第一章12話 ???? 決闘式③
「頑丈だなぁ...」
姫は床に突き刺さったままピクピクと痙攣している。
どうやら気絶しているみたいだ。
「まぁこれも物理攻撃だから倒せるとは思ってないけど...でも鎧の隙間は生身と一緒だよねトドメさしちゃお。」
キングガリルの鋭い爪を揃え、姫にとどめをさすその瞬間。
(お待ち下さい!!この小娘がどうなってもいいんですか?)
いつの間にかいなくなっていたガリルメイジがサクラの髪を引っ張り首元に爪を突き立てている。
「あのさぁ...それで交渉できると思ってんの?」
(えぇ勿論ですとも、私は貴方様がこの小娘と楽しそうに会話していたのをこっそり聴いてしまったのですよ。ハッタリをかましても無駄ですぞ。)
どうやら、キングガリルの部屋でサクラと話していたのを聞き耳をたてていたらしい。
(随分とこの小娘を気に入られたようで、その為に謀反を?馬鹿馬鹿しい、こんなニンゲン如き下等種に情が沸くなど...まぁいいでしょう。さぁ、姫から離れて下さい。)
ガリルメイジの爪がサクラの首元に食い込む。
「はぁ...だから甘いんだって...それは脅しにも何もならない。殺したければお好きにどうぞ。」
そして、姫の鎧の隙間に思いっきり爪を突き刺しとどめを刺した。びくんっと姫の身体が跳ねそのまま力無く倒れ込んだ。
(姫!!!な、何を馬鹿な事を!許さん...許さんぞぉ!!それは貴様が選んだ答えだ!後悔しても知らんからな!!)
ガリルメイジは怒りに身を任せサクラの首を掻き切りその真っ赤な鮮血が飛び散る...はずだった。
サクラは黒い霧に覆われ、キングガリルの元へと吸い込まれていく。
(な!どういう事だ?!確かに殺したはず!)
「ね、言ったでしょ。それはサクラじゃない。サクラは今頃僕の部屋のタンスの中でスヤスヤ寝てるよ。」
(う、嘘だ!偽物だとでもいうのか?私の探知魔法と姫程ではないが私も鼻はきく!そいつは本物と全く同じ匂いだった!魔法でそんな事できる訳が...)
「魔法じゃないよ、僕の技能だ。僕のユニークスキル『模倣-擬態』は模倣した対象の匂い、体重、身長、色、小さな傷までも全て模倣するんだ。まぁ僕もさっき検証で知った事だけどね。たかだか少し鼻が効くくらいで君如きに見破れるはずないだろ?君の探知魔法だってまだ完璧じゃないって言ってたじゃないか、大体の場所しか分かんないって。それで僕の部屋のソファーで待機させてたサクラの模倣を本物と勘違いしたんだろうね。」
-『完全顕現』状態は顕現中の魔物の能力しか使えないけど、それはあくまで顕現した後の話。
完全顕現前に安全の為、壁に擬態させてた僕の分身はずっと隠してた。
だから分身を呼び寄せ、寝ているサクラを模倣させたんだ。僕は石橋を叩いて渡るタイプなんだよね。
(ユニークスキル...そんな伝説上のスキルを貴方様が持っているわけ...貴方様は、いや、お前は一体何者なんだ?)
ガリルメイジは膝をつき、茫然とこちらをみている。
ゆっくりと一歩ずつ近付き拳をあげる。
「そんなの、僕が知りたいよ。」
その拳を振り抜き、一撃でガリルメイジの息の根を止めた。
広場を見返すと姫の部下とキングガリルの部下の戦闘はもうまもなく終わりを迎えようとしていた。
最初こそ不意を突かれ数的不利に陥った姫の部下達だったが、がむしゃらに戦うキングの部下と違い指揮系統を取り戻した姫の部下は5人1組の伍の陣を組み連携をする事により制圧していったのだった。
但、個の力が強いキングの部下達の猛攻撃は手強く命尽きる最後の最後まで喰らい付いている。
あれだけいたガリル達は立っているものの数の方が少なくなっていた。その数はキング5対姫55の両軍合わせ60名程である。
「我も混ぜて貰うぞ!」
1m程の割れた地面の破片を拾いあげ、魔法を使用している後方に向け投擲する。
(ッグギャー!)
それだけで数名を撃沈する。
(キングが勝ったのだ、流石我等の王!皆の者後少しだ踏ん張るのだ!!)
王が参戦した事によりキングの部下は士気をあげる。
(何?!姫が...負けたのか?!えぇーい!姫の仇じゃ打てぇー!)
初老らしきガリルが指揮をとっており、魔法を扱える後方部隊が一斉に此方に向けて魔法を集中砲火してくる。
「グァァァァァーーー!!!」
逃げ場のない程の魔法の嵐が此方へ迫る瞬間、耳をつんざく程の叫び声をあげる。
火球や水球、土の塊等あらゆる魔法が空中で何かにぶつかり霧散する。
音に「衝撃波」を乗せたのである。
音は発信源から波のように広がり、人体の基準にはなるが150デシベル以上の音で鼓膜が破れる。そこまでいかずとも85デシベル以上の音で聴力障害を起こす立派な攻撃である。
「あーあ、これ結構燃費悪いんだ...MP使い切っちゃったよ。」
(ば、ばけもの...)
勿論、「衝撃波」により怯み効果も兼ね揃えている為何名か動けずにいる。それが「衝撃波」によるものなのか、恐怖によるものなのかは分からないが...
それからは、姫の部下達は圧倒的強者に恐れ慄き何も出来ずに一方的な虐殺が行われたのであった。
(わ、我らが王に祝福を...)
最後まで生き残ったキングの部下は、腹部に致命的な傷を負っており、そう長くはないだろう。
「その勇姿...誠に感服した。ご苦労であった。」
(あ、有難き...おこと...ば...)
そして、総勢約500人いた戦場の中心にはキングガリル唯1人が立っていたのであった。
《一定の経験値を確認した為、レベルアップ致します。level6→level13》
《一定の種族経験値を確認した為、種族レベルが上がります。種族:ナニカLv2→Lv5》
《一定の条件を満たした為、称号を獲得致しました。称号:ジェノサイド》
《称号:転生者の効果によりSPが多く付与されます》
《称号:ジャイアントキリングの効果によりSTPが多く付与されます》
《一定の経験値を確認した為、『キングガリル』がレベルアップ致します。level42→level47》
《一定の種族経験値を確認した為、『キングガリル』の種族レベルが上がります。種族:キングガリルLv7→Lv9》
《称号:ジャイアントキリングの効果により『キングガリル』にSTPが多く付与されます》
分身の件は、8エピソード目第一章6話 完全顕現の最後らへんを見ていただければわかると思います。
ガリル編、次で終結です。




