ノベル9
友の一言
題名のwater(s)には色々かけてます。
waterに複数形はありませんが、時雨と雫、どちらも水が関係する名前なんですよ
。
だからwaters=主人公とお嬢様という意味で、複数形なんです。
犬の一言
こ、今回はまじめだな…。おさらいまでもがないとは…
~第Ⅸ話 water(s)~
時雨-秋の末から冬の初め頃に、降ったりやんだりする雨。
そして俺の名前。
俺は冬の初めに生まれた。
だからこの名がついたらしい。
…懐かしいな。
昔の俺は嫌われていた。
両親は博打に手を染めていたからな。
博打ってのはいわゆる賭け事だ。
仲間外れにされたり、非道扱いされたり。
自分を傷つけた言葉は、相手にとってはどうでもいいことの時がある。
事実は人によって重みが違うんだからな。
俺は両親が嫌いだった。
大嫌いだった。
-消えてしまえば良いのに。
そう本気で思った。
そう思ってしまうんだから仕方が無かったんだ。
時雨降る夜。
俺は両親を殺した。
両親の悲鳴によって近所の人に通報され、幼かった俺は身体拘束された。
俺が親を殺した時の瞳は雨のように蒼くなっていたという。
-その後、俺は児童養護施設に連れていかれた。
ここでの生活もつまらなかった。
俺には生きる目的が無い。
どうして生きているのか分からない。
いつも空高くにある太陽。
太陽は嫌いだ。いつも俺達を見下す。
雲で隠されてしまえば良いのに。
一面真っ黒の世界に墜ちれば良いのに。
でも太陽は俺の側にもいる。
いつも俺の中の雲を切り払う。
直接見えるくらいの優しい光を放っている太陽。
雲で隠されてしまったら俺が切り払う。
-お嬢様…。
「飛沫!!返事をしろ!!」
雨が強く降る。
ここは別空間。男が作ったもう一つの世界。
存在するのは男を合わせて三人だけ。
「…反射神経のいい少年だ。」
男は雫に近寄る。
「お前…何が目的だ。」
雫は静かにそう言った。
顔はずっと下を…飛沫を見ている。
「私はただあなたに死んで欲しいだけだ。その力、私達には邪魔だからな。」
銃を雫に向ける。
「さよなら、水の巫女-」
「その銃をどけろ」
…体が痛い。どこを撃たれたんだ、俺は。
が、そんなこと言ってる場合じゃない。
太陽が…消えそうなんだ。
「…その銃をお嬢様からどけろ。」
痛む体を起こし、男を見る。
「飛沫、大丈夫か!?良かった…。」
「…涙出てるぞ、お前。」
お嬢様の戸惑う顔を見て確信した。
この太陽を消してはならない。
守ってやりたい。
ずっと、俺の近くにいてほしい。
俺が生きる理由は-この人だ。
「…雨だ。涙じゃない。」
「はいはい、分かりました。」
俺もポケットから銃を出す。
「よく生きてたな。」
男が口を開く。
「うるせぇよ。」
雨の強さが増す。
「…悪いけど、お前を許さない。」
俺の目が蒼くなるのを感じた。
あの時のように。
「水の使者だったか…。」
男も銃を構える。
「こいつも厄介だな。」
「お嬢様、逃げてもらえませんか?」
「嫌だ、断る。」
「…死ぬかもしれませんよ?」
「大丈夫だ、お前も私も死なない。」
男が銃を撃ってきた。
それを右に避ける。
その後こちらも数発撃ち込んだ。
当たり前のように避けられる。
「どうする、このまま長期戦に持ち込んでもお前の体力が奪われるだけだぞ。」
お嬢様が小さく言う。
確かに傷口が痛む。
左肩をやられたらしく、動かない。
「…地の利はこっちにあるけどな。」
「…分かってたのか。」
雨が強く降っている。
水の使者、か。
俺はいったい何者なんだ?
そして…お嬢様もだ。
「飛沫、いくぞ!」
何がいくのか知らないが、一応返事をした。
お嬢様が何かを詠唱しだす。
「あれをやるのか…水の巫女は…。
ふっ…面白い。」
男が呟く。
俺の足下に蒼く光る大きな魔方陣が浮かび上がった。
「なんだよ、コレ!?」
「飛沫に私の力を一時的に託す。
まぁいわゆる同化だな。」
「そんなこと出来るのかよ!?」
「普通は性質が違ったり、心が通じてなければ出来ない。
安心しろ、私達は水の性質だ。分かっている。」
「心は通じてんのかよ!?」
「質問が多い奴だな、まったく。」
当たり前だろ。
この状況、さっぱり分からない。
「お前は今、何を思ってる?」
俺が思ってること?
そんなこと決まってる。
「…お嬢様を守りたい。」
やさしそうな笑い声が一瞬聞こえた。
「ありがとう、そう言ってくれると信じてた。」
「…まさか失敗するかもしれないのに同化みたいなことをする気だったのか?」
「そうだ。」
呆れた。失敗したらどうなるかはあえて聞かない。
「私も…お前を守りたいんだ。」
俺は気付いた。
俺も…誰かに守られる。
一人孤独では無いことを。
こいつがすぐそばにいるということを。
「うわっ-!!」
魔方陣から水しぶきが強く上がる。
…霧が晴れる。
魔方陣の中心に立っている男の瞳は先程よりも青空のように蒼くなっている。
「お嬢様は…?」
私はちゃんとお前の中にいる。
どこからか聞こえた。
「良かった。」
「素晴らしい。同化することが出来ましたか、巫女殿。」
男が拍手をした。
巫女ってなんだ…?
「…詳しく後で聞かせて貰おうか、お嬢様。」
「……あぁ…。後でな。」
「お前、名前はなんだ?」
俺は男に言った。
「聞くのが遅いな。待ちくたびれてたよ。」
確かに聞くのを忘れてた。
「暁 焔 (アカツキ ホムラ)だ。」
名前からして、絶対火属性。もう分かる。
「ここからが本番だな。手は抜かない。」
俺は銃を焔に向け、言葉を発した。
~ novel 09 end ~
友の一言
ふはは、まだ続きますw
犬の一言
前書きと後書きのギャップが…
追記の追記:再開したようにも見えますが、これは、俺が昔、この友人からメール文として、送ってきたものを軽く再編集したものです。ですので、おさらいが存在しませんが、ご了承願います。
友人のほうは、現在続きを熱筆中とのことです。