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第一章4話 結 ちょっと豪華すぎない?!

「じゃあ早速出発進行ー!」


ぐうぅーーー


誰かのお腹が盛大に鳴った。

その音の出所を辿ると顔を真っ赤にした結がお腹を抑え申し訳なさそうに俯いている。


「ご、ご、ご、ごめんなしゃい!」


「結ちゃんかわいい...」


「あははっ、結ったら凄い大きい音だったわね!別に謝らなくていいわよ。ねぇ、出来れば何か食べるものないかしら。」


朱里ではなく結に向かいネクトドス王は発言する。


「これはこれは勇者殿!最大級のご馳走を用意するので少々お待ちを。おい、何をぼさっとしているのだ早く用意するのである!」


ネクトドス王の合図で後ろに控えていた使用人が慌ただしく準備を始める。


「では勇者殿、私は用があるので先に失礼させて頂きますぞ。」


そういい、王座から離れお付きと共に王宮内から出ていった。


「えー何だよお預けかよー飯なんて後でいいじゃん」


ボカッ!


「痛ってぇ!また殴ったな朱里!」


「あんたってほんとに空気読めないわね!生理現象何だから仕方ないじゃない!」


「だってよぉ...」



「翔君、異世界の料理が食べれるんだよぉ」


静香の発言にハッとした表情で翔が顔をあげる。


「そうじゃん...異世界の料理、しかもここは王国...腕利のシェフ達の料理が味わえるまたとない機会じゃん!!!すまねぇ結ちゃん俺が馬鹿だった!」


「い、いえ!全然、まったく、大丈夫です!」


「結さっきから緊張しすぎよ、こんなゲーム脳の男テキトーでいいんだからテキトーで」


朱里は両方の手の平を上に向け、肩をすくめて理解ができないと呆れているようだ。


「人を異常者扱いみたいに言うなって、男ならみんなワクワクするって!な、亮!」


「しりませんよ、僕はゲームはやらないので。」


「かー!クールぶっちゃって」


やれやれと被りを振るい亮の肩に腕をまわし亮の顔を指差す。


「こいつ、こんなクールぶってるけど、結ちゃんが可愛すぎて緊張でガチガチになってんだぜ」


「な!変な言い掛かりはやめてください!」


「確かにやけに静かだなーって思ってたらそう言うことね!」


「...亮君のスケベ」


ジトーっと静香が亮を見つめる


「し、静香君!これは違くて!」


「ふふっ」


アタフタと慌てる亮がおかしくて結がクスッと笑うと皆の視線が結に集まる。


「さっきも思ったけどやっぱ結は笑顔が似合うわよ!私達歳も近いんだしそんなに緊張しないでリラックスリラックス!」


「そうそう、敬語も使わなくていーぜ!」


「う、うん!わかった!」


戸惑いつつも敬語にならないように頷く。

そんなぎこちない返答に翔達もまた笑顔になる。



「ご歓談中申し訳ないですが、食事の準備が整いました。どうぞこちらへ」


そんな中タキシードを着た初老の執事がいつの間にか扉の前に現れ食卓まで案内すると言う。


「どんな料理が出てくんだろ!」


フォークとナイフを手に持ち子供の様に翔がはしゃいでいる。

すると目の前に料理が配膳されていく。提供の順番等はないようで見た事もない料理が食卓一面に並べられる。


「やべぇーー!!このタレ、金色に輝いてるんだけど何これ!」


「このお肉もすっごく美味しそう!!牛肉にも豚肉にも見えるけど何のお肉使ってるかしら?」


「わぁーー!こんな豪勢な料理私食べた事ないですー!」


皆目の前の食事に思わずのどが鳴る。


「「「いただきまーす!!」」」


両手を合わせ食欲のままに料理に手を付けていく。


「めちゃくちゃうめぇ!こんな美味しい食べ物初めて食べたわ!」


「これ食べた?!これも美味しいから食べてみなさいよ!」


口々に感想を述べ大満足のようだ、しかしその中で1人だけ浮かない顔をしている者がいる。


「どうしたの結?お腹でも痛いの?」


隣に座っていた朱里が結の顔を覗き込む。


「ううん、大丈夫...」


「大丈夫ってあんた、そんな顔しながら言われても信憑性ないわよ」


「ううん、体調は悪くないの。ただ...」


「ただ?」


歯切れの悪い言葉に顔を顰める。

そんな朱里の耳元に口を近付け周りに聴こえないように告げる。


「さっき騎士の方や王様の話で、今世界で大変な事が起こっているのにこんな豪勢な食事良いのかなって思って...」


「あ...」


食事に夢中で考えもしなかったが言われてみればそうだ。

マナ枯渇や腐敗化、天変地異。それに加え魔王軍の侵攻。ファンタジーな世界で今一つ実感がなく他人事の様に聴いていたが今世界は滅亡の危機に瀕していると確かに言っていた。

それなのに目の前の食事は料理一つとっても高級な素材を使っている事が素人目線からも一目瞭然だ。

百歩譲って来客の為に無理に振る舞っているのだとしても、王様の趣味なのかは知らないが今座っているイスやテーブル、食器類等周りを見渡すと無駄に宝石や金等贅沢に使用されている。


「確かに...で、でもここは王様のお城よ?威厳を保つ為にもやっているのかも!それに経済にはまだそれ程影響がないのかも!」


「うーん...」


「結の言っている事は分かるわ、唯私達はまだ来たばっかりよあまりにも判断材料が少ないわ。それにこの世界の住人の方が危機感を持っているはずよ、その人達がこうして料理を振る舞ってくださってるんだもの何か考えあっての事よ今はありがたく頂きましょ!結の身体細すぎよ、今はちゃんと食べてしっかり気力を付けなきゃダメよ!」


「そう...だよね、私の考えすぎだったのかも。」


-実際にみた訳でもないのに話を聴いて考えすぎちゃった。昔からの良くない癖ね直さなきゃ。


そうして料理に向き直り腑に落ちない感情を振り払うようにしっかり味わい、噛み締めながら料理を口に運んでいったのであった。




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