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深夜の居酒屋



……その晩、深夜の居酒屋にて。


「今日は、ありがとうね。来てくれて……」


「いやあ、お前から誘われるなんて、珍しいからさ。

 やっぱり、大変なのか? アナウンサーって……」


「大変も何も……お前最近ニュース見てる?」


「まさにお前の活躍を見てたよ……」


「うん……まあ、飲もうか、ここのお店さあ、深夜までやってる上に、料理人が歌手でさあ、

 全国の美味しいものを食べて回ってるからすごい美味しいんだってさ。食べてってくれよ。

 ……すいませーん!!」


 

 あなたが店員を呼ぶと、店員が駆け込んできた。




「生二つと、『奈良の奈良漬なま真魚鰹まながつお』と『炙りカルビ被りカルビ』、

 それから『生麦生米生卵かけご飯』をください

 それと、生はストローを一本つけてください」



 店員が去っていく。



「さすがだね……ところで、ビールをストローで飲むのかい?」


 貴方は、両腕を押さえて答えた。


「腕がね……筋肉痛であがらなくて……だから料理も全部お前食ってくれ」


「えー……そんなに大変なのかいアナウンサーってのは……」


「ニュース見てたらわかるだろ? どうなってんだい最近世の中は」


「うーんまあ、ややこしいことにはなってるよな」


「記事読んでるこっちだって、意味わかってないんだよ。

 マサチューセッツ州で結局何があったんだ?」


「バスが爆発するんだっけ? 明日……」


「後、お前さん確か、住んでるとこが港区だったよな。

 ごめんなあ昼、『浅はかな赤坂』とか悪口言って……」


「別にいいよ。びっくりしたけど。あと、ついでに魔術師がいたことにびっくりしたけど……びっくりで思い出した。

 お前の弟さん?大変なことになっちゃったじゃない。大原で不法侵入して捕まったのって……お前の弟さんだろ?」


「あいつも職場でちょっと精神をな……。一日で3度も捕まるなんて可哀想にな。

 とにかく、俺もうやだよ。

 こんな意味わかんないニュース読まされるの! それと噛んだら腕立て伏せだ! 軍隊じゃないんだっつうの!」


「そういうなよ。 アナウンサー、お前に向いてると思うよ? むしろお前じゃないとあんな記事読めないって。だから頑張ってくれよ」


「……ありがとう。ありがとうね。

 お前にそう言ってもらえると、明日一日くらい頑張ってみようかなって思えるよ……。

 生遅いね…… おーい!!」


 すると、店員が慌ててやってきた。


「生注文したんだけど」


「はい! すいません今すぐお持ちいたします」


「こっちは早く乾杯したいんだよ。しっかり頼みますよ。

 あと、『炙りカルビ被りカルビ』も早いとこ頼むよ。こいつに食わせたいんだから」


「あ……それがその……お客様、その商品なんですが今日はちょっと……」


「何」


「実は調理できる者が不在でして……お出しできないんです」


「何それ!! 何それ!! ひどいよーこっちはそれ食べに来てんのにさあ!!」


「はい……はい申し訳ございません」


「なんだよーサボり?」


「違うんですよその……普段から多忙な方なんですが、いま入院してて」


「何。病気? しばらく食べられないの? 炙りカルビ被りカルビ」


「はい。すいません……ちなみに事故です。乗ってたヘリコプターを撃墜されまして、

 手術中に病院を抜けたところまでは良かったんですが、今度は北アメリカの方で何やら厄介なことに巻き込まれたみたいでして……」


「手術中に病院抜け出すやつがいるかい! 何をやってるんだよ全く……ん?

 待てよ。

 ……もしかして、おたくの料理長、……演歌歌手かい?」


「ご存じなんですか? シャア少佐っていうんです」



















                あるアナウンサーの悲劇 了





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