ノベル16
友
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~第ⅩⅥ話 騒動~
「この黒印は一体…。」
左腕に浮き出た不気味な黒印。
…アリスなら何か知ってるはず。
ベッドから飛び出し、扉に体当たりをして部屋から駆けだした。
「アリスッ!!いるなら返事をしろ!!」
走りながら叫んだ。
返答は…無い。
「飛沫、どうかしたのか?」
お嬢様に声をかけられた。
「あのさ…アリスはいる?」
「アリスはもう帰ったけど…何かあったのか?」
…きっと左腕の黒印のことは言ってはいけないだろう。
「いや…特になにも。訓練ありがとう、って言いたかっただけ。」
「分かった、今度言っとく。それより夜食を作って!」
腹をさすりながら言う。
「…はいはい。」
エプロンを棚から出してキッチンに向かった。
「食器洗い終了、っと。」
最後の皿を乾燥機に入れる。
「さてと…ちょうどお嬢様と風呂が交換される時間だな。」
風呂場へ足を運んだ。
「ふぁぁぁ~…。」
雫は風呂場で大きなあくびをした。
目に涙が溜まっている。
「あぁ~、そろそろ交換の時間かな。」
目をこすりながら、立ち上がる。
風呂から上がるその時。
ガラガラ…
「-!?」
風呂場の扉が開く音がした。
ここの屋敷の風呂は公共施設並みの広さである。
風呂の真ん中にある岩に雫は身を隠した。
「(なになに、このベタなフラグ!?ていうか誰が…!!)」
ひた、ひた…
足音が小さく聞こえる。
それが徐々に大きくなっていく。その足音はまさしく死んだ人の足取りで、こち
らを血眼で探しているようだ。
「(ホラー風に言わなくて良いからっ!)」
「お嬢様ー?」
「(なっ-!?)」
それはまさしく死んだはずの執事の声で…
「(飛沫は生きてるよっ!!)」
飛沫の声が響いた。
「(どうして私がいるのが分かってるのに入って…まさかっ!?私とあんなことやこ
んなことを!?えっ、そんなことさえもぉー!?)」
まったく落ち着かない雫。
男は皆、狼。
よく聞く言葉だ。
「お嬢様、いますかー?」
「!!」
妄想中、いきなりの飛沫の声に驚き足を滑らせる。
水が跳ねる音が響く。
「あっ、やっぱりいましたか。」
「(ヤバイ…!!)」
まさかの墓穴掘り。
「(このまま私は捕らえられ、あんなことをー…!?)」
妄想がピークに達する。
顔は真っ赤、視線は下を向いている。
「お嬢様、長く浸かりすぎです。」
「はい…って、えっ?」
「のぼせないように気を付けて下さいね。それでは。」
ガラガラ…
「……えっ?」
やるせない気持ちが込み上げる。
「(健全!ド健全だ!今時の高校生だったら何かあっても良いんじゃないの!?)」
…って考えた自分にまた赤くなった。
「あぁ…上がろ…。」
立ち上がった瞬間、景色がもうろうとした。
「あ…れ?」
そのまま水中にいる映像が流れ、暗闇となった。
「……あれ…?」
雫がいたのは自分の部屋のベッドの中。
「夢だったのかな…?」
起き上がり、頬をつねる。
「…痛い。」
今いるのは夢じゃないらしい。
リアル過ぎる夢の可能性もあるが。
部屋を出て、辺りを見回す。
「あっ、お嬢様。」
後ろから声がかかる。
「飛沫…。どうやら私は怖過ぎる夢を見たようだ…。それはもう恐ろしくって…
」
「それって風呂で溺れる?」
凍てつく波動。空気が凍った。
「ななな…なんで飛沫が…?」
「それ、現実です。」
「たた、助けたのは誰…?」
後から後悔するような禁句を言ってしまった。
「俺ですけど。」
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!夢だ夢だ夢だぁぁぁー!!!!」
即効で部屋に戻り、鍵をする。
「あぁ、大丈夫です。俺には凄い看護スキルがあって、目を閉じながら助けまし
たから。」
「それでも嫌ぁぁぁぁ!!飛沫のバカぁぁぁっ!!」
「別に泣かなくても…。」
「泣くわボケ茄子!!」
こうして騒がしい夜は更けていった。
- novel 16 end -
友
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犬
2回も言わんでいい!!