桜坂春幸
「ジャック・ケネディ! ペニーのかたきだ! お前にこの俺が倒せるか?」
夕暮れの街路地、俺は落ちる夕日を背景に宿敵であるジャックに啖呵を切った。
等間隔に並べられた木の影から不安そうにペニー(アキ)は俺を見つめている。
大丈夫だペニー、かたきは必ずとってやる。
ジャック・ケネディ(数学の鈴木教諭)はたじろぎながらも俺を敵と認識するやいなや、持っている鉈を無茶苦茶に振り回し、雄叫びとも悲鳴ともとれない奇声をあげ俺に向かって猛進。
俺は余裕の笑みを浮かべ、愚直にも直進してくるジャックを迎え撃つ。
俺の頭部めがけて振り下ろされる鉈を紙一重でかわし、違いざまに足を引っ掛ける。ジャックは慣性の働くまま派手に転倒し二転三転。
「あめえ、あめーよ。まるでチョコレートパフェのようにあめーぜ、ジャック!!」
俺はホルダーからツーアクションで愛銃のレイジング・ブルを取り出し、無様に地に這い蹲るジャックに向け銃口を突きつける。
ジャックは必死に握り締めた鉈を俺にかざす。
が、反撃を許すはずもなく無慈悲にも撃鉄は弾かれ、悪逆非道の限りを尽くしたジャック・ケネディ(数学の鈴木教諭)の脳天を正義の弾丸は貫いた。
鉛玉を脳天に食らったジャックは、十七歳にはちょっとキツイ知的内容物をブチまける代わりに、貫かれた脳天から粒子状に分解され空へと消えていった。
きらきらと消えていくジャックを見送ると俺は空を見上げ、背中に哀愁を漂わせて締めのセリフを吐く。
「ペニー、終わったよ……」
やっばい、これ超楽しいんですけど。
「んーと、春幸君?」
木陰からペニーが出てきた。
「ばっか、ジョニーって呼べ。だれだよ春幸って」
「んー、色々と聞きたいんだけど……なにこれ?」
「西部劇。いや、ハリウッドかな」
「どっちでもいいんだけどね。……それよりまた鈴木先生殺しちゃってるけど」
人聞きの悪いことを言いますねこの子は。
確かに死を擬似体験出来てるかもしれないけど、決して死んだ訳ではない。そもそもこの不思議でファンシーなご都合空間でどうやって死ぬことが出来るってんでしょうか。
……今頃あっちじゃびっくりして飛び起きてるかもしれないけど。
「だーかーらー、殺してないってば! その証拠にこうやって今日も出てきたじゃん。ぶつくさ言わずにアキもやってみればいいのに。前にちょっと愚痴ってたじゃん? あ、相棒ってのも良いな。悪の組織に立ち向かうエージェント二人組っていう設定で一緒にどう?」
アキは困ったり悩んだりしていると前髪を触る癖がある、おかげで前髪だけ天パの他はさらっとストレート。低身長に童顔で癖っ毛、天使のコスプレさせたら凄く似合うと思う。
「んー、遠慮しとく。ここのところ毎晩鈴木先生殺されてない? 今日だって授業中なんだか眠そうだったし。これじゃどっちが悪逆非道かわかったもんじゃ……」
「それほどでもない」
「いや、褒めてないんだけどね。とりあえず鈴木先生はいいとして――」
あ、いいんだ。
「僕が心配なのは春幸のほう。もしここで死んじゃったらどうするの? あっちじゃ重体なんだからね、それ分かってる?」
「むぅ……」
ここで死ぬ → 現実で飛び起きる → 重体の俺超危険。確かに。
あぁ、そういえば俺は今あっちじゃ病院のベットの上で意識不明の重体なんだそうな。
俺は全然覚えていないのだけど、なんでも夏休み直前に俺とアキは交通事故にあって二人仲良く病院に搬送されたらしい。
らしいって言ったのは全く覚えていないから。
事故のショックからか、死にかけているからか、俺にはあっちでの記憶はほとんど無い。
なので『春幸はぼけーっとしてるからな』とか言わないで欲しい。今回は全く関係の無い話なのであると、なけなしの名誉のために言っておく。
ついでに俺の株を上げるために言っとくと、事故時に俺はとっさにアキをかばったらしく、おかげでアキは搬送こそされたものの大事には至らなかったようだ。
まあこんな感じで絶賛重体中(自覚無し)の俺なんだけど、ここにも慣れてきてわりと楽しくやっている次第であります。
ここ? そういえば言ってなかった。ここは――
「春幸には言っても無駄かもだけど、いくら夢の中だからってあんまり無茶はしないでよね?」
「わかった、危なくない程度に無茶するようにする」と愛銃を構える。
瞬時にアキに取られた。
「んー、春幸君? 怒るよ?」
「わ、わかった。わかったから銃口をこっち向けるのやめて」
――そう、夢の中。……たぶん。
内容が無いよう……
読んで下さって光栄に思います、頑張りますので次も出来れば見てあげてください。