表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

卸売市場の食堂

作者: GONJI

私の住むエリアから車で10分もかからないところに大阪市が運営する卸売市場があります

入口には「当市場は卸売市場ですので小売りはしておりません」とでかでかと書かれています

そうなると、商売人でない私は入るのに躊躇してしまうのですが、かつて地元の祭りの出店用に「あてもん」(当て物くじの大阪弁)とか、「風船」とか、さらにはたこ焼きを入れる舟とかを買いに行ったことはあります

よく解らない市場内の、どこに停めて良いのかよく解らない駐車スペースに車を停めて、忙しく動き回る市場内専用の車両の間をすり抜けて、売っている店をうろうろ探したことがありました

お店に入ってもプロの店主からは完全に素人だと見抜かれていますが、そこは商売ですから無下には断らずに付き合ってくださいました


もちろん卸売市場なので生鮮品の出入りも激しいのですね

テレビでよく見るセリの風景やら、目利きの場面やらが現実に行われているのですね

私は参加資格がないので目の前で見たことはありません

と言うより・・・その時間に市場に行く用事もないですわね(笑)


さて、そんなメインの市場とは別にこういう市場には関連事業者という方たちがおられます

多分、入口にある郵便局やら金融機関の出張所もそうなのでしょうし、行政の出先機関もありますね

それ以外にも市場で働く方の利便のために飲食店もあるのですね

これ敷居が高そうに思うのですが、部外者である一般人も普通に利用できるのです


ある早朝に朝食を食べにその市場内の食堂に行きました

しかし、店に入るのには勇気がいりました

なんせ素人丸出しの部外者ですから

扉を開けるとお店の方がこちらを見る

「初来店の部外者さんやな」なんてお見通しです

でも「いらっしゃいませ」と明るくおっしゃってくださり

さらに慣れてないのもお見通しだから「そこの席へどうぞ」と丁寧に案内までしてくださいます

市場関係者の常連さん達は知り尽くしているので、入るなり「〇〇お願い、一仕事すぐ片づけてくるから」と言って店を出ていく

なるほどねぇ


そしてある常連さんは「■■お願い、それとビール取るでぇ」とスポーツ新聞と勝手に冷蔵庫から瓶ビールを取り出して栓を抜いて新聞眺めながら呑みだす

いやいや朝やんか!

と思うけど、市場関係者さんにとっては一仕事終えたと言うことなのですかね?

知り合いの市場関係者も出勤が午前2時とか言っていましたものね


勝手が解らない私は辺りを見回す

来ているお客さんの食べ物もそうだけど、壁に書いてあるお品書き・・・

特に黒板にチョークで書かれた、毎日変わるであろう品書きに目がとまる

折角卸売市場にきたのならやはり刺身だわね

それに、出汁巻き卵焼なんて絶対うまそうやし、アジフライなんて最高なんじゃないの?

黒板を見ながら妄想が走り出す


常連さん達は、カレーとか炒飯とかラーメンとかハムエッグ定食とか、普通?の物を食べてはるんですよね

まあ、それが常連と言われる謂れなのか・・・


さっき一仕事済んだらと言って出て行ったお客さんが戻ってきたら、すぐ女将さんが「はいこれできてるで」と言って料理を持ってくる

このお客さんそれを急いでかきこんで食べたら「お代置いとくでぇ」と言ってあっという間にまた仕事に戻ってしまった


何やら私一人この素早く流れる時間に取り残されているようだ

「すみません」

「はい」

「マグロの刺身と、出汁巻き玉子、アジフライに小ご飯と豚汁ください」

「はい…(復唱する)…あとそこから好きな小鉢一つと漬物を取ってくださいね」


「お待ちどうさま…マグロの刺身と小ご飯と豚汁です」

速い!

醤油皿に醤油を入れまずはマグロの切り身の上にワサビをのせて・・・いただきます!

おお!新鮮やんかプリプリしている

今度はご飯の上に載せて一緒に食べる・・・おおマグロ丼!

豚汁・・・大きめの器に入っている、このごぼうの香りがたまらんのよねぇ・・・美味いわ!


「お待ちどうさま、アジフライと出汁巻き玉子です」


お!熱々やんか・・・

切ってある出汁巻き玉子をまず一口・・・おお!想像通りの出汁の風味が効いたやさしい食感・・・間違いないよなぁ

アジフライ・・・やはり食堂なのだからソースでしょ!いや醤油か?今日はソースにしよう、その前にレモンを絞って、箸でつまんでかぶりつく・・・揚げたてのサクサク衣がたまらんなぁ、さすがアジも肉厚やしね、これが卸売市場内食堂の醍醐味やなぁ

小鉢はほうれん草のお浸しを選び、漬物は白菜浅漬け・・・


ぺロッといっちゃいました

いやぁ朝から食べ過ぎかなぁ・・・


やっぱり期待を裏切らない味!

そして昔からやっている早朝開店の卸売市場内食堂の雰囲気も十分味わって満腹ですわ


「ごちそうさんでした」

「ありがとうございます…(注文したもの復唱)…◎◎◎◎円です」

すごい!暗算ですぐ合計額が出てくるんや

さすが女将やねぇ

すっかり爽やかに店を出たら、まだ朝7時前だった(笑)

得した一日やなぁ!


そう言えば堺の魚市場内にも夜中からやっている有名な天ぷら屋さんがあって、夜中なのに大行列ができているとか・・・


卸売市場内にある飲食店の営業時間は市場関係者には日常だけど、私の生活時間とは全然違うよなぁと再認識させらましたね

でも、期待通りの味に喜びも一入ですわ




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ