第一章2話 ???? ステータスと未知との遭遇
「……ステータス、オープン」
唱えた瞬間、薄青い矩形の板が空中に浮かぶ。
自分の視線の動きに合わせて、ふわりと追従するホログラムのような画面――
level:1
名前:????
種族:ナニカ Lv1
加護:???の加護/???の加護
称号:転生者
HP:10/10 MP:100/100
攻撃:1
防御:1
魔法:1
抵抗:1
技巧:1
速度:1
技能:1
unique skill『天邪鬼』
unique skill『嘘偽り』
unique skill『模倣』
耐性:精神耐性Lv2
「……弱っ……!」
思わず素で漏れた。
攻撃も防御も魔法も、ぜんぶ“1”。速度も“1”。
紙装甲のカカシどころか、紙ですらない気がする。
――なのに、胸の奥がざわめいた。
技能欄に並ぶ三つの文字列が、あまりにも不穏で魅力的だからだ。
『天邪鬼』
『嘘偽り』
『模倣』
「……タップしたら、出るのかな」
恐る恐る、最上段の『天邪鬼』に視線で触れる。
《unique skill『天邪鬼』》
あらゆる能力・効果・事象を反転可能。
任意対象の選択/適用/解除が行える。
※詳細は行動により開示されます。
「……“反転”。ざっくりしてるけど、やばそう」
続けて『嘘偽り』をタップ。
《unique skill『嘘偽り』》
嘘・偽りに対する補正、極大。
対象の嘘・偽りを看破可能。
※詳細は行動により開示されます。
「嘘?偽り?いまいち使い道が分からないなぁ...」
最後に『模倣』。
《unique skill『模倣』》
見たもの/触れたものを模倣可能。
身体や動作の再現に優れる。
※詳細は行動により開示されます。
「……なるほど。“やってみろ”ってことか」
ないはずの喉がからからに乾く。
ここは暗い洞窟、いつ何が出るか分からない。
けれど――検証せずに動く方が、よっぽど怖い。
《提示:能力の試行は安全な場所で行ってください》
《推奨:MP残量に留意》
機械的な声が、脳の内側でやさしく弾む。
……親切だな。
「じゃ、軽く。軽くね」
黒い霧――自分の右手に当たる部分へ意識を沈め、**“ハサミ”**の形を強く思い描く。
ズルリ。霧が金属光沢を帯び、二枚の刃が生まれる。ぎちぎち、と自然に開閉した。
「うわ、気持ち悪……でも動く」
《『模倣』の行使を確認。スキル詳細を更新します》
ユニークスキル『模倣』(更新)
•擬態:一度見た形状を模倣可能。能力値は本体参照。体積超過対象は不可。
•トレース:一度見た動作を再現可能(スキル由来の動作は不可)。
「なるほど“できたら開示”のタイプか……」
次は動き。
記憶の底から、動画で見たアスリートの踏み切り→回転→着地の一連を引き上げ、霧の体をそっと預ける。
ふわ、と床との摩擦が薄皮一枚ぶん削れたみたいに軽くなり、身体が弧を描いた。
ストン。音もなく着地。
「……いける。いけるぞ、これ」
勢いに乗って、小石をつまみ上げ、正面へ軽く投げる。
同時に『天邪鬼』に触れて――**“わずかに逆らえ”**と念じた。
ぴたり。
空気の流れが指先で反転したような、違和感だけが走り、小石は失速して床にコトと落ちる。
《『天邪鬼』の行使を確認。スキル詳細の一部開示》
『天邪鬼』反転:事象反転が可能。
「……ほんとに反転した。」
喉の奥がぞくりと震える。
怖さと、愉しさと、危うさが同じ温度で混ざっていた。
十分に呼吸を整え、もう一度ステータスを確認する。
MPの減りは――微量。やりすぎなければ、まだ動ける。
「じゃ、出口を探そう。ここで死ぬのはごめんだ」
夜光石が点々と照らす広場から、人ひとりがやっと通れるほどの細い通路が一本、黒く口を開けている。
『模倣』で足場を薄板にして滑るように移動し、曲がり角ごとに耳――いや、霧の表面をすませる。
《提示:狭所での交戦は高リスク。退避路を確保してください》
「分かってる。だから早めに――」
――ドン、ドン、ドン。
岩壁を削る轟音が近づき、やがて通路の闇から巨体がぬっと姿を現した。
全長三メートルを超える怪物。
岩盤を抉るほどの巨腕、鉄槌のような足音。
赤い双眸が、ただ一つの獲物を捕らえる。
「な、なんだよアレ……っ!」
喉がひゅっと鳴り、踵を返す。
細い通路を、ただ必死に駆け戻る。
《警告。対象を確認――危険度:中位級・災禍級Ⅳ》
「“災禍級Ⅳ”……中位級……? 序盤で出るやつじゃないだろ……!」
「グギャアアアアア!!!」
大地を揺るがす様に轟音が洞窟内を木霊する。
まるで死へのカウントダウンが始まったかの様に...
見て下さりありがとうございます!
誤字・脱字等見掛けた方は教えて頂けますと非常に助かります!




