番外編8. 望が来なくなった
望って実は頑固なんですかね?自分をモデルにしているから認めたくはないですけど、第三者として見ると頑固なところがあるのかも?笑
負けるな!海斗!!
望は、ホテルへ遊びに来なくなった。
一時期は、シフトがない日でも週に1度は必ず、多い時で3回くらい遊びに来る週だってあったのに。
今は勤務の日だけ来る。そして終わればすぐに帰宅する。
話す内容は仕事のことだけ。
「三〇二号室に、タオル二セット追加して」
「分かった」
それだけ。
望は基本明るい。いつだって笑顔でいる。
他の人とは普通に話す。
でも、俺にだけは壁がある。
自分がそうさせたのは分かっている。
だから何も言えなかった。
何度か話しかけた。
「望、今日、大学はどうだった?」
「いつも通り」
「課題とか忙しい?」
「それなりに」
以前なら、そこから関係のない話に飛躍して、くだらない事でも楽しく話していたのに。今は続かない。それがどうしようもなく辛かった。苦しかった。
でもそれ以上に、望がいない日の方が辛かった。
自動ドアが開くたびに、休みなのに望が来てくれたのではと思った。
シフト表を見れば、望の名前を探した。
何度も、連絡をしようとしては、やめた。
二週間近く会わなかった。
あれほど望から連絡が来ていたのに、今は全くない。俺は毎日のように望とのトーク画面を開いては閉じを繰り返していた。
自分から距離を取ったくせに。耐えられなかった。
そんな時、ホテルでオーバーブッキングが起きた。
俺一人では対応しきれなかった。
客に怒鳴られる。
謝る。
別のホテルを探す。
また謝る。
そして怒られる。
そんなことを繰り返し、精神が少し擦り切れてきていた。
そこへ望が来た。
「望」
名前を呼んだ瞬間。
情けないくらい安心した。
「状況教えて」
望は仕事の顔をしていた。
俺が客対応。
望がシステム操作と電話対応。
自然と役割が決まった。
怒っている男性客に向かって、俺は必死に謝り、説明をした。
正直言うと、とても怖かった。手も震えていた。
でも、望がいる。
そう思うだけで、なんとか持ちこたえることができた。
対応がすべて終わったあと。
「海斗も。客対応凄かったよ。お疲れ様」
望がそう労いの言葉をくれた。
(まただ。)
この人は、いつもそうだ。
俺が自分で駄目だと思っているところを見て。それでも、ちゃんと良かったところを見つけてくれる。
手が震えていたと話すと、望が俺の右手を両手で包んだ。
温かかった。
望はすぐにその手を離そうとした。
俺は、反射的にその指をつかんだ。
もう離されたくなかった。ちゃんと向き合いたいと思った。
「望」
「何」
「最近、俺のこと避けてるよね」
今度こそ。向き合おうと勇気を振り絞った。
「あの日のこと、謝りたい」
「謝らないでって言ったじゃん」
「じゃあ、話がしたい」
「別に、俺は話すことないけど」
「俺にはある」
「望が言ったこと、ずっと考えてた」
「忘れてよ」
「忘れられない」
当然だ。一日だって忘れたことなんてない。あの言葉は俺が欲しかった言葉だったから。
「優しくされると、甘えるって話?」
「違う」
違う。本当は。俺も望が好きだと。でも怖かったと。それでもやっぱり俺は望のことが。
そう全部言おうとした。
その瞬間、
プルルルル・・・・
(なんでこのタイミングで外線が鳴るんだよ)
望の手を離すしかなかった。
電話を終えた頃には。
せっかく決心していた心はまた弱さを取り戻し、言えなくなっていた。
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