第一章1話 デスパイネ 死す
「あー腹が減った...」
-最後に食った飯なんだっけなー。
昼下りの平日、20代くらいの男が気怠げに田舎道を歩いている。
-あー思い出した。2日前に近所のポチのドッグフード食べたなー、あれはまあまあ美味かったな。
空腹に耐えかね、近所に住んでいるポチという犬の夜ご飯を奪い全て平らげてしまった日の事を思い出す。
-あれ以来ポチに噛まれるわ追いかけ回されるわで一切近づけねぇし。
完全に自業自得である。
-ただな今日の俺は違う、前回競馬で勝ったこの5千円札を今日のパチンコで何十倍にもすればこの空腹感とはおさらばなんだよ。
じゃあなんでその金で飯食わなかったって?全然分かってねぇなぁ。
今日は駅前のパチでマリンスウィートの新台が出る日ギャンブラーの血が騒ぐのにそんな勿体ない使い方するわけないだろ。
マリンスウィート。マーメイドをモデルにしたあの人気アニメがパチンコにも遂に登場が決まったのである。
-こんな大金あれば犬に金棒、猫に翼だろ?
俺に掛かれば無敵って事だよ!
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
-.....負けた、びっくりするくらい負けた。
普通ちょっとくらい当たるじゃん、違うのかすりもしないの。
マリンちゃん演出あった?
演出のウィンクどころかずっと仏頂面だったから思わずブスって叫んだのは悪かったけどさちょっとくらい良いじゃん許してよ。
周りの客が当てまくっている中、この男は一度も当たる事なく全財産を使い切ってしまった。
-あー今日も飯抜きかー
水で腹を満たそうと思ったけど、水道も昨日止められたんだよな水を買うとか馬鹿げてるしな。
家賃も滞納を続けているのに水道代が払える訳もなく遂に水道も止められてしまったのである。
「いざとなったらポチのお世話になろう、よしそうしよう。」
-っと思ったけど、こんな時間に飯はもうでてねぇだろうなーどうすっかな。
「あれ?こんな所にお地蔵さんなんてあったっけ。」
考え事をしつつ道を歩いてたらいつしか見慣れない場所に居たのである。
-っにしても変な地蔵、薄ら笑いみてぇーな気味のわりぃー顔しやがって。子供がみたら号泣してんぞ。
でも地蔵っていったらお供え物とかあるんじゃね?
「やっぱあった!餅じゃんラッキー!ちょっとカビ生えてるけど食えんだろ。」
お地蔵さんの前に備えてある緑のカビが生えた餅を手に取り何の迷いもなく口に放り込んだ。
-この空腹には何でも喉に通るぜ、例え餅でも飲み物みたいにスーっと。スーってあれ?
やばい、やばい苦しい、、、、水!、、もないさっきケチったから??!
嘘だろ?どうすればいい?喉につかえて呼吸ができない!!
誰か!って周りに誰もいねぇ!!
嘘だろ、俺、ここで、「死ぬ」のか??
-こんなしょうもない終わり方?そんなのありかよ、
餅が喉につっかえて死ぬなんて...
-バカ親に「デスパイネ」なんて犬みたいな名前付けられた挙句、最後は犬死にかよ。
デスパイネ、親と呼ぶには程遠い存在が当時飼っていた犬の名前をそのまま名付けたのである。
-まぁもうどうでもいいや、そいえば有馬記念の抽選当たったかな。今回の指定席は最高倍率147.5倍ってやばいよなー。
《確認しました。ユニークスキル『人生賭博』を獲得しました》
見て頂きありがとうございました。
3人目はギャンブル大好きな金無しダメ男でした
次回からは1人目の主人公視点がしばらく続きます