すべての終わり
光の力をなかったことにする。
それはつまり、俺が今までしたことをなかったことにするということだ。
「本当に良いのですか?」
ヴィーンさんが聞いてくる。
だってほかに方法はないんだろ。
「それはそうですけど…普通、魔法を手に入れた者はそう簡単に手放したくないものではないのですか。」
そりゃそうさ。
だけどこの事態は俺が力を得たことで始まったとも言える。
だったら俺が力を得なければいいだけだ。
「よく分かりませんが、まぁあなたが良いならばどうぞお好きにやっちゃって下さい。」
なんか最後にものすごく適当に扱われた気がするが、俺にも異世界人とはいえ多くの人を不幸にした自覚はあるのだ。
だから俺にできることは何でもしたいと思う。
それにしても光が無かったことにするのか・・・
とりあえずあの日のことを書けばいいのかな?
ってあれって何日だっけ?
どうしよう。ぼかしてもいいんだけど、変にかわってたら嫌だしな。
「あなたが最初に起こした事件の日を調べれば良いのではありませんか?」
あっ、そんな手があったか。
なんか俺の事なのにそこまで人に言われたのはショックだな…
いまさらだけど。
えーと、最初の事件・・・
爆発だっけ?あの時はだいぶ焦ったよな。懐かしい。
「思い出に浸っているところ悪いのですが、その前にもうひとつあります。」
えっ?その前?
えっと・・・あっ、神隠し事件(命名は俺)か!
あれはほとんど俺の知らない所で起こってたからあまり覚えてないんだよな。
ってかなんでヴィーンさんこんなに俺の事詳しいんだ?
まあいいや。
えーと、「村 神隠し」で検索っと。
あんまニュースちゃんと見てなかったから検索ワードもあまり思い付かないんだけど・・・
よかった、ちゃんとでた。ネットって凄いな。
時々ヴィーンさんと下らない事を話しつつ、何とか書き上げた。多分、これが現実化したらもうヴィーンさんと話せなくなるのがどことなく寂しかったんだろう。
初めてのメル友が失われるのが。
「そんな気持ち悪いこと考えてないで早く保存してください。」
…ヴィーンさんってツンデレだよな、絶対。
「早く保存しろよ。」
なんか口調がものすごく恐いことになって来たので、保存してしまった。
これで、今までのことが全て無かった事になるんだな…未だに寂しい気分が抜けない。
「ところで、学校は良いのですか?」
・・・・・・やばっ。すっかり忘れてた!
もうギリギリじゃん。
まだ朝食食べてないのに。
もっと早く言えよ。
「私はあなたの保護者じゃないので。」
わーヴィーンさんが冷たい。
そんなやり取りをしつつ、学校へ向かった。
それと共に俺の力に関する記憶が無くなりつつあることに気づかず。
俺は鷹鷺心。高校生。
一時期ネットでちょっと話題になったなんの取り柄もない奴だ。
まわりからはあまり覚えられていないだろう。なにしらろコミュ障なのだ。
そんな俺のどうでも良い日々が、今日も紡がれる。
ここまで見てくださったたくさんの方々、ありがとうございました。
このあといくつか閑話?も書かせていただくのでぜひ見てください。
あと、近々新作も上げる予定なのでそちらもお願いします。




