の方が守りが強い筈だ。危険だぞ」

神無はラルを強く睨んで言う。ラルは一瞬引いたが、すぐにつりあげた。

「危険だからこそ神無について行くんだ」

神無は一瞬驚いたがすぐに口をつりあげた。

「クロノ、一人になるが、大丈夫か?」

ラルはクロノの方を見て言った。

クロノは首を縦に振る。

「分かった」

「陰水晶のありかは分かるが、水鈴の居場所は分からない。気をつけて」

神無の言葉に無言で頷く。

クロノたちは再び足を動かす。



しばらく歩いていると広間に着いた。

「吸血鬼!!」

広間にはたくさんの吸血鬼がいた。

吸血鬼は下級・中級ばかりだった。

クロノたちはそれぞれの武器を取り出し、吸血鬼に向かって襲いかかった。

吸血鬼たちが切り殺された。

クロノが吸血鬼を切っているとものすごい殺気を感じた。殺気を感じた方向を見ると、上級吸血鬼がクロノを襲ってきた。

クロノは咄嗟に吸血鬼の攻撃を避けた。

吸血鬼は避けられたあとも続けて攻撃を仕掛ける。

クロノは攻撃を剣で防ぐ。

突然、吸血鬼の動きが止まった。

「?」

何故、吸血鬼の動きが止まったのかが分からなく、クロノも動きを止める。

吸血鬼が口を動かす。

「吸血鬼の王の血を受け継いでいるだけのことはありますね、クロノ様」

吸血鬼はニッコリと笑った顔で話す。クロノは警戒を強めた。「ブラド様からの言葉を言付かっております」

ブラドという名を聞き、クロノは目を更に鋭くさせた。

吸血鬼はブラドからの言伝てを口にする。

「『お前は人間側にいるべき存在ではない。我等と共に来い』だそうです」

「人の親を殺しておいて、今度はお前達の仲間になれとは・・・随分とムシのいい話だな」

クロノは吸血鬼に攻撃を仕掛ける。

しかし、吸血鬼は簡単にクロノの攻撃を避けた。「やはり、簡単には承諾はしてくれませんか」

「ブラドと水鈴の居場所を言え」

「言えません。実力で聞き出したらどうですか?」

「そうだな・・・」

クロノの言葉を合図に二人は同時に攻撃をする。



「神無、クロノを見ろよ!上級の吸血鬼と戦ってやがる!」

吸血鬼を切っていたラルはクロノと吸血鬼の戦いに気付き、近くにいた神無に話しかける。神無はラルに言われてそれに気付いた。

「助けに行こう」

ラルの言葉に神無は頷き、クロノに加勢しに行こうとしたが、下級・中級の吸血鬼に邪魔をされ、行けなかった。

「邪魔だ」

「クロノの所に行けないな」

神無は吸血鬼の数を数え始めた。

「十体か・・・。数は確実に減っている。コイツラを片付けない限りはクロノの所には行けない。ノルマは一人五体でいいな」

「上等!行くぜ!」

ラルの声を合図に二人は吸血鬼に襲いかかる。



クロノと吸血鬼の戦い。

ボロボロの吸血鬼に対し、クロノは殆んど無傷だった。

「(何だ?これが、吸血鬼の王の力なのか?いくら私が上級吸血鬼の中で弱くとも奴は強すぎる!!!)」

クロノは吸血鬼に剣を向けて言う。

「もう一度聞く。ブラドと水鈴はどこにいる?」クロノが吸血鬼に尋ねると吸血鬼はフッと笑い口を動かす。

「ブラド様と人間の女はこの先にある廊下を左に行けばいます。ちなみに陰水晶は右に行けばあります。しかし、その程度の実力でブラド様を倒すことは不可能―ガッ!?」

突然、吸血鬼は血を出して倒れた。クロノが吸血鬼に剣を刺していた。

吸血鬼を刺したクロノの眼はとても冷たいものだった。

「うるさい。俺はブラドを“倒し”に来たんじゃない。“殺し”に来たんだ。間違えるな、カスが!」

吸血鬼は灰となり、消えた。

「クロノ!大丈夫か?」

ラルと神無が全ての吸血鬼を倒して、クロノのもとに来た。

「あぁ」

クロノが無事なのを確認すると安心する。

「吸血鬼から何か情報を聞き出したか?」

神無がクロノに尋ねる。クロノは頷き、さっき吸血鬼から聞き出したことを二人に話す。

「成る程な。この先か・・・」

「分かったなら行動あるのみだ!行くぜ!」

ラルの掛け声にクロノと神無は頷き、広間を出た。




廊下を歩いていると左右に分かれる道がある。三人は足を止め、互いを見合う。

「クロノ、お前は一人なんだ。気を付けろよ」

「ラルもな」

「私とラルが陰水晶を取り戻したらすぐにお前の所に行く。水鈴を助け出せ」

「分かってる。この世界から吸血鬼を消し、光の世界を取り戻そう」

ラルと神無はクロノの言葉に無言で頷く。

「俺たちって、強大な闇に立ち向かう小さな光だな」

ラルが笑いながら言うとクロノと神無も思わず笑う。

「最後じゃないから、“さよなら”じゃないよ」

神無がそう言うと、クロノとラルは頷く。そして同時に息を吸う。

「またな」

三人同時に言うと背を向け、それぞれの道に進む。




To be contnue.

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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