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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

神隠しにあって空間移動能力を手に入れました。(未完成)

作者: shunrin824

2018年頃、中学生の頃に書いてた小説、黒歴史だけどアップロードしておきます!

未完成です。

01 転生

「今回は本当にありがとう。これは私からの礼だ。受け取ってくれ」

俺は王族や貴族に見られながら、国王陛下から感謝の言葉とお金?の入った袋が贈られた。

どうしてこうなった。



数時間前


俺は倉橋旬燐、高校1年生。

一応過疎が進んでいる地域に住んでる。けど退屈だとは思わない。

僕の我儘で中学生のころからここに住んでいる。

きっかけはテレビで田舎を舞台にしたアニメを見たことだ。そのアニメを見たから田舎に住みたいなと思って那覇から引っ越してきた。

それからの生活は楽しかった。

中学も高校もゆったりしていて、神社も近くにあって落ち着く。

俺は日本の神話が好きだからここの神話にも興味をもって、ずっと調べていた。

そうしたらある時、町の資料館で、この地区の神話を深く知ってしまったあとに神社にいってしまうと『神隠し』にあってしまうということを知った。でも、俺はまだ深くないと思い込んでいた。もう知りすぎているのに。

なのに俺は翌日に神社に行ってしまった。

結果、俺は『神隠し』にあってしまって、亜空間に飛ばされてしまった。

だから今はその亜空間にいる。

そして目の前に巫女服を着た8歳ぐらいに見える少女が真剣な顔をして浮いていた。

背丈は140cmくらいで黒い髪を下げた感じで目が深い紅で表情がちょっと大人っぽかった。

「あなたが私を調べていた倉橋旬燐ですか?」

「はい。そうですけど。あなたは?」

その少女は何か気づいたような顔をした。

「あ、まだ自己紹介をしてませんでしたね。私はあなた方の信仰の対象となっているさかきです。」

俺は今、さかき様と話をしてるんだ......すご!?

でも、なんで俺はここにいるんだろう。

「実は私、あと2、300年くらいしないと仕事が入ってこないんです。それで今、暇なんですよ。

だから、最近認識されつつある『異世界』に一緒に行ってあなたの様子を観察しようと思っているのですが......

良いですか?」

えっと、俺は神様の暇つぶしに『異世界』での暮らしを見てもらうのか。

うーん。

「何個か質問してもいいですか?」

「はい。どうぞ。」

「えっと、さかき様もいっしょなんですか?」

「はい。あなたとお喋りなどもしたいですし。」

よし!異世界でぼっちは回避された。

「次に、言葉とかは大丈夫なんですか?」

「はい。大丈夫です。英語から異世界の暗号まで全て話すことはもちろん読み書きもできます。」

言葉の事は大丈夫みたいだ。

「異世界って結構危険があるイメージなんですけど、その辺りって、大丈夫ですか?」

「はい。もしなんかあったら私の力をあなたに貸し出すことも出来ます。

もし、不安でしたら人間の体に入る程度であれば能力を与えることも出来ますし。」

「良かったです。ただ、能力を貰うというのは意味が分かりますが、さかき様の力を貸すというのは、どういうことなんですか?」

「そのまんまです。まあ、制限はつけますが、私の力を自由に使えるということです。

まあ、向こうの世界に行ったら能力と力を使う練習をしましょう。」

なんとなく分かったぞ。普段は1つの能力が使える状態で、神様の力を借りると、他の能力も使えるようになるということか。

「わかりました。ありがとうございます。貰える能力って自分で決めても良いんですか?」

「はい。あ、でも能力によっては駄目なものもありますが。」

よっしゃあああああ!!

「では、空間移動系の能力が良いです。」

これなら危険なことになっても逃げられるようになるしな。

「はい。分かりました。詳しい説明などはむこうでします。

あと、これからの仲間になるわけですから、親友と喋るような感じで喋ってください。」

「分かったよ。そうする。」

「あと、私にも名前があるので、名前で読んでください。私の名前は倉橋瑠璃です。」

え?いま、なんて?

「だから、倉橋瑠璃です。」

俺って神様と同じ血筋なの?すごいなぁ。

「といっても、今適当につけた名前ですけどね。普段は名前とかは使わないので忘れちゃうんです。だからそのたびに自分で名前をつけてるんです。」

うん。やっぱり。俺と同じ血筋なわけないよな。

「いまさらですけど、異世界へ行くという話は決定で良いですか?」

「あ、うん。いいけど、向こうの宗教とかってどうなってるの?」

「確か、世界を創ったと言われる創造神を崇める感じで、創造教という名前だったと思います。」

そのまんまだな。

それにしても異世界ってだいたい宗教が1個だけのことが多いけど、なんでだろう。

まあ、いいか。

「ところで、なんでそんなにその世界のことを知っているんですか?」

「あ、それは、何回か私がそこに降りてちょっと『瑠璃』として手助けしたり、観光したりしてたからです。」

ふーん。まあ、いいか。

「ありがとう。あと、に行く前に、両親に挨拶してから行きたいんだけど、良いかな?」

「はい。良いですけど、夢に出る、という形でも良いですか?実は、本堂で寝かせておこうと思ったのですが、力の加減を間違ってしまったので崖から落ちたことになってしまったのです。」

うん。初耳。まあ、仕方ないか。

「ありがとうございます。」

「じゃあ、夜の時間帯に時間移動しますか。」

「え?いまなんt」

俺が言葉を最後まで言う前に意識が離れる。


「おはようございます。と、いっても、もう夜の12時ごろですが。」

俺は瑠璃の声で目を覚ました。

「では、ご両親の夢に入っていきましょう。もう準備はしてあるのでご両親は同じ夢の中にいます。あとは私達が入るだけです。」

よし、夢に出て来ますか。


うん。つかれた。だって両親が色々質問してくるんだもん。「なんでこんなに早く死んだ!」「その子は誰だ。!」「状況を説明しろ。」等。

でも、最後は笑顔で「楽しんでおいで。」と送ってくれた。

あと、帰る前に瑠璃に言われたとおりパソコンやスマホ等の電子機器と、本やマンガ等の本も一緒に燃やして貰うように頼む。勿論バックアップ等を取ってからでもかまわない。

俺は、無料のインターネット図書館からたくさんの本をダウンロードしてるし、本もたくさん買っていたから大変だろうけど。最近数えたら、1000冊くらいあったからな。

ただ、瑠璃に理由を聞くと、後で教えるからと言われた。

両親と話す間に瑠璃とも親しくなった。

「じゃあ、世界を超えるけど、多分人間の体の春林にはちょっときついかも。目を瞑って楽にしてて。じゃあ、行くよ。」

うわあああああああああああああああああああああああああああ

そう叫びたい感じだった。

だって、吐きそうで吐かない。くしゃみが出そうで出ない。そういう感じを一斉に味わった感じだったから。

その感覚を1秒ほど味わった後、瑠璃に「もう目を開けても良いよ。」と言われた俺は目の前にある景色に絶句した。

だって、目の前に軍隊がいたから。後ろを見ても、また軍隊。

......もしかして、戦う前の戦場のど真ん中?

もしそうだとしたらやばくね?

「ここは戦場だけど、あっち側が一方的に攻めてきたよ。こっち側の国はエルメラ王国と言って領土は日本くらいの大きさ。形は違うけどね。人口は1億人位。そしてあとは土地がとても豊かかな。

そして、あっち側の国はグラン帝国と言って領土はアフリカ大陸くらいの大きさ。人口はだいたい4億人。

エルメラ王国は色んな意味で狙われやすいから軍が100万人位いるの。それでも多いくらいなんだけど、グラン帝国は侵略国家だから1000万人くらいいるの。ちなみにエルメラ王国は75万人を、グラン帝国は300万人を戦場に送ってる。

エルメラ王国は半島の付け根にある王国だから、この国が滅びたら半島にある国が危ないの。だから200万人くらいの他国からの援軍がくる予定らしいけど、多分間に合わないと思う。

だからこの戦争で能力の練習をしようと思うんだけど、良いかな?

私達の練習にもなるし侵略を防ぐこともできるし。」

おー。良い......のか?

まあ、いいか。

「分かりました。」

「では、まず空間移動系を試してみましょう。

では、『前方、左右0°、上下20°、3m、転移』と念じてみてください。」

「分かりました。」

取り敢えず念じてみる。

『前方、左右0°、上下20°、3m、転移』

「うわ!?」

視点が急に移り変わる。変な感じ。

「これは目線から上下左右の角度とその直線状の長さを指定してるので目線を合わせれば『3m、転移』でもいけるよ。ちなみに転移先の物体をのけて転移するからそのあたりは気をつけてね。押しのけない場合は『3m、非転移』と念じたら転移先に物体か液体があったらキャンセルになるよ。」

おお。分かりやすい。

「あとはその場所を知っているか、その場所の写真なんかを見たりして風景を知ったらそこにゲートを開けます。その場所の風景を思い浮かべながら『転移門解錠』と念じたら開くよ。閉めるときは『転移門施錠』で。」

うーん。そうだ。3m前の場所を思い浮かべて

『転移門解錠』

お、ガラスみたいなものが出来た。

「そこを通ってみてください。」

通ってみる。

おお!こっちは結構使いやすいな。

『転移門施錠』

ここで気がついた。なんでこんなに変なことをしているのに両軍がピクリとも動かないのか。そして静かなのか。

「一応、使い方を教えるときは時を止めたほうが良いかな?と思ったから止めておいたよ。」

うん、なんか、ありがとう。

「じゃあ、次は私の力を貸してみようかな。一応、神の力なので『神化』とよんでる。これにはちょっと副作用があるけど、時間制限などは無いよ。あ、空間移動系も時間制限や回数制限はないよ。

『神化』と念じれば出来るよ。

出来ることは、常時発動で筋力増加、視力増加、瞬発力増加、思考加速、毒無効化、空間認知、感覚上昇など。他にもいろいろあるけどあとは分からないの。

あとは念じればほぼなんでも出来るよ。因みに『神化』すると私と春林が同化するから声に出さなくても念話出来るよ。神化した状態の力を神力っていう。あと、『神化解除』で終わるから。」

そうか

『神化』

俺と瑠璃に光が集る。その後その光が1つになる。

「これでいいのか?」

自分が発した言葉のはずなのに瑠璃の声になっている。それにちょっと目線が低いような......

(成功よ。自分の体を見て。)

ん?

自分が瑠璃になっていた。 

「ええええええええええええええええええええええ!?」

なんで?なんで俺が瑠璃に?嘘!?

(落ち着いて。ちょっとうるさい。頭が痛い。説明するから。)

落ち着こう。

深呼吸。

スーハー。

スーハー。

(で、なんでこういう姿に?)

(それは、私が力を与えやすい姿にするためだけど、なにか?)

(いや、なんでも。)

流石にこれだとちょっと甘く見られそうな気がする。

(甘く見られたほうが良いと思うけど。)

読まれた!?さっきまで読まれなかったのに?

(同化しているから思考は全部ダダ漏れだけど?)

そうなのか。

まあ、ちょっと練習してみるか。

飛んでみる。

出来た。

黒い球を創造してみる。

目の前に黒い球が一つ出来る。

100個以上創造してみる。

これも出来た。

(じゃあ、時の流れを元に戻すから気をつけてね。くれぐれも王国側を攻撃しないでね。あと、やられそうになったら、空間転移してね。)

(わかった。)

プツン

そんな音がした。

両軍が動き出す。が、宙を浮いてる俺を見てまた止まった。

帝国側は人が空を浮いてるぞ!なり、なぜ戦場に女子が?なり、怪物だーなり、言ってくる。

......

おい!最後のはひどいぞ。

瑠璃の感情も手に取るようにわかる。すごく怒ってる。実は俺も帝国がムカつく。

しかし、王国側は天使だ。なり、神様が現れた。なり、神様、ありがとう。なり言ってくる。

いや、神様というのは間違ってはないんだけど、その体を操るのはただの人間なんだよな。

(失礼な。ちゃんと私が選んだ人だよ?)

適当じゃ無かったのか。

まあ、帝国側には反省してもらおう。



黒い球を飛ばしたり、他にできるかな?と思い、高圧の水や電撃を放ったり、地形を変えたり、近くに行って砂鉄から刀を取り出して薙ぎ払ったり、とにかく寝てもらった。

ただし、殺してはいない。無力化しただけである。

たまに矢がとんできたり、背後を取って攻撃しようとしてきたりしたけど、神化しているおれには意味がない。背後をとっても空間認識で分かるからすぐに避けれる。矢も刀で軌道を変えられる。

でも、その後の行動がまずかった。

敵を倒すのが終わったところで、最初の両軍の間の位置に戻って、『神化解除』をする。

そこまでは良かった。

ただ、これを王国側のの国王陛下に見られていた。そして、軍務長にもみられてた。

その結果、王宮に行ってお礼をもらうことになった。そして、最初の場面になった。


「今回は本当にありがとう。これは私からの礼だ。受け取ってくれ」

俺は王族や貴族の前で、国王陛下から感謝の言葉とお金?の入った袋が贈られた。

大金貨100枚をもらった。

瑠璃によると、この世界は元の世界とは全く物価が違うらしい。

一番下に銅貨があって、銀貨、金貨、白金貨とあって、銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨10枚で金貨1枚。金貨100枚で白金貨1枚になるらしい。白金貨は国家間の貿易などにしか使われないらしい。

「この国は君に助けてもらったんだ。私からも礼を言おう。」

軍務長のアトンさんが頭をさげてきた。

「頭を上げてください。僕は能力の練習をしただけですから。」

「ありがとう。」

アトンさんが頭を上げてくれた。

ここには、国王陛下のアルト・リドル・エルメラ、その妻のイリス・リドル・エルメラ、その娘のアリス・リドル・エルメラの王族と、宰相ルドラ・リンクス、研究所長アシル・ロバート、宮廷魔法士長オーロレイ・サミット、軍務長アトン、その他貴族の方々がいた。

中には俺を利用出来ないか考えている奴が居たらしい。

『らしい。』というのは瑠璃が心を読んであとで俺に伝えて居たから。

「他に何か礼をしたいんだが、何がほしい。」

国王陛下が聞いてくる。

どうしよう。

「ねえ、瑠璃はどう思う?」

瑠璃に小声で聞く。

「うーん。あ、じゃあ、家を買うまでどこかに泊めて貰えば?」

それ名案。

「ありがとう。それにする。」

聞こえないよう努力していたつもりだったが聞こえていたようだ。

でも、あえて触れないでいてくれてる。ありがとう。

「では、どこか一時的に泊まれるところを用意してもらいたいのですが、いいでしょうか?」

「そんなものでいいのか?」

ちょっと戸惑ったように聞こえる。

もしかして、爵位が欲しいとでも言うと思ったんだろうか。

でも、俺はそういうのはいらない。

だって、自由な生き方をしたいから。

「はい。」

俺ははっきりとそう答えた。


#002 ギルドに行きました。

その日は王宮に泊まることになった。

今日はどの宿も満員で紹介出来る宿が無かったらしい。

まあ、いくら王宮でも油断はしない。自衛は大切なのだ。

とりあえず、神化して室内のベッドを中心に半径2mのバリアを張って、バリアに粘着質のものを付ける。薬物もブロックで、その使用履歴も残すように。

防犯が出来たところで、お休みなさい。


後日、見事に研究員がバリアにはまってた。

あと、分かったことが、神化していると凄く眠りづらかった。だって、巫女装束って下が心もとないのと、普段と違う体だから寝返りが打ちにくいから、というのと。

一応縄等で拘束しておいた。

薬物も使っていたみたいで、媚薬を使っていた。線香みたいなやつっぽい。

........................

「......男に媚薬をってどうなの......?」

(多分神化した状態だから媚薬が効くと思ったんじゃないかな。)

そうなのか?でも、そうだとしたら、何の得がある?

まあ、研究所長のところに連れてって自白してもらおう。

(まって。その前に宰相さんに話した方が良いんじゃない?)

そうか。その方が、研究所長を問い詰めやすそうだ。

神化したまま、通りすがりの兵士さんにルドラ宰相を呼んでもらった。

神化したままじゃ無いと媚薬が効きそうでちょっと怖かったと言うのもある。


数分後


「旬燐殿、どうし......うわ!?」

ルドラ宰相が部屋に転がっている研究員を見て驚く。

そりゃ、そうだろう。だって、媚薬のせいで発情してちょっとやばい顔をして俺を見てるんだから。

因にルドラ宰相が来るまでに媚薬の含む空気を神力を使って外に出しておいた。

ルドラ宰相がこんなになったら困るから。

「......これはどういうことです?」

俺は神化したままの状態で昨日バリアを張ったことからルドラ宰相を呼ぶまでのことを話した。

「そういうことですか。なら、今から研究所長の部屋まで案内します。」

ルドラ宰相が前を歩くからついて行く。

......ちゃんと研究員を歩かせながら。


研究所に着いたんだが......匂いが......汗のにおいが凄い。

ルドラ宰相はちょっと顔をしかめていた。

「ここがアシル研究所長の使っている研究所です。普通の研究室はここまで臭くないんですが、ここは彼が寝泊まりしているということもあってここだけ特別臭いんです。」

そう言いながらルドラ宰相はドアをノックする。

ドアをノックしてから1拍置いて「はーい。開いてます。入ってください。」

という声が聞こえる。

ルドラ宰相がドアを開ける。

............あれ?中はもっと強烈だと思ったけどそこまででもない。やっぱり科学が発達してないから密閉してないんだな。

一応中に入ってアシル研究所長の近くに立つ。勿論研究員もつれて。

「アシル研究所長。この者たちに見覚えはありませんか?」

ルドラ宰相が言った瞬間アシル研究所長が目を大きく開いた。

「この者たちは私の部下で今やっている研究を手伝ってもらっている研究所としては最下級の3人じゃないですか!?なんで縛られているんです?」

そこは俺が説明した。

「そんなことが......

きっと功績欲しさにやろうとしたんでしょうね。彼らは早く自分の研究がしたいといっていたので。

これからはこういうことが無いように注意しますので、釈放してあげてくれませんか?」

「私からもお願いできないでしょうか。」

ルドラ宰相も頭を下げてくる。

これじゃあ、俺がいじめたみたいじゃん。

「わかりました。今後2度とこんなことが起こらないようにしてくれるんであれば釈放します。」

縄を解いてやった。とたんに俺に向かってくる。

「わ!!」

慌ててシールドを張る。

「アシルさん、早くこいつらをどうにかしてください。昨晩から今朝までずっと媚薬を吸ってたっぽいのでちょっと目がやばいです。」

シールドを張ったままアシル研究所長に訴える。

いや、アシルさん、ルドラさんでいいか。

「わかりました。すぐにどうにかします。ちょっと待っててください。」

アシルさんが研究員を研究室の奥に連れていく。そして3分後に戻ってきた。

「あの者たちは薬抜香を焚いて外側から鍵がかかる部屋に閉じ込めておきました。どうぞ。」

そういって差し出された紅茶。

研究員があんなだったからちょっと疑ってしまう。

「大丈夫ですよ。薬なんて入ってません。尤も私のは栄養補強剤や魔力回復薬などを入れてますがね。」

ふーん。......って、え!?この世界に魔法あるの?

(あ、一応あるよ。ただ、私たちが使っているものは空間移動系も含めて魔法ではないよ。)

そうなのか。

「ところで、春林殿、さっきの見えない防御壁ってどういう仕組みなんですか?なにかのアーティファクトですか?」

やべえ。どうしよう。

(自分の特殊能力といえば言いわ。)

あ、その手があったか。

......て、あれ?瑠璃の話し方がちょっとずつツンデレの女子高生みたいなしゃべり方になってきてるような。

(っ!?気のせいよっ!!気のせい!!)

やっぱりツンデレ。

(うるさい。)

まあ、いいか。早く答えないとアシルさんが変な顔をしている。

「これは私の特殊能力です。自分が念じたら念じたとおりになるというか。」

「そうなんですか。オーロレイ魔法師長が聞いたら半日は拘束状態でしょうね。」

「そうですな。」

「「あっはっは!」」

いや、笑い事じゃないって。もしこのことを聞いてたらどうすんだよ。

「今の話、聞かせてもらいましたよ。春林さん!」

彼女は目の下に隈を作っていて鬼のような形相で此方をにらんでいた。

ルドラさんたちもひきつった笑みを浮かべていた。

「は、はいっ。なんでしょう。」

やべっ声が上ずった。

「私の研究室に来ない?お願い。ね?来よう?」

助けを求めたが2人は明後日の方向を向いてしまった。

俺はもう覚悟を決めてオーロレイさんについていった。

研究室に連れられた俺は約1時間ほど質問されて、(お?運が良かったかな?)と思ったがそれも束の間。

魔力隔離室という魔力が完全に抜かれた部屋に連れていかれ、様々な実験をされた。

魔力がなくても使えるのか。どんなことができるのか。何ができるのか。耐久時間はどれくらいなのか。

そして、太陽が傾いたくらいの頃に解放された。ものすごく疲れた。

いや、体力的には疲れなかったんだけど、精神的に疲れた。瑠璃も結構精神的に疲れていた様子で、実験中も解放された時も愚痴ってた。

そのあと昼食を食べて王城内をブラブラしてた。

神化したまま。瑠璃の精神的な疲労が凄かったらしい。

例えるならば、1日の間ずっとパソコンに向かってメモ帳で「あ」を長押しする位退屈だったらしい。

そのあとは暇だったのだが、いいことを思いついた。

(ちょっと街を探索してみようか。王都っていうくらいだし、広そうだし。)

(そうね。でも、いま疲れてるから、神化した状態でお願い。動きたくない。)

そんなにか。まあ、いいか。

ルドラさんに外出することを伝え外に出ようとしたが、ルドラさんに「お気をつけて。あなたの先日の行動は全王都民が見ていたので。」と言われた。

それって、簡単にいうと往生を出たら囲まれる可能性があるから気を付けてという警告じゃないか。

でも、王都にはでてみたいし、どうしよう。

(いいんじゃない?神化したままでいこうよ。)

(そうだな。囲まれたときは逃げたらいいもんな。)

その考えが凄く浅はかだったことをこの時の俺はまだ知らない。


俺は金も一応懐に入れているのでそのまま王城を出た。が、ルドラさんが急いで走ってきて鉄で出来たっぽいメダルと灰色の運転免許書みたいなものを持ってきた。

「このメダルは、国王陛下の客人であるということを示すメダルで、王城の門も出入りはこれを見せるだけでは入れます。そのほか、検問、内壁、外壁も素通りできます。貴族しか入れない店にも入ることができます。そして、これは、この国の、というか、この半島で統一された身分証明書です。これは、普通の市民証にもなり、ギルドで依頼を受ける時などにも、活用できます。本来、黒ランク、白ランク、赤ランク、青ランク、緑ランク、銅ランク、銀ランク、金ランク、プラチナランク、となります。今後生活するのなら、あなたの生活なら、ギルドの依頼をこなしたほうが稼げると思います。これらは無くすと再発行が難しいので無くさないようにしてください。また、偽装防止に他人がもってもすぐにわかるようになってます。」

なるほど、俺が持つと、メダルは金に、身分証明書は黒になった。

「ありがとうございます。

夕食までには帰ってきますので。」

そういいながら懐にしまった。

ルドラさんが心配そうな顔をしていたが、「何かあっても空間移動系の能力があるので大丈夫ですよ。」と言ったら納得して王城へ戻っていった。

(瑠璃、まずどこに行く?)

(うーん。あ、ギルドに行ってみてもいいんじゃないかな。なんか依頼とか受けてみたら?)

(そうだね。)

俺は歩き出した。

が、すぐに歩みを止めた。

(ギルドってどこにあるんだろう。)

(あ。)

結局王城に戻って宰相さんから地図をもらってから王城を出た。

ギルドに向かっていったが、町の人から好機の目で見られてた。

ギルドに近づくにつれ、「あんな感じの年の幼女がこの王国を救ったのか?」なり、「王国を救った幼女を見てみたいね。」とかの悪口?が増えてきた。

(ちょっとイラついてきたな。)

(そうね。もし、戦いを挑んで来たら倒してもいいんじゃない?)

(あはははは......)

そんな会話(正しくは念話だけど)を続けていたら、ギルドの前に来ていた。

ギルドに入ってみたが、どうやって依頼を受けるのかわからない。

とりあえず、受付のお姉さんに聞いてみるか。

「あの~。依頼ってどうやって受けるんですか?」

あ、受付のお姉さんびっくりしている。そりゃそうか。だって、見た目8歳の見たことない服を着た幼女がギルドの依頼を受けるというのだ。

「えっと。あなたにはギルドで依頼を受けるには早いと思うな。それより、家のお手伝いをしてお小遣いをもらったら?」

あれ?ここにはあの戦争の話が届いてないのかな?でも、周りの人はそのことを知っているみたいだったけど。

(ここは日本と違って、写真がないから姿や身なりを知らないんじゃない?)

そうだったのか。だとしたらどうしよう。

「あー、保護者同伴ならいいですよ。」

いねーよ保護者。どうしよう。

「では、私が一緒についていきましょう。」

15歳くらいの鎧をまとった綺麗な少女が現れた。

「え?シオンさん、よろしいんですか?」

「はい、この子の保護者ではありませんが困っているようなので。」

「では、依頼の受け方から教えてあげてください。」

「わかりました。が、ちょっと強さを見たいので、裏の広場を借りてもいいですか?」

「え?あ、はい。いいですよ。」

俺はシオンさんと対戦することになった。

(この人は嫌味言ってないから攻撃するときは気を付けてね。)

俺とシオンさんとその他野次馬の人たちが裏の広場にむかう。

「あなた、名前は?」

(倉橋瑠璃って答えて。ここじゃ、性名が逆だから名乗るときはその辺を気を付けて。)

(わかった。)

「倉橋瑠璃です。名前が瑠璃で倉橋が苗字です。」

「......わかった。瑠璃、全力で来なさい。」

あれ?なんか一瞬変な顔しなかった?

まあ、全力でやったら死ぬよな。ちょっと手加減しないと。

「じゃあ、審判は......あなたがお願い。」

指名したのは、見るからにやくざっぽい男だった。

男はうなずいた。

「始め!!」

まず、俺は周りに被害が出ないように俺とシオンさんの周りに見えない透明な結界を張った。

シオンさんは剣を構えながら様子をうかがっている。多分、俺から攻撃していいということだろう。

まず、シオンさんの右側に向かって走る。そしてジャンプして勢いを殺さないようにシオンさんの背後にテレポートする。そして、走ったままの勢いで飛び蹴りをする。直後に元の位置に戻る。

そして、地面の土を球体にして、浮かせ、俺の周りを公転するように高速回転させる。

そのあとに、シオンさんが倒れる音が聞こえる。

観客は茫然としている。まあ、3秒で決着がついたんだから、そうなるわな。

「「「「「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」」」」」

歓声が起きる。

土球の回転をなくしてシオンさんに近づき回復させる。

「瑠璃ちゃん、あなた、本当は物凄く強かったのね?その腕なら、一人でも依頼をこなせるでしょうね。私は依頼の受け方だけを教えるわ。」

そういいながら立ち上がった。

俺も結界を解除する。

依頼の受け方は簡単だった。

まず、依頼ボードという、依頼を貼るボードから受けたい依頼の紙を剥がして受付にもって行く。そしてそこで市民証を提示する。そしたら依頼を受けたことになって、あとは、依頼をこなして、討伐部位だったり、依頼達成証だったりを受付にもって行って、市民証を提示したら終わりらしい。

「教えてくれてありがとうございました。」

よーし、依頼をうけるか。

ゴブリン10匹討伐。これにする。場所は、ここから北に2kmいったところらしい。

テレポートで飛ぶか。

受付で処理してから5分程度で戻ってきた。

受付のお姉さんは驚いていたけど、討伐部位を渡したら、納得してくれた。

報酬は銅貨30枚。

事前に調べておいた宿の1泊当たりの料金が銅貨10枚で、食事つき。部屋も悪くなく、5m×3mほどで悪くない。ちゃんとベッドと衣装ケース、机なんかもある。

あと、焼き鳥の大串(直径3cmくらいの肉が5個)が銅貨2枚だったから、王城に泊まっていれば焼き鳥が15本くらい食べれる。宿に泊まると3泊はできる。いいくらいの報酬だな。

あと、受付で思ったのが、一々地図を開くのが凄くめんどくさい。そして、魔物の討伐部位なんかが嵩張ってちょっと運びづらい。

王城に戻ったら一度実験して見るか。


王城に帰ってきた。

まず、頭の中の記憶を司る場所をちょっと分けるイメージを作る。

で、そこにパソコンを入れるイメージを作る。

その中に地図をスキャンする。

出来た。

そして次に手を正面にかざしてホログラムを作るように想像する。

出来た。

これで自分だけでなく相手にも見せることができる。

次に、収納だ。これはどうしよう。

(それだったらあなた専用の収納があるわよ。

取り出すものか入れるものを念じながら『ストレージ』と念じるとできるよ。

一応、中に入ってるものは時間が止まるから、熱々の焼き鳥なんかを入れて数十年後に思い出して食べても熱々で腐ってないことになるわ。

『ストレージ一覧』と念じると、ストレージに入っているものの写真が頭の中に浮かび上がってくるわよ。)

......毎度思うけど、神様ってやっぱりすごいな。

(そうでしょう。そうでしょう。)

やっぱりなんか言葉遣いが成長している......

よし、また明日もギルドに行ってみようかな。


#003 からまれました。

「嬢ちゃん、こんなところにいないで俺たちと気持良いことしようぜ。」

「そうだよ、こんなところにいないでさ。」

「いつ帰れるかわからないけどな。」

「「「うへへへへ」」」

俺の前にはいかにもクズそうな男3人が下品な笑い方で大笑いしている。

この世界にきて初めていやな意味でからまれたような気がする。

「あいにく、俺はあんたらみたいなやつとは1秒でも一緒にいたくないから遠慮するよ。」

立ち去ろうとしたんだが、無理だった。

まず、ここはギルドの近くの路地裏。なぜかというと、ギルドに行くとき、大通りに直接転移するのは混乱が起きるかな、と思ったから。

そしたら、運悪く転移した後にこの3人がこっちの路地裏に入ってきた。最初は空間把握に反応しただけだったからこういう奴とは思わなかったからそのまま通り過ぎようとしたんだが、相手側がこちらを見るなりニヤリとして、今に至る。

面倒くさい。

そのまま転移で逃げたいけど、あんまり転移して騒がれるのもイヤ。でも、やりすぎてもダメ。

シオンさんの時みたいにやるか。

「いいから来るんだよ!」

手を握ろうとしたから一発首筋にけりを入れた。

運が悪ければ折れているかもしれんが大丈夫だろ。

「な!?お前!!仲間をこんなにして生きて帰れると思うなよ!!」

相手は3対1で勝てると思っているのだろうが、残念ながら、俺には勝てない。

3分後には路地裏に3人が寝ていた。


俺はギルドに着いた。着いたんだが、今度は4人。前後左右をガラの悪い男が囲んでる。

多分、このギルドに初めて来たんだな。田舎から来たか?まあ、俺も昨日始めてきたけど。

......面倒くさい。

「よう!嬢ちゃん。俺たちと楽しいことしない?」

「全員が満足したら帰してやるからさ。」

「ま、いつになるかはわからないけどな。」

ぎゃははははと、笑い声が聞こえる。

「俺はあんたらのような性格の人が苦手だから遠慮するよ。」

「お前に拒否権はないぜ?」

「じゃあ、作るまでだ。」

「ぎゃははは。何言ってんだ?こいつうあああ!?」

蹴った。今度は顔を。

「おい!お前!俺の仲間に何しやがる。もうゆるさねえ。生きて帰れると思うなよ?」

殴りかかってくるが、ここではちょっとしたくない。だから、

『10m非転移』

俺とこの4人を表に転移させる。

「うお!?」

俺は一応、転移させるときに10~30cmくらい浮かせて飛ぶから、準備していないと大体の人が驚く。

「やるならここでやろう。ここだったら、余程のことがに限り、ギルドには損失は出ないだろうし。」

本当のことを言うとどこでやっても俺が全力出せば国をまるごといけるんだろうけどさ。

ただ、そのなめた態度が気に入らなかったようでこっちに向かって突進してくる。

「うおおおおおお!!」

ご丁寧に掛け声付きで。

ただ、それをよけて相手を10㎝浮かせて反転させた状態で転移させる。

当然、そいつは頭から落ちる。

「グゴアアア!?」

そして、それを見ても対策も考えずに突っ込んでくるバカ。

いや、ちょっとは対策を考えてから突っ込んで来いよ。

「おい、お前、何もんだ。」

「は? 俺? 俺は、瑠璃だ。」

一瞬そいつらの顔が歪んだ。

毎回思うのが、俺の神化した状態の名前を聞くと一瞬顔がゆがむんだよね。

なんでだろう。

一応、市民証も名前の欄はこう明記されている。

『シュンリン(ルリ)・クラハシ』

名前を2つ持ってたりするときはこうなるらしい。

話をもとに戻すけど、こいつらの場合は神経を麻痺させる。5分ほど。こうすることで多分動けなくなる。

この方が楽ってことを今知った。

それを道端に並べる。

再度ギルド内に入る。流石に今度は絡んでくるやつはいなかった。

(うーん。どの依頼を受けようかな?)

俺は一応ランクが低いから、低レベルのものしか受けられない。

一応、誰も受けなさそうな護衛系の依頼を受けてみる。

もしかしたらやりたい人が結構いるかもしれないけど、まあ、やりたい人がいたなら......ドンマイ!

えーっと、依頼主は、スベリン商会のアンドロ・スベリンさん。

依頼内容は王都から2個街を経由した後にある都市『ベサルム』に行くまでの道中の護衛。

往きだけ。

3食付きで銅貨50枚。


(瑠璃、良い?)

(良いわよ。あ、その代わりと行ったら難だけど、もし出来れば、この世界のおいしそうなスイーツを食べて見たいな。)

(OK。じゃあ、終わったら行こうか。

その前に宰相さんに何日か帰れないかもって伝えてから行こうか。)

王城の俺の部屋に空間移動をする。

「うわっと!?」

「キャ!?」

俺の部屋のソファに明らかに貴族のお嬢様みたいな人が座っていた。

髪は栗色で腰まで届く髪をツインテールにしている。

年齢は13歳くらいで水色の、フリルの付いたドレスを着ていて、静かな雰囲気の少女だった

テレポートしてきたことを見てちょっと驚いているようだった。

「えっと、どちら様でしょう。」

俺は向かい側のソファに座りながら質問をする。

「私はエリーヌ侯爵家長女のアリス・フラット・エリーヌです。」

驚いた。公爵家の令嬢が俺の部屋に来るなんて。

「あ、俺は倉橋瑠璃です。」

あ、驚いた顔した。

なんで俺の名前を聞くとみんな驚くんだろう。

......しまった。名前以前に幼女の見た目で『俺』とか言っちゃってるし。

「え?ルリさんってあのルリ様ですか?」

(え?どういうこと?)

(ああ、昔ここになにかと手を加えたって言ったでしょう。その時に名乗った名前を覚えていたんじゃないかしら。)

(そういうことか。

どう答えればいい?)

(肯定しないほうが良いと思うわよ。

私の事をある程度あなたに話していたけど、全部は話してないから、いつかボロがでるわよ。)

「えーっと、その友達っていうか......」

「そうなんですか!?友達なんですか!?」

「え?まあ、はい。」

「すごいですね。どんな姿なんですか?見た目は?お話したことはありますか?ここに呼べますか?」

さっきまで静かそうな雰囲気だった少女がマシンガンのように質問を飛ばしてくる。

「えっと、姿は俺と似ています。あと、お話はしましたが......」

(瑠璃、神化しながらアリスさんに姿を見せて会話とかって出来る?)(ちょっと難しいかな。)(わかった。ありがとう。)

「瑠璃をここに呼ぶのは難しいと思います。」

というか、アリスさんはどんな要件で来たんだろう。

「ところで、要件は何でしょう。」

「あ、そうだったわね。

実は、あなたとお近づきになりたいなと思って、ちょっと部屋にお邪魔しちゃった。」

何故今日は色んな人に絡まれる(いい意味でも悪い意味でも)んだろう。

まあ、いいか。

「そうでしたか。ありがとうございます。実は、この世か、この国に友達が一人もいなかったので嬉しいです。」

ああ、長くなるぞ。依頼を受けてからじゃなくてよかった。


案外長くはなかった。

大体朝の10時頃から話し始めて昼食を食べるちょっと前に「またいつかお話をさせてください。」といって帰っていった。

昼食を食べたあと、依頼を受けることをルドラさんに話してから護衛の依頼を受けに行った。

護衛の依頼はちゃんと受けられたんだが、幼女の見た目だから最初は納得してくれなかった。

アンドロさんは家族で移動してるらしいから、アンドロさんの娘のリリイちゃんの話し相手兼護衛(護衛はあくまでも建前ということにされたが。)ということになった。

まあ、ちょっと規模の大きい商隊だったらしくて、約30名の護衛が他にもいたから渋々納得していったが。


「嬢ちゃんはなんでこの依頼を受けたんだ?

一応、この依頼は結構難しいよ?」

「あ、まあ、その辺りは大丈夫です。一応、力には自信があるので。」

「ねえ、あなた、こういう仕事は初めて?」

「あ、まあ、初めてですね。」

こういう普通の会話をしながら日中は商隊の護衛をする。

今夜は次の街までの半分まで進んだところで野宿になった。


あ、リリィちゃんが歩いてきた。

「あの、一緒に寝ませんか。」

やべええ!!

少女と一緒に寝るのはまずい。

それに、今日はちょっと神力の研究(?)みたいなことをしようと思おっていたんだけどね......

まあ、いいか。

「いいですよ。じゃあ、寝ましょうか。」


翌朝。

俺が一番先に起きていた。

俺は毎朝6時には起きるようにしているから、こういう時に便利。

俺が本当は寝る前にやろうと思っていた、神力の研究をやってみる。

これまで、物を出したり、マップを使ったりがいちいち面倒くさかった。

PCで言えば、全部をコマンドラインで操作しているみたいな感じだ。

だから、思い切ってGUIを使ってみる。

GUIというのは、PCでいったら、マウスなんかを使ったりする操作方法みたいなものだ。

試しに、MMORPGのような視界の端っこに操作パネルのようなものが映るようにする。

......成功。

次に、タッチ、思考で操作できるか確かめる。

......成功。

次に、それらを全部まとめて、視界の上部に小さくしておく。時間と空間把握の能力で作った簡易マップのようなものは視界の右端に設置する。

最後に、スマホのように上からスライドして、メニューのように呼び出せるかを確認する。

......成功。

これでストレージの中に入っているものを把握できるようになったし、頭の中に記憶してある地図も簡単に読めるようになる。

......うーんここまで来ると、他の人にも見えるようにできないかな。

(それなら、自分の考えていることを表示させることができるから、大丈夫よ。

『スクリーンオン』でできるわ。

『スクリーンオフ』で消えるよ。)

すごいな神力。

でも、なんでここまで優秀なんだろう。

確か、俺が使う分には制限をかけると言っていたような気がするが。

(これは、娯楽の分類だから制限をかけていないのよ。)

(そうなんだ。ありがとうな。)

(どういたしまして。)

『スクリーンオン』

出来た......と思う。

自分からは分からない。

「あれ?それなんですか?」

後ろを振り返ると

やべ!集中してて空間把握意識して無かった。

どうしよう。

「え、えーっとねー」

どう答えればいいんだ。

「お、嬢ちゃん、魔術師だったのか」

え?そういう感じで良いの?

(一応この世界では私達は魔術師と言っても差異は無いけど、力が違いすぎて多分この世界の最強の魔術師とでも、本読みながら勝てるわよ。

それに、こっちは詠唱無しでイメージだけで使えるけど、あっちはこっちの神にお願いする感じで詠唱しなきゃいけないから、その点でも有利よ。)

えー......

「ま、まあ、そうですね。」

「どんな魔法が使えるんだ?」

そうきたか。どう答えれば良いんだろう。

この世界で魔法は見たことがないから、どんな魔法が初級でどんな魔法が上級なのか分からない。

(とりあえず、水をそこにある岩に高圧で打ち出してみたら?)

分かった。

バシュッ!!

2mを超える大岩が粉々に砕けた。

「「「「「(......)」」」」」

瑠璃も含めて全員が押し黙る。

(え?どうしたの?)

(......威力を高くしすぎ。)

え......?

やばいかも?

あ、しかも詠唱してない。

この時点で詰んでる。

しかも、大岩を一瞬で壊した。しかも、水圧だけで粉々に。

やっちまった。

「......す、すげー。」

誰かが声を漏らした。

やばい。こういうときはどうする。

「結構すごい魔術師だったんだな。」

「あ、あはははは」

「ま、依頼が終わるまでは頑張ろうな。

この商隊には魔術師がいないから、助かったぜ。」

なんとか乗り切ったか?

それにしても、近くの岩をこわしたから俺だけずぶ濡れなんだよな。

あとで神力使って乾燥させますか。


「おー旬燐やったな!」

「お前がいなかったらヤバかったぜ。ありがとよ。」

「旬燐ちゃん。お手柄ね。」

......どうしてこうなった。


数分前。


盗賊75人程度がこの商隊に仕掛けてきた。

普通はこんなにいないらしい。

普通は多くても30人程度らしい。

護衛の人たちは、既に戦う気も失せて降参しようとしてた。

実は、この世界では護衛の数の2倍以上の盗賊に襲われたら降参しても依頼達成とされる。

ただし、降参したら商隊の荷物は取られるし、誰か一人でも降参しなかったら、降参したほうは大丈夫だけど、降参しなかったほうと、商隊は襲われる。

だから降参しようとしたのだろう。

だが、俺も自分の実力は確かめてみたい。

降参しないで、どう攻撃しようかと悩んでたら、

「早く瑠璃ちゃんも降参しなさい。」

「死にたいのか? 相手は死のデス・ファングだぞ?」

なり。

大丈夫だろ。それに俺、こんな厨二病患者のつけたような盗賊団の名前聞いたことないし。

「大丈夫ですよ。SAN値が下がらない程度に倒しますから。」

「サン、? じゃなくて、早く降参して!」

別にいいじゃん。力試すくらい。そんなに早く報酬がほしいのかな?

ま、いいか。

とりあえず、盗賊の3分の1の周囲の空気の中から酸素以外を消す。

すると、相手は酸素を吸って死んでしまう。

なぜなら、酸素は空気の中のほかの期待と吸うぶんには別に問題がないのだ。だが、酸素100%のなかに生物がいると、死んでしまう。

次に、空気で槍を作って3分の1を倒す。

最後はまとめて大量の空気中の水分をすべて水素に変えて、点火!!

ボーン!!

盗賊が固まっていてくれてよかった。

もし囲んでいたら、水素爆発の威力を試すことができなかった。

でも、後ろに逃げるとかいうことを考えなかったんだろうか。

視界の隅に意識を寄せた。

半径100mの曲線状にずらりと商隊をかこっていた。

すごく面倒くさい。

まとまっていればいいものを。

あ、範囲指定的なものはできないかな

「半径100m以内、盗賊のみ──」

わざと声に出して言う。

「――炎上。」

遠くのほうでボッ、と音がした。

「ギャー!?」

よし!おしまい。

「終わりましたよ。」と言おうとして後ろを振り向いたらみんなが複雑な顔をしていた。

「「「「「(おまえ(あんた)結構グロいことをするんだな(ね))」」」」」

そんなにグロいかな?

(ちょっと平均を知ったほうがいいと思うわよ?)

それもそうだな。


#004 実験しました。

あのあとは盗賊もモンスターも出ないかったから問題なく護衛できた。

ちゃんと護衛の報酬ももらった。

ただ、あの戦闘のあとからは護衛対象も含めてみんなが距離をおいて話してきた。

それにはちょっぴり傷ついたりする。

一応この街にも空間移動能力で行けるようになったから王都にもどるか。

(ここを観光してからでもいいんじゃない?)

あー、......そうだな。

どこに行こう?

(まずはこの世界のスイーツを食べに行こうよ。

まずはこの街の名産物のベサルム焼き、っていう、大判焼きみたいなものを食べに行こうよ。)

(わかった。どこに行ったら良い?)

(とりあえず、適当に人に聞いてみたら?)

(そうだね。そうする。)

近くにそういうことを知っていそうな人、知っていそうな人......いた。

「あの〜。このあたりにベサルム焼きを売っている店はありますか?」

「あ、えっと、この先の角を曲がって3つ目の店だよ。」

「ありがとうございます。」

言われたとおりにいってみると確かにその場所に店が存在した。

だが、日本の屋の屋台みたいなのが建物の間に入ってる感じだった。

(ここか?)

(これであってるよ。)

「あのー。すみません。ベサルム焼きを......」

(何個?)

(1個。)

「1個お願いします。」

「はーい。」

(......ねえ、口調とか、変えたほうが良いかな?)

(どうして?)

(だって、今は少女の姿だろ? それにこの世界には瑠璃も何回か来るんでしょ?)

(まあ、そうだけど......いいの?)

(一応。)

(じゃあ、お願いね。)

(OK)

たい焼き、もとい、ベサルム焼きを貰った。

ベサルム焼きは銅貨5枚で、大判焼きと同じような生地。中身はカスタードクリームの代わりにブルーベリーのようなものを潰したと思われるものが入っていた。

案外食べやすいし、良いかもしれない。

うん。うまい。

(そうね。日本じゃこういうものは食べたことはなかったでしょう。)

(まあ、神話が好きと言っても、本とか、電子機器、特にPCとその周辺機器にお金を使っていて旅行に使うお金がなくて実際にはいかずにインターネットで集めていただけだから、あまり自分の住んでる場所から離れた場所には行かないからね。)

(うん......まあ、そうね。)

(でも、味覚まで共有してるのか?)

(うん。他には、視覚、聴覚、感覚、嗅覚、思考、なんかも全部共有してる。)

......

まあ、いいか。

(次はどこに行く?)

(もう私の用事は終わったから、好きなようにしてもいいよ?)

(オッケー。じゃ、王都に戻って、実験しても良い?)

(いいよ。)

転移門解錠

よし、戻るか。

いつも思うが、この転移門をくぐるときの感覚はなれない。

慣れたほうが良いんだろうけど、なんかふわふわする感じなのだ。

さてと、実験しますか。

とりあえず、立ったままでやるとバランス崩しそうだし、ソファにでも座ってやるか。

まず、スマホのように視界の上からメニューを下ろす。

指だけを動かすって人に見られると恥ずかしいから可視化しておく

そしたら各項目が左端の方に降りてきて選択すれば詳しく見ることが出来る。

いまのところは、地図とストレージ内の一覧表だけ。

せめてカメラとメモ帳(?)と録音ができるぐらいにはしておきたい。

もし出切れば地球で生きてたときに使ってたOSも入れたい。

やっぱり、こういうことが出来るようになるとOSとかいれたくなるからね。もし出切れば地球のネットワークに接続できれば良かったけど、まあ、無理だろう。

(出来るよ?)

(え? どっちが? )

(どっちも。)

(OSはともかく、なんで地球のインターネットに接続できるの?)

(えっとね、地球のインターネットがある国には1国家に一つ、天界用のネットワーク発信機があるから、それを天界で使ってるんだけど、それの電波をここに持ってこればいけるよ?)

よっしゃああああ!!

(でも、OSとかを入れないと多分しゅんりんには0と1の羅列にしか見えなくて、なんもつかえないから、まずはOSのインストールからね。)

てか、今思ったんだけど、OSってどうすんだ? まず、データすらもないし、

(まず、ストレージ一覧を開いて、『3355687』と念じてみて。)

なにがあるんだろう。

メニューからストレージ一覧を開いて念じる。

[3355687』

1拍おいて、

[接続中]

[接続中.]

[接続中..]

[接続中...]

[接続完了]

なんか出てきた。

(私の私物保管サーバーにアクセスしたの。

そこから旬燐のHDDを取得して。)

言われたとおりに『旬燐のHDD 4TB』を取得する。

(それを、『同期』して。)

(わかった。)

HDDを『同期』する。

一気に情報が入ってくる。

確か、パソコンに入れていた4TBのHDDには、メインで使っていたOSが入っていた。

ちなみに、俺はPC3台に、ディスプレイ6台を使っていて、HDDは各PCに4台くらいつけていた。メインは4TBで、他はすべて500GBほどのものにしていた。

(30秒位待っててね。そしたら旬燐の脳がHDDを認識してくれるから。)

わからないが30秒待ってみる。

(もう一回メニューを開いてみて。)

指を上からスライドする。

一つ項目が増えている。

「ん? OSモード?」

タッチしてみる。

確かにいつも使っているような懐かしいGUIが目の前に出てきた。

一応、画像から電子書籍まで全てのデータが入っていた。

(これでOSは大丈夫だから、『神力操作』でネットに接続してね。)

ん?わからんが、やってみるか。

『神力操作』

あ、ID求めてきた。あれでいいのか?

『3355687』

[認証完了]

色々出てきた。

ネットワーク設定でいいのかな。

あった。

(あとは私が設定するからちょっと待ってて。)

[検索:日本]

[サーバーの検索中]

[サーバーの検索中.]

[サーバーの検索に成功]

[神番号3355687→神界→世界2983479→銀河系→太陽系→地球→アジア→日本→日本ネットワーク接続用サーバー]

[安全な接続の確立中]

[安全な接続の確立中.]

[安全な接続の確立中..]

[安全な接続の確立中...]

[安全な接続の確立中]

[安全な接続の確立中.]

[安全な接続の確立中..]

[安全な接続の確立中...]

[安全な接続の確立に成功しました]

[接続先のネットワークを電波5GHz帯にて発信]

やけに現代日本みたいなアナウンスだな。

(これでいいよ。あとは、OSモードを開いて、Wi-Fiとして接続して。

多分、一つしかないと思うから。)

今度はOSのWi-Fi設定を開いてみる。

[god_Wi-Fi_3355687]

......もうちょっと捻れよ。

接続してみる。

100mb/sで接続できた。

(これでそのあたりはできたから、ブラウザでどこかのサイトにアクセスしてみて。

そしたら繋がると思うわ)

うーん、じゃあ、動画投稿サイトにでもアクセスしてみるか。

普通にみれたし、4Kでも行ける。

VRもちゃんと視界をすべて覆い尽くすから、本当にそこにいるみたいに思える。

もちろん、半透明にすることもできる。

VRは慣れないから透明度50%6画面4k画質にしておく。

(成功したみたいね。)

(ああ。ありがとう。)

次は何をしようかな。

ダッダッダッダッダ

ダン!!

うお!?どした?

「あなたがこの前王国を救ったしゅんりん?」

「ちょっ!? 姉さま!? 」

なんか12歳くらいの姉妹らしき少女が入ってきた。

「姉さま! 言葉遣いを気を付けてください。

ところで、旬隣さん、それ、なんですか?」

あ、やっべ。また空間把握意識してなかった。今度からこういうことをするときは半径20m以内に人が入ってきたら警告音が鳴るようにしておこう。

「あれ? それ、王城の地下にある大型高性能計算機のウィンドウに似てない?」

「そういえば、そうですね。それって、システム権限を借りてきたんですか?」

「あ、これは頭で考えたものをちょっと再現したものです。」

「ふーん。性能が気になるから、計算した貰いたいんだけど、良い?」

「あ、良いですよ。」

「10÷3で5秒で何桁行ける?」

「ちょっと待ってください。」

「姉さま、旬燐さん。無視ですかぁ?」

あ、妹さん涙目になってる。

まあ、とりあえずコマンドラインで5秒間の計算桁数を図る。

[計算中]

[計算中.]

[計算中..]

[計算中...]

[計算中....]

[計算完了_計算結果:5120025桁]

すげー......俺のメインPCでも3000000~3500000桁くらいだったのに。

「えっと、大体500万桁くらい。」

「「は......?」」

「え?」

「それはないでしょ。」

「そうですよ。王宮にある大型高性能計算機でも3489桁なのに。」

「まあ、科学国家タリーヌのだったらあるかもしれないけどね。」

「あはは......」

タリーヌってどこだ?

まあ、いつか調べてみよう。

「で、二人はどちら様でしょうか?」

「私はレドリック侯爵家のレドリック・リード・レインよ。

そしてこっちが......」

「妹のレドリック・リード・フランです。」

「えっと、侯爵家の令嬢がどうしてここに?」

「うん? 父様に『この手紙を旬燐さんに渡して海に行ってきなさい。』って言いながら手紙を渡されたからね。

とりあえず、はい。」

手紙を受け取る。

5行に要約するとこんな感じ。

この姉妹はあまり同年代の友達がいない。

このことをどうにかしてやりたい。

だから友達になってやってくれ。

ついでに今日はこの子らに王城の更に南にある海にいって一緒に遊んでやってくれ。

私は仕事で忙しいからたのんだぞ。

そういう内容だった。

俺はレドリック侯爵と仲良くなった覚えは無いんだがな。

「届けてくれてありがとうございます。」

「どういたしまして。

ところで、このあと予定とかはあります?」

「いいえ。ありませんが。どうしてですか?」

「じゃあ、私達と海に遊びに行かない。?」

「実は、姉さまはあまり友達がいないので、この機会にt」

「あああああ!! それ以上言わないで!!」

レインは友達が少ないのを隠したいみたいだが、もう手紙に友達が少ないと書いてあるからもう遅い。

「では、お願いします。」


海にはついたんだが、どうしてこうなった...

俺は今、海の上を滑りながらレドリック姉妹を乗せた動力のない船を引いていた。


数分前。


「ねえ。そういえば、あなた、書類上では性別の表記がなかったけど、どっちなの?」

「そういえばそうですね。書類上では性別の表記がなかったですし、名前も二重表記でしたし。」

また答えにくい質問を。

「書類の表記通りだよ。」

「それはどっちと取れば良いのですか?」

うーむ。どうしよう。

「本当は男。だけど普段は女。とか?」

レイン、当てないでほうしかったよ。

「まあ、そうだね。正解だよ。」

「ふうん。」

「ところで、海でなにするの?」

「え? 私達が海で出来ることといえば水遊びしかないでしょう?」

「そうよ。何考えてるのよ? まさか、海の上を走るとか魔導船を操作するとか言うんじゃないでしょうね。」

「まあ、そうだけどさ。」

いや、俺船舶免許とか持ってないし。

ん? 水の上を走る?

空を飛べて、陸も走ったりして移動できる。

じゃあ、水上は? 水上では移動できないんだろうか?

(いちおうできるだろうけど、試したことがないよ?)

(そっか。ありがとう。)

(もしやるんだったら頑張ってね。)

(うん。)

「おしゃべりしてるうちに海についたね。」

この海湾になっていて、白い砂浜になっている。湾の端っこは半島と半島の距離が500mほど、一番広いところで1000mほど、湾の一番奥から入り口までも1000mほどだった。

なんか目測でわかるようになってた。

「じゃあ、僕は試したいことがあるから、数分くらい待ってて。」

「分かったわ。」

「がんばってきてくださいね。」

よし、まずは、海の近くに行って、足まで海に浸かる

(できるかな?)

(多分出来ると思うよ。)

うーん適当に、

『水耐性』、『水上浮力』

これで大丈夫かな。

ぼちゃっ。ぼちゃっ。

お、水上を歩けた。

スケートをする感じで滑ってみる。

おおー、案外速度出るし、結構安定してる。

これって、自分は動かなくても速度が出るようにならないかな。

よし、空中移動をするときと同じような感覚で前に進んでみよう。

ザバアァァァ!!

速い速い!!

予め速度を知っていたら結構普通なんだけどな。

どんだけ速度が出てるのか知りたいな。どうしよう。

(なあ、瑠璃、ノットとkm/sの単位のスピードメーターを出したいんだけど、どうすれば良い?)

(えっと......メニューを開いて、一番下に『速度計』の項目を作ったから、そこを開いたら、空間把握の隣に2つの速度計が出ると思うよ。

安全用に警告なんかもつけておいたからね。)

(ありがとう。)

指を上から下ろす。メニューの一番したの速度計を開く。

おっ。出てきた。

[0.00km/h]

[0.00ノット]

よし、せっかくだしどれだけの速度が出るのか計ってみよう。

まずは、なんかゆるく走る感じで。

[38.89km/h]

[21.00ノット]

おー。普通に陸を走るより速い。しかも疲れない。

なんか気持ちいなあ。

次、普通にやってみよう。

[76.02km/h]

[41.05ノット]

お、最速の駆逐艦の島風の最高速度を超えた。すげー。

てか、高速道路よりちょっと遅い速度で走ってるんだよね。なんか、うん。

てか、普通に歩く程度には疲れるな。

次は、本気で行ってみよう。

[82.50km/h]

[44.55ノット]


[123.51km/h]

[66.69ノット]


[164.54km/h]

[注意:速度を落としてください。]

[88.84ノット]

[注意:速度を落としてください。]


[250.24km/h]

[注意:速度を落としてください。]

[135.12ノット]

[注意:速度を落としてください。]


[315.45km/h]

[警告:速度を落としてください。]

[170.32ノット]

[警告:速度を落としてください。]


「うわああああああああああ」

やっべ、加速しすぎた。なんか、すごく疲れる。

[440.00km/h]

[警告:3秒以内に加速を停止しなかった場合強制的に150km/sに落とします。]

[237.58ノット]

[警告:3秒以内に加速を停止しなかった場合強制的に80ノットに落とします。]

しかも、バランスが取りにくい。車に乗ってて急発進された感じを強くした感じ。

まず、さっきのは1秒毎の記録だもん。

てか、自転車で言うと、漕ぎ始めでまだ速度が出し切れていない感じ。ってことは、これ以上も出せるということだ。

「旬燐!?何してるの!?」

「え?旬燐さん?あ、ほんとだ。旬燐さん!?」

見つかった。

......

え?視力やば。って言ってる前に、止まらないとやばい。計算したら、あと3、4秒ほどで対岸にぶつかる。

まず、右に向かって90度体を回転させて、レイン達のところに向かう。ブレーキもかけながら。

ザバアァァァ

ぎりぎり間に合った。

けど、体を回転させた時の水しぶきが......

「なにしてたの!?」

「てか、どうやったらできたんですか!?」

「いや、まあ、ね?」

「ふーん。言えないわけね。じゃあ、そこにある手こぎボートを陸とつなげている紐で曳いてよ。」

うーん、大丈夫かな。

(大丈夫じゃない?)

(そっか。じゃ、いっか。)

「あー。うん。わかった。」

「じゃあ、乗ってね。」

「わかったわ。」


「じゃ、掴まっててよ。」

「「はーい。」」

ザザー。

[30.00km/h]

[16.20ノット]

こんぐらいの速度でいいかな。

風がきもちい。

「気持ちいいわね。」

「そうですね。

旬燐さん、ありがとうございます。」

「どういたしまして。」

「そういえば、これって、周りの人から見たら、すっごい変な状態よね。」

「そういえばそうだな。」

「少女二人を乗せた手こぎボートを少女が水の上を滑りながら曳いた状態ですからね。」

......

「じゃ、王城に帰るか?」

「うーん。

あ、そうだ。この王都には川が流れているでしょう?

そこを通って帰りたいわ。」

「この船ってここのだよね。」

「いえ。この船はレドリック公爵家の所有物ですよ?」

「あ、そうなんだ。」

「はい。

だから、このまま王城に帰ってもいいですし、ちょっと気が乗らないですが、ここに片付けておいても良いんです。」

「そっか、じゃあ、このまま王城にもどろうか。」

「ありがとうね。」

「どういたしまして」

帰るときに国民から変な目で見られたのは言うまでもない。


#005 魔術高校に入学しました。

ちょうど、ネットで魔法が出てくるラノベを見ていた時に、ルドラ宰相から声がかかった。

「僕って魔法使えるんですか?」

「え?前研究長の実験台になった時にバンバン魔法を使っていたじゃないですか。」

(瑠璃。あれって、魔法だったの?)

(一応、魔法でもあるけど、あれは神力魔法っていって、神族にしかつかえない魔法だから、魔法と言っても間違いはないよ。)

「旬燐殿、魔術科高等学校に行かれてみますか?」

(そっか。神力っていってたから、魔法じゃないと思ってた。)

(でも、魔法とは使う力も違うし、神族にしか使えないから、魔法であり、魔法ではないものなんだよね。)

「で、魔法科学校に行かれますか?

一応、旬燐殿の年齢だと受験資格はありますが。」

(瑠璃。本当の体で魔法が使えるようになりたいんだけど、教えてくれる?)

(いいよ。)

(ありがとう。)

「試験はいつなんですか?」

「きっちり2週間後です。」

「応募締め切りは?」

「試験3日前です。」

「なら、その時に決めてもいいですか?」

あと11日か。

(11日で行ける?)

(神力の適正があるからそのぐらいあったら魔術科高等学校に入学できるくらいにはできるよ。)

(そっか。ありがとう。)

「ちなみにレドリック姉妹も受験なさるそうです。

考えていてくださいね。」

「はい。」

ギイイイパタン

(レドリック姉妹も試験受けるんだ。)

(そうみたいだね。)

(じゃあ、王都の近くに森があったから、そこにくか。)

『転移門解錠』


「これで魔力の錬成はマスターした?」

「うん。ありがとうな。瑠璃。」

「どういたしまして。」

「次に、この前旬燐が使っていた高水圧で魔法を対象に当てるやつは、『ウォータースピア』っていうんだけど、普通は魔術は詠唱して魔術式を組みたてないといけないから、教えるね。」

詠唱って、あの厨二臭いあの詩のようなやつか。

「えっとね『水の精霊よ、我の祈りを聞き届け、力を授け給え。ウォータースピア』だったと思う。」

すっげー厨二臭い。

「短縮して、『精霊よ。ウォータースピア』とかやる人もいるよ。」

ああ、なんかやりそう。

「じゃあ、やってみるよ。」

「『水の精霊よ、我の祈りを聞き届け、力を授け給え。ウォータースピア』」

ズドーン

結構威力あるな。

それに、コントロールもある程度できるし。

「ありがとう。でも! 詠唱恥ずかしいからやっぱりそのままで。」

「わかった。」

「ありがとう。でも、詠唱無しでできるかもしれないから、試してみる。」

「わかった。頑張ってね。」

精神を水を打ち出すことに集中。

撃て!!

ズドーン!!

いけた......

「瑠璃、無詠唱でもいけたよ。」

「うーん......あ、多分、普段魔法を無詠唱で撃ってるから、そのせいで無詠唱で大体の魔法が使えるようになってるのかも。」

「そっか。」

「これは推測だけどね。」

「ねえ、もしかして、この世界の魔法って、俺みたいな現代人が考えるより簡単だったりする?」

「多分。魔法は精神を集中させて、世界の原子に直接働きかけるものだから。」

「そうだったんだ。」

「でも、結構想像だけでやるのは難しいから、魔術式を組み立てるんだけどね。」

「そうなんだ。

じゃあ、大体の魔法は神化してなくてももう使えるってこと?」

「まあ、そうだけど、神化してたほうが強いね。」

「そっか。じゃあ、試験を受けるとしたら、神化して受けようかな。」

「それでいいと思うよ。」

「じゃ、王城に戻ろうか。」

「うん。」

『神化』『転移門解錠』


「レインとフランも魔術科高等学校に入るの?」

「ええ。入るわよ。お父様からも入るように言われてるもの。」

「私も入りますよ。」

「もってことは、旬燐も?」

「うーん。受けようか迷ってる。

二人は、その学校のテストの内容とか知ってる?」

「知らないわ。」

「あ、私は知ってますよ。

まず、実技とペーパーテストらしいです。

実技は、魔法で的を壊すみたいな感じらしいです。

そして、ペーパーテストは算術系らしいです。」

すごいな。よく集めたな。

「よく知ってたね。」

「私、結構情報を集めるのは自身がありますから。」

「フランはね、結構人脈が広くて、情報収集とかも、結構やってくれるのよ。」

「そうだったんだ。」

人見知りなのかと思ったら、結構人脈広いんだな。

「ありがとうな。」

今後の方針が決まったな。

「じゃあ、僕は街でちょっと買い物に行ってくる。」

「私もついていってもいいですか?」

「ああ、良いよ。」

「私は先に屋敷に帰ってるわね。」

「またね。」

さて、町のほうで魔法のための素材を買いに行きますか。

(旬燐、それ、旬燐が考えてるよりも難しいよ。)

(頑張る。)

『転移門解錠』

どういう場所に鉄って売ってるかな。

「ねえ、フラン、鉄ってどこに売ってるか知ってる?」

「鉄でしたら鍛冶屋に行けば少しは分けてもらえると思いますよ。」

「ありがとう。」

鍛冶屋はどこだっけかな。地図に載ってるかな。

手で操作する。

あった。一番近いところはこの先の角を曲がったところにあるガルレオン鍛冶場だな。だな。

「じゃあ、この先の角を曲がったところにある鍛冶屋に行こうと思うけど、いいかな?」

「良いですよ。多分そこなら、昔から何かと付き合いがあったので、鉄なら少しだけ分けてくれるかもしれないです。」

よし。行くか。

ドン

「うわ!? と」

「痛ってーな!気をつけろよ!」

ん? これって、スリとか?

あ、財布(といっても布に包んであるだけだが。)がぬかれてる。

でも残念。俺は所持金の殆どをストレージに入れてある。

それにしてもこの世界にもスリっているんだ。

と、そんな事を考えていたらガルレオン鍛冶屋の前についてた。

「ここで合ってる?」

「あ、はい。ここで合ってます。」

「すみませーん。ガルレオン鍛冶屋ですか」

「ああ。そうだが......って、あ、フラン様。こんにちは。」

「こんにちは。」

「えっと、隣の方は......?」

「私の友達の旬燐です。鉄を少し必要らしいので、少し分けてあげてもらえますか?」

「いいですよ。どれだけ必要ですか。」

最初に俺の対応してた時と違うな。

まあ、貴族相手と平民相手では対応を変えて当たり前だよな。

「えっと、銅貨4枚分の重さをお願いしてもいいですか? 代金はいくらですか?」

「あいよ。フラン様の友達ならタダでいいですよ。」

タダとは。すごいな。

「ありがとうございます。」

鉄を1cm×1cm×5cmの棒を11本もらった。

本当は銅貨4枚分は11.4本だけど、タダでくれるわけだしね。

よし。じゃあ、あの魔法を練習した森に向かうか。

「おーい。フラン。ちょっと森に行ってくるね。」

「あ、私も行きます。おじさん。またいつか。」

「あいよ。」

『転移門解錠』

やっぱり何回くぐってもこの感覚はなれないな。

「えっと、なにをするんですか?」

「え? ちょっと実験。ちょっと危ないかもしれないからもしできれば木とかに身を隠しておいて。」

「わかりました。」

まずは、さっき貰った鉄の棒を細長く伸ばす。大体直径0.5mm位になったら、コイル状に巻く。でも、このままだとコイルとしての役割を果たさないんだよな。なんとかして絶縁させないといけない。ゴムとかエナメルとかあったら良いんだけど。

(だったら、魔力とか神力で導線を包めばいいんじゃないかな。)

(その案いただき。)

導線を神力で包むイメージを作る。

新緑で包んだ導線をコイル状に巻く。直径は7mm長さは30mmほど。

これに鉄クズなんかをを入れて一気に電流を流せばコイルガンになる。

ちょっと試してみるか。

鉄棒の一つから直径5mm長さ20mmの細長い鉄で出来た芯のような弾を作る。

コイルに弾を入れてコイルの先をちょっと遠めの木に向ける。

コイルの端から出てる先端に強めに高圧の電流を流す。

ドーーーン

「きゃっ」

「うわっ」

木が木っ端微塵になった。

すごい威力だな。それにやっぱり体もピリピリする。

「フラン、大丈夫か?」

「あ、大丈夫です。ですが、雷系の魔法を撃った時のようなピリピリした感覚がありますね。」

そっか、雷系の魔法とかもあるのか。ってか、電気とかではなく雷か。まあ、異世界で電気なんて発見されてないだろうしな。

ってか、コイルが無くなってる。消し飛んだのかな?

でもこれって、コイルなくても使えるのかな。

試してみよう。

「もう一回やるけど、多分さっきよりも強い衝撃があるかもしれないから気を付けてね。」

「わかりました。」

今度は神力で電気の通り道を作る。

これだと多分、結構な電圧を流さないといけないな。

空気って、なんVの電圧で電気が流れるんだろ。

まあ、とりあえずちょっと強めでで試してみるか。

うーん、抵抗が強すぎるな。流れない。

次は一気に電圧を上げて流してみよう。

バチッ!!

お!結構いけるかも!?

もっと上げてみよう。

バシュンッ

打ち出せるようになってきた。

更に出力を上げてみる。

ドーーーン

やっとさっきと同じか。

出力は大きいけど、でも一回一回コイルを作り直すのも経済的に無理だからな。

これで行くか。

「ありがとう。これで終わりだ。」

「わかりました。それにしても、これってどうやって鉄の塊を撃ち出してるんですか?」

そのキラキラして目で見るな。説明しないと気まずい。

やばい。どう説明しよう。

もう、そのまま原理を喋るか。

「えっと。電気を流すと、右回りの金属に対しての力がかかるんだよ。」

「はい。」

「その力が1方向に向くように統一して、それに鉄の棒を入れて強く電気を流すと、鉄の棒が打ち出されるってかんじ。」

「そうでしたか。ありがとうございます。」

「満足?」

「はい。」

「僕はそろそろ帰ろうかと思うけど、王城まで送る?」

「はい。お願いします。」


その後、フランを送って、ルドラ宰相に受験を受けることを話した。


試験当日


「ここが魔法科学校です。」

「結構大きな建物だな。」

「当たり前よ。なんせ、王国内唯一の魔法科学校だもの。」

「まあ、そうだな。」

それにしても、この校舎、何かで見たことがあるような......

あ、デンマークにある、フレデリクスボー城みたいな感じだ。

あれ? 子供の頃に城の図鑑みたいなので見たことがあるだけなのになんで覚えてるんだろ?

(神化してる間は、記憶を思い出す速度が上がるからだと思うよ。)

神化の力、恐るべし。

「それにしても、3人で試験番号が連番になるなんて、思わなかったな。」

「多分ですが、旬燐さんの分の試験枠は残してあったんじゃないですか?」

「そうなのかな?」

「お? 小さな女の子までいるな。嬢ちゃん、ここは遊び場じゃないよ?」

いや、なんで嬢ちゃん?

ってか、同じくらいの年の男子に嬢ちゃんって言われると腹立つな。

(私はだいたい7〜10歳に見られます。

そして、今は旬燐は神化してます。

そこから導き出される答えは?)

(神化してるから7〜10歳に見られてる。ってことか。)

(そういうこと。)

「旬燐さんはこう見えてもちゃんと14歳ですよ?それに、旬燐さんは私達の友達ですし、それ以前に、この王国を救った英雄ですよ?」

フランが俺の近くに来て説明をする。

というか、英雄はいいすぎなんじゃないだろうか......?

「あ、フラン様。お久しぶりです。そうでしたか。

この少女が英雄でしたか。」

急に態度変えたな。

「フラン、この人は?」

「あ、コンタート伯爵の長男のコンタート・ザ・レオンです。」

「私のお父様とは同じ派閥で、結構お父様とは仲がいいらしいけど、私から見たら、ただのウザイ塊なのよね。)

「え? なんで?)

「だって、私達を見つけると、周りの友達を引き剥がしてでも話そうとしてくるんだよ?)

「それは迷惑だな。)

「でしょう?)

「姉様、あまり人の陰口は良くないと思うのですが。)

「ごめんごめん。)

「フラン様、レイン様。一緒にテスト会場に行きませんか?」

「あ、いいよ、いいよ。私達は旬燐と一緒にいくからさ。ね?」

「え?あ、ああ。」

明らかに避けてるよな。

「じゃあ、行きましょう。旬燐さん。」

「わ、わかった。」

あのフランまでが避けるとは。

「では、さようなら。」

「もしかしてだけど、毎回こうやって逃げてたの?)

「逃げてたなんて人聞きの悪い。

まあ、毎回こうだったわね。)

ええ......

そりゃ、しつこくなるかもな。これまで、クラスメートとかは逃げたら追うみたいな人が多かったし、それをもとに考えると、当たってるかも。

「ねえ、学校の地図を忘れたから、地図見せて。)

「あ、いいよ。)

実は、OSモードのカメラ機能で地図を撮っていたんだが、それに気がつくとは。

「はい。これでいい?)

「ありがとう。

私達はみんな同じグループみたいね。で、筆記会場は--)


その後、筆記試験は何事もなく終えた。

ただ、剣や魔法の異世界で方程式や図形の問題が出るとは思わなかった。

ただ、筆記試験は数学と魔法学という魔法関係の座学の2科目だった。

一応、数学は多分ほぼ満点だが、魔法学は多分、数問合ってればいいかなというほどだった。

フランに聞くと、普通は魔法学のほうが出来てて、数学はあまり出来ないのが普通だとか。

まあ、数学ができるのなら、商会にでも入ればいいもんな。

あと、びっくりしたのが、異世界なのに校内放送が有ったこと。

まさか異世界に来て放送が有ったとは。......有線放送なのか?

もし無線だったら、電波法とかありそうだよね。俺の使ってる日本に接続するためのWI-FIも電波だしな。

「ねえ、筆記試験が終わったから、15分の休憩時間があるけど、どうする?」

「どうするって、なにが?」

「いや、実技試験会場のある、魔法実技棟まではここから10分位で行けるから、何かして5分位暇を潰さないといけないのよ。」

「そっか。何でもいいよ。」

「また会いましたね。レインさん、フランさん。」

「あんたの場合は自分から会いに来てるでしょう。」

あ、ついにレインが切れた。

「まさか。偶然ですよ。一緒に時間を潰しませんか?」

「いえ。大丈夫です。旬燐とお喋りでもしてます。」

「英雄様とお喋りよりも僕と貴族家同士のお話をしませんか?」

あ、これ、俺と敵対してるパターンだ。

厄介だな。あまり権力のある人と衝突しないようにしたかったから部屋に誰かいても出来るだけ無礼のないように話してたのに。

「旬燐さん、もうすぐ行かないと実技試験会場まで間に合いませんよ。」

「あ、それなら大丈夫だよ。

もし、本当に遅れそうだったら空間移動すればいいから。」

「そうでしたね。まあ、建物ももっと見てみたいですし、歩いていきましょう。」

「わかった。」

レインとフランもレオンに対して敵意むき出しだな。

ポーカーフェイスという言葉を知らないのか?


結局、実技試験会場につくまで、レオン・俺・フラン・レインの順でお互いに敵意をむき出しで移動してた。

主に、レオンが俺に。レイン、フランがレオンに対して。

仕方のないことかもしれないが、ここまで両者とも敵意をむき出しにして歩いてると、結構ストレス貯まる。多少はこっちのことも考えてほしい。

どっかで発散したいな。

(抑えて抑えて。

次は実技試験なんだから、そこで思いっきり撃っちゃえばいいじゃない。)

(そうだな。)

と、考え事をしていたらいつの間にか魔法実技棟についていた。

「あっちの建物から順に試験グループ1番、2番、3番、ってなってるみたいだよ。」

「わかりました。ありがとうございます。レオンさん、私達はあちらなので。さようなら。」

「ふう。やっと離れられたわね。」

「ああ。そうだな。」

「あ、そういえば、この入学試験は実技試験が重視されるみたいなので、筆記試験があまり出来てなくても、実技ができれば大体が受かるらしいですよ。」

「そうなのか。ありがとう。」

『実技試験開始1分前です。魔法実技等に入ってください。』

「じゃあ、入ろうか。」

......体育館......?

言葉がそれしか出ない。学校とかにあるような体育館。

「私達は、あっちの端っこの方でみたいよ。」

「え? あ、わかった。ありがとう。」

フランの指したところに並んで自分の番を待つ。

やっぱりみんな詠唱してるな。目立たないかな。

(大丈夫だと思うよ。

ほら、あっちの人も詠唱しないで魔法を撃ったから。)

(でも、威力は結構低いよ?)

(まあ、大丈夫でしょ。)

「次の方ー。」

「あ、はい。」

遂に俺の番か。ってか、俺が最後か。

この試験では試験グループの最後の受験者が終わらないと帰れないのか?

ま、いいか。

「ぼーっとしてましたが、大丈夫ですか?」

「あ、はい。大丈夫です。」

「では、全力を尽くしてください。」

「わかりました。」

鉄の棒を1x1x5の塊のままで取り出す。

「『空気抵抗操作』『電撃操作』『慣性操作』『コイル作成』」

それで準備終了。

あとは、高電圧を流すだけ。

「撃て!!」

バチンッ

ドゴオオオオオオオオ!!

うっわ。ものすごいしびれる。もし電子機器とか持ってきてたら全滅だな。

ビービービービー

警告音?なんでだろう。

『バリアが90%の攻撃を受けました。バリアの強度は1%です。自己修復します。』

うわ。やりすぎたかも。

「えっと、もしかしてですけど、あの王国の英雄と言われる旬燐さんですか?」

教師の一人が聞いてきた。

「あー。多分、はい。」

やっぱりそうなるわな。

「やっぱり!握手してください。」

「え?あ、わかりました。」

うわ。群がってきた。

「えっと、これにて試験は終了です。結果は3日後にエントランスホールの玄関前です。」

それだけ伝えて帰らないで。見て見ぬふりをしないで!


「あー。疲れた。」

「それはそうでしょうね。」

「あんなに大勢に囲まれましたからね。」

「だけど、レインたちがいてくれて助かったよ」

「と、友達を守る当然のことをしただけよ。」

「姉様、もっと素直になってもいいのではないですか?」

「う、うるさいわね。」

「まあ、二人がいなかったらもっと長い時間拘束されてたよ。ありがとう。」

実はあの後、レインが「旬燐はこれから私達との用事があるから、旬燐を開放してもらっていい?」と言ってみんなから開放してくれた。

それについては感謝だ。

まあ、とりあえず、王城に戻るか。

「あ、寄りたいところがあるんですけど、いいですか?」

「あ、いいわよ。旬燐もいいわよね?」

「いいよ。」

「どこに行きたいの?」

「えっとですね。この近くに食事処があるんです

久しく行ってなかったので、もし出切れば言ってみたいなと思いまして。」

「そっか。じゃあ、俺は神化を解いてから行ってみるか。」

『神化解除』

「じゃ、行こうか。」

「はい。」

「ところで、なんていう名前の店なの?」

「えっと、確かバー『ライデン』だったと思います。」

「は? 未成年だよね。酒のんじゃダメだよね? あと、最低でも6年は必要だよね?」

ってか、さっき食事処って言ったよね。

「旬燐がどれだけ過保護な国から来たか知らないけど、もう12歳を超えたら酒飲んでもいいのよ?」

「嘘!?」

「本当です。」

「でも、僕お酒は飲んだことがないから、やっぱり神化して行くことにするよ。」

「わかりました。」

「で、場所は?」

「えっと、ライデンはこの先の角を曲がったところにあるわね。」

「わかった。」

でも、高校生3人で酒場に行くっていうのは前の世界では考えられなかったな。ってか、傍から見たら小中学生あたりの少女が酒場に行ってるような感じだよな。

違和感が半端ない。

まあ、この世界では問題がないのかもしれないが。

「ここがバー『ライデン』よ」

これがフランが行きたかったバー『ライデン』か。

なんか、日本とかにもありどうなバーで、茶色を基調とした雰囲気になっている。

多分、日本とかだと、静かなジャズの曲が流されていそうな雰囲気だった。

「こんにちは。」

「いらっしゃい。」

(結構いい感じの店だね。)

(そうだね。バーなんて入ったことなかったからな。

そういえば、最近あんまり話しかけなくなってたけど、どうした?)

(いや、レドリック姉妹がいるのに話しかけるのはどうかと思ってね。だって、あの子達からしたら旬燐が透明人間と話してるように見えるでしょ?)

(それもそうだな。気を使ってくれてありがとう。)

(どういたしまして。)

「マスター。ウィネください。」

それをいうならワインじゃないのか?

(ここではワインじゃなくて、ウィネって言うらしいよ?)

(そうだったんだ。ありがとう。)

「私もそれでお願いします。」

「じゃあ、僕もそれで。」

「ウィネ3杯ですね。どうぞ。」

俺たちの前にグラスが置かれてワインが注がれる。

ここではウィネか。

「んー!やっぱり美味しいわね。」

「そうですね。久々でしたしね。」

隣ではすでに二人が飲んでいた。

「旬燐のんだら?」

「え? あ、ああ。」

まあ、神化してるし、飲みすぎなければ大丈夫でしょ。


レドリック姉妹は何杯も飲んで、結局酒に呑まれた。

こんな幼いときから飲んでも大丈夫なのか本気で心配になる。

まあ、それは置いといて、マスターと俺に愚痴がすごかった。

さすが貴族令嬢。やっぱり溜め込んでいたんだな。

「それでさあ、その伯爵家の長男が私のところに来て一緒に踊りませんか? っていったわけ。それを断っても次のやつが来るんだよ? ほんっとうにあのときは面倒くさかったのよ。」

このようにずっと愚痴ばっかなのだ。

「しかもですよ? それからは、魔術高校に入学するためにって言って、勉強三昧でここにも来れなかったし、王都を散歩もできなかったんですよ。わかります? この気持ち!!」

「「マスター!! おかわり!!」」

忠告しといたほうが良いよな。

「これ以上飲むと体にわるいと思うよ。」

「まあまあ。飲みたいって言ってるんですし、久々の飲酒ですからね。ちょっとぐらいは見逃しましょうよ。」

「まあ、そうですね。」

ガタタン!!

あ、酔いつぶれた。

「お会計をお願いします。」

「レイン様とフラン様は銀貨5枚ずつ。旬燐様が銀貨1枚です。」

「あ、レインとフランのぶんも払います。銀貨11枚ですね。」

「はい、ありがとうございます。

ちなみに侯爵家に迎えを呼びますか?」

「あ、いえ。僕が直接送りますので大丈夫です。今日は有難うございました。」

「いえいえ。また来てくださいね。」

「ほら、フラン、レイン、僕の背中に乗っかって。」

「うーん。」

3分ぐらいかかってやっと乗っかってくれた。

「では、また来ます。」

「ありがとうございました。」

とりあえず、俺の部屋に寝かすか。

『転移門解錠』


ドサドサ!

レドリック姉妹を俺の部屋のベッドに下ろす(この場合は、ベッドの上に落ちたと言った方が合ってる)と、そのままルドラ宰相のもとへ向かった。


ルドラ宰相は廊下を散歩していた。

「ルドラ宰相、レドリック家に連絡ってできますか?」

「多分できると思いますが、どうしましたか?」

「レインとフランが酔いつぶれてしまって。」

「そうでしたか。連絡してきます。」

任せておけばいいかな?

とりあえず、俺は部屋のソファーの上ででも寝ころんでおくか。

はー。つかれたな。

(そうだね。)


翌朝


そのまま寝てしまったらしく、体のあちこちが痛い。

まあ、大丈夫だろ。

「あ、おはようございます旬燐殿。よっぽどおつかれだったんですね。もう、お昼です。

まだ食堂は昼食をおいていると思います。」

「ありがとうございます。レインとフランはちゃんと家に帰ってました?」

「はい。侯爵本人が連れていきました。」

侯爵本人って......

まあ、いいか。

「じゃ、僕は食堂に行ってきます。」

「はい。行ってらっしゃい。」


「あー、体が痛いな。神力で直せないかな。」

(できるだろうけど、今はこのままでいいと思うよ。)

「そうかな。」

はあ、ソファで寝るんじゃなかった。

バシュンッ

ザシュッ

「カハッ」

うっ。

胸に刺さった気がする。

何が刺さった?

「矢......?」

(ねえ、これって、左胸に刺さってるよね。)

やばい、意識が。

(ちょっとまって!! 旬燐!? 旬燐!?)

ドサッ


「はあ、お父様も怒り過ぎなのよ。たかが酒を飲みすぎて酔いつぶれるくらいで。」

「まあまあ、私や姉さまの体のことを思っていっていたのですから。まあ、少しは怒り過ぎだと思いますけど。」

レインとフランは食堂で昼食をとったあと、旬燐の部屋に向かっていた。

「そういえばさ、なんか鉄のような匂いがしない?」

「しますね。前に旬燐さんが鉄を買っていたので、多分何か作業をしてるんじゃないですか?」

この場合、買っていたではなく、譲ってもらったなのだが。

そんな話をしながら、旬燐の倒れた廊下に曲がる。

「そう、だ、ね......?」

「え......?」

レインとフランが倒れた旬燐を見る。

「ね、ねえ。死んでるの......?」

「え? わからないですよ。」

「だ、誰かー!! 旬燐さんが! 旬燐さんが!!」

「誰か来てください! 旬燐さんが倒れてます!!」

二人が助けを呼ぶと、流石に色んな人が集まってきた。もちろん、国王陛下やルドラ宰相も

「UTC+0900、日本標準時間20xx年6月7日、13時34分23秒。出血量が規定量を超えたため、神格番号『01』、個体名『世界神』の権限で神格番号『3355687』、個体名『倉橋瑠璃/倉橋旬燐』に対して『自動自己修復ツール』を開始します。」

まさに、王城に住み込みで働いている医師がもう手遅れだと皆に報告しようとしたときに旬燐の口から氷のような感情のない音声が『再生』された。

「神格番号『3355687』、個体名『倉橋旬燐』の状態を調べています。」

「神格番号『3355687』、個体名『倉橋旬燐』の身体に以上はありません。」

「続いて、神格番号『3355687』、個体名『倉橋瑠璃』の身体の状態を調べています。」

「神格番号『3355687』、個体名『倉橋瑠璃』の身体は出血多量、心臓その他臓器の損傷です。これ以上の生命維持活動は不可と判断します。」

「以上の判断より身体の交換、精神、魂、記憶の移行を開始します。

『自動自己修復ツール』の権限で、私物保管サーバーから、神格番号『3355687』、個体名『倉橋瑠璃』のバックアップを取り出し、精神、魂、記憶の移行を完了し、損傷した身体の破棄を行います。」

そう『再生』された瞬間、無傷の旬燐の体が現れた。

だから、今は旬燐が二人いるように見えてる。

「これより、古い身体から精神、魂、記憶の移行を開始します。その間に攻撃をされた場合、攻撃したものの命は保証できません。

「移行中です。」

魔力が見えるものからしたら、大量の魔力が旬燐の身体から新しい身体に流れていることがわかると思う。

数秒経って。

「精神、魂、記憶の移行が完了しました。

続いて、古い身体の破棄に移ります。」

新しい身体から声が『再生』される。

旬燐が立ち上がって、古い身体に手を向ける。

ボッ

古い身体が燃え上がる。

「神格番号『3355687』、個体名『倉橋瑠璃/倉橋旬燐』の身体の破棄に成功しました。」

「神格番号『3355687』、個体名『倉橋旬燐』の状態を調べています。」

「神格番号『3355687』、個体名『倉橋旬燐』の身体に以上はありません。」

「続いて、神格番号『3355687』、個体名『倉橋瑠璃』の身体の状態を調べています。」

「神格番号『3355687』、個体名『倉橋瑠璃』の身体に以上はありません。」

「これで『自動自己修復ツール』を終了します。」

ガクン

旬燐の体が力が抜けたように崩れ落ちる。

それをレインが近寄って受け止める。

「旬燐!? 旬燐!? 大丈夫!?」


レインが体を揺らす。

本当は病人を揺らすのはあまりやってはいけないことなんだが......

「う、うーん。」

(旬燐! 旬燐! 起きて!)

「あれ? 僕、矢を心臓に受けて......」

あれ? その後の記憶がない。

誰かが治療してくれたのだろうか。

でも、それにしては服が血で汚れていないのがおかしい。

どうなってるんだろう。

「ってことはここは死後の世界......?」

(いや、そんなことは......

あ! 確か、世界神様の権限で、すべての神に『自動自己修復ツール』が入れられてるから、多分それが......)

多分それだ。

(あ、そうだとしたら、大変なことになってると思う......)

(え? それってどういう......?)

(えっとね。多分、みてたら分かる。)

え?

「あの、旬燐さん、大丈夫ですか? ここはちゃんと生の世界ですよ。」

「え?あ、うん。大丈夫だよ。」

「そう。ならいいんだけど。」

なんか、態度が余所余所しい感じがするんだが。

「旬燐殿。昼食は食べましたか?」

「あ、食べてない。」

「では、昼食を部屋までお持ちしますので、部屋でお休みになってください。」

「あ、わかりました。」

レインの肩を借りて、部屋まで戻る。

実のことを言うと、そんなことをされなくても大丈夫なんだが、せっかくの行為だし、受け取っておく。

「はあ。何があったのよ。廊下で倒れて、しかもなんか変な方法で回復? するし。」

「僕もよくはわからないけど、心臓を狙った矢で刺されたのは覚えてるよ。」

「え? なんで?」

「わからないよ。」

実際にはだれっていうのは大体もう分かってるんだけどな。

まあ、よっぽどのことがない限り(これでもよっぽどなんだが。)、放置しようと思う。

「まあ、生きててよかったじゃないですか。」

「そうだね。」

そういえば、刺されたときに何かが抜けるような、切り離された感覚があったけど、何だったんだろう。

(えっと、まあ、ただの勘違いなんじゃない?)

そんなもんだろうか。

まあ、瑠璃が言ってるんだったら、そうなんだろうな。

可視モードでOSモードからカメラを確認する。

OSモードでは、俺の目がカメラの役割をしているから、目を閉じていたら、声しか聞こえなくなる。

あ、やっぱり目を閉じている。

音声だけを聞く。

『そう、だ、ね......?』

『え......?』

レインとフランが倒れた旬燐を見る。

『ね、ねえ。死んでるの......?』

『え? わからないですよ。』

『だ、誰かー!! 旬燐さんが! 旬燐さんが!!』

『誰か来てください! 旬燐さんが倒れてます!!』

『ザーーー』

あれ?

なんでノイズがかかってるんだろう。

しかも、突然。

聞こえないな。

(この間に何があったの?)

(それは神界のおきてで言えないかな。)

(わかった)

もしかして、それのせいでノイズがかかってるのかもな。

まあ、神界のおきてなら仕方ないな。

「旬燐。」


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