殺されたい彼女
人には人の愛情表現があると思う。
だから私の愛情表現は愛した人に殺されることだったりする。
愛した人に殺される、愛した人の腕の中で死ぬ。
なんて幸せなことなんだろうか。
「ってことで、どうぞ?」
するり、と手を広げて微笑む。
早く早くと急かすように彼を見つめれば、大好きな彼が真新しいナイフを持っている。
その視線にゾクゾクと快感が背筋を走った。
私を愛してるって想いと、愛してるから殺したいって思いが見える彼の目に私は犯されている。
そして今から彼の手で死ぬ。
こんな幸せなことが他にあるのだろうか。
ナイフに反射している私の顔は歪な笑みを浮かべていて、彼も同じような笑みを見せる。
私が殺されたいように、きっと彼も私を殺したい。
何て素晴らしい利害の一致でしょうか。
この愛を正当化されることに喜びを感じて、愛を受けられることが幸せ。
もう死んでもいい、と思ってしまう。
今から事実死ぬのに。
するりと私の肌を滑ったナイフ。
赤が流れて綺麗。
彼がうわ言のように愛してるを呟いて私は笑う。
大きく両手を広げて彼の愛を受け止める。
だから、私の愛も受け止めて。
彼と私の歪んだ笑顔と愛が交差して、私の呟いた愛してるを最期に私は果てた。
愛の先には死を望んだ私がいた。