第一章6話 ???? 結婚式?
「ギャギャッ! ギャギャギャ!!」
(……うわ、気持ち悪い。なんだこいつら……)
洞窟の奥から押し寄せてきたのは、小型の猿型魔物たち。
赤い瞳をぎらつかせ、道を埋め尽くすように群れを成している。ざっと見ても百体以上。
(この数……いくら完全顕現中とはいえ、相手の実力も分からないんじゃ勝てるのかも分からない...どうする?.……)
既存のスキルから作戦を練るがすぐに脳裏に浮かぶ。
(ダメだ。完全顕現中はキングガリル以外の能力は扱えないんだった……!)
息を潜め、じりじりと距離を取る。
だが――奇妙なことに奴らは襲いかかってこなかった。
威嚇はしている。牙をむき出しに、声を荒げる。
それでも飛びかかってくる気配がない。
(……なんだ? どうしてだ……)
その時、先頭に立つ一際大きな個体が、声を張り上げた。
「ギャ! ギャギャグギャ!?」
――瞬間。
(……え……!? 今、なんで“言葉”が……わかるんだ!?)
耳障りな鳴き声のはずなのに、頭の奥で意味が変換されるように届いた。
「王よ、なぜ急に式を抜け出されたのですか!?」
(……王?まさか……今の僕をキングガリルと勘違いしてるのか!?)
思わず振り返る。そこには、瓦礫に埋もれた“本物”の死体が横たわっていた。
「おや、その後ろにあるのは……死体!?」
「えっ……あ、ああ……そ、それは……」
声が裏返り、焦りで言葉が詰まる。
だが、小型ガリルたちの視線が一斉に注がれるのを感じ、必死に言い直した。
「……こほん。我が縄張りを荒らす愚か者がおったのでな。返り討ちにしてやったのだ」
「なんと!?この大事な日に!しかも傷一つなく圧勝とは……さすが我らが王!」
「……うむ。愚か者など、我が力の前では取るに足らぬわ」
少し声を低く落とし、王らしく振る舞う。
洞窟中に歓喜の声が響き渡る。群れのざわめきが、一気に祝祭のように変わった。
(……ふぅ、何とか誤魔化せたみたい。)
すると先頭の個体が続けた。
「流石ですぞ!きっと姫も喜ばれる事でしょう!さあ、王よ!早く“式”にお戻りください。姫は待ちわびておりますぞ!」
「ま、待て! 式とは……?」
ある考えが浮かび上がりぞわりと背筋に悪寒が走った。
「何をご冗談を!本日は王と姫との――結・婚・式――ではありませんか!!」
「…………へっ???」
頭の奥で雷鳴のように響き、思わず素の声が漏れた。




