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第一章5話 結 この旅ほんとに大丈夫?!

「はぁー。食った食った!もう一歩も動けねぇ...」


「私もお腹いっぱいですぅー」


お腹を叩き、椅子にもたれかかった翔達の目の前には大量にあったはずの料理が綺麗さっぱりなくなっていた。


「良い食べっぷりでしたな」


「あんたは...さっきの団長さん。名前はえーっと...」


「ギルバートです、ギルバート・ロウエル。

ネクトドス王国第一騎士団長を務めています。以後お見知りおきを。」


型にはまった礼儀作法は思わず見入ってしまう程洗練されていた。


「か、かっけぇ...よろしくお願いします。さっきはギルバートさんの丁寧な説明助かりました!有難うございます。」


「勿体なきお言葉恐れ入ります、食事を終えたばかりで申し訳ないですが今後の予定についてご相談したくご同行をお願い致します。」


「よっしゃ!待ってました!」


椅子から飛び、意気揚々と立ち上がりギルバートの後ろへ着いていく。


「あんたさっき一歩も動けないって言ってなかった?」


「あん?そうだっけ?」


「そっか3歩歩いちゃったから仕方ないわね...」


「誰が鳥頭だ誰が!」


ギャーギャーと朱里と翔がまた言い合いをはじめ、静香と亮はまた始まったよと言わんばかりに溜息をついている。


それをみて結は止めるべきかオロオロと戸惑っている。


「結君、あの2人はいつもあんな感じだから無視してもらって構わないよ」


「そ、そうなの?」


「うんー、私も何度も注意したんですけどーなかなか直らないんだよねー」


「そっかー仲良しさんなのね」


「「仲良くない!!!」」


さっきまで2人でいがみあってたはずなのに、結の言葉に敏感に反応し息ぴったりにお互い否定した。


「ふふっ2人とも可愛い」


そんなやり取りを繰り広げているといつの間にか扉の前に着いていた


「着きました、中へどうぞ。」


そこには顰めっ面をした金髪の、ギルバートと同じ格好をした若い男性の騎士がいた。

そして、部屋の隅ではフードを目深に被りニヤニヤと薄ら笑いを浮かべている男性がいた。


-?...あのフードの人こっちを見てる?


「ギャーギャーとうるさい、廊下を静かに歩く事もできないのかこれだから低俗なものは困る。」


金髪の騎士は腕を組み翔達を睨みつけながら吐き捨てるように呟いた。


「ディッシュ!言葉に気を付けろ!我が国、いや我々人類の救世主に向かって何だその態度は!」


「ふん、救世主ねぇ...何も知らないくせに。」


ディッシュは鼻で笑い飛ばしながら不遜な態度を変えない。


「何か言ったか?とにかく今回の遠征はお前が護衛兼戦闘技法の監督を担っているんだ、態度を今すぐに改めろ!」


「貴方に色々言われなくても分かってますよ()()騎士団長さん。」


次の瞬間ギルバートが目の前から消え、一瞬でディッシュに迫りより胸倉を掴みあげる。


「この前の決闘がまだ納得がいかないようなら此処でケリをつけてもいいんだぞ副団長殿。」


「グッ...わ、分かりましたよ。但し指導は部下にやらせます。私は護衛の指揮がありますので。」


並々ならぬ雰囲気に皆棒立ちで見守っていると、ギルバートが近寄り申し訳なさそうな表情で頭を下げる。


「大変お見苦しい所をお見せしてしまいました、申し訳ございません。」


「い、いえいえ。」


ギルバートが頭をあげると、一つ咳払いをし真剣な表情に切り替わる。


「早速ですが此度の遠征の詳細をお伝えします。」


部屋の中央に大きな卓上があり古びた地図が広げられている。

それを取り囲むように皆が集まり視線を落とす。


現在位置と目的地が分かりやすいように丸く囲まれており、それを結ぶ線が進路だろう。

現在結達がいるネクトドス王国は大陸の東に位置する。そして目的地の『終焉の地』は丁度大陸の真ん中より少し南下した所にある。


距離としてはそれなりにある為、移動手段は馬車を使いディッシュ副団長率いる騎士団が護衛を務めるとの事。


ふと、疑問に思った事を尋ねる。


「ギ、ギルバートさんは来ないんですか?」


「申し訳ないですが、王国の警備を手薄にする訳にはいかない為私はここに残らせて貰います。」


-そっかー全戦力を私達だけに割くのもおかしな話だよね。


「ディッシュは若くして副団長を務めておりその腕は確かです。護衛としては十分過ぎる為ご安心ください。」


「そ、そうですね。」


戦力で不安を覚えているわけではないのだが、本人の前で文句を言える訳がなく苦笑いを浮かべる。


「僕は君達と仲良しこよしする予定はないから安心しな、勇・者・殿」


ゆっくりとそして嫌味を多分に含みながら部屋からディッシュは部屋から出て行った。


「申し訳ございません、ディッシュは家柄を重んじており一定の階級に満たないものが自分よりも優秀な能力を持っている事が許せないみたいです。勿論別世界の住人であるあなた達に階級がどうの気にするのはお門違いなのですが...顔合わせをかね収集しましたが間違いでしたね。」


再び申し訳なさそうに俯くギルバートに居た堪れなくなり、翔が機転を効かせ話題を変える。


「それよりさ!そこのフードの人は誰なんですか?」


多少強引ではあるものの、この部屋に入った時から気になっていた事を皆の気持ちを代弁しきいてくれた。


「そういえばご紹介がまだでしたね、こちらの方は行商人です。南部の出身でして今回の道案内を依頼しております。」


「これはこれは、かの有名な英雄、もとい勇者殿と一緒に旅ができるなんて...光栄で、名誉で、誉望で御座います。(わたくし)の事は『デル』とお呼び下さい。」


大袈裟な身振り手振りは先程の騎士団長のように洗練された動きではなく、まるで()()が騎士ごっこを真似ているかのような動きだ。


「この佳良で精良で優秀な私に任せれば無事に目的地まで着きますよ、ふふっ。ではお先に失礼、城門で待ってますよ。」


そう言い残し、部屋には結達とギルバートのみが残された。


「ねぇ!ギルバートさん!この旅不安でしかないんだけど!!」


「お、落ち着いてください朱里殿。デル殿は不思議なお方ですがネクトドス王からのお墨付きの行商人です。武器の大量調達、未開拓地の地図、純度の高い魔石。きっと『終焉の地』までの道のりも安全で最短に着けますよ。」


「そうは言っても...ギルバートさんも付いてきてよー!」


「朱里ちゃん団長さん困らせないの!めっ!」


「えー静香ーだってさぁ、あんな平民大嫌い金髪貴族と不気味なフード野郎だよ!不安な要素しかないじゃんか!」


「まぁまぁ、俺らが早く強くなればいんじゃね?さっさと行こうぜー」


「何であんたはそんなに自信あんのよ」


「そりゃあ結ちゃんと比べたら劣ってるけど、俺らは天才の部類なんだろ?どんな奴がきても余裕だって!全部この天才翔様に任せな!」


「あんたそんな驕ってると足元救われるわよ」


「へーき、へーき!さっさと行こうぜ」


-私も朱里ちゃんと同じで不安でいっぱいだけど、我儘言っちゃ迷惑かけちゃうよね...この中だったら私が能力値は1番高いんだからしっかりしないと!


不安を抱きながらも頬を軽く叩き、皆の後ろを着いていった。

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