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〈改稿版〉人間不信の俺が恋なんてできるわけがない  作者: 柚希乃愁
第八章 文化祭

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第72話 文化祭の準備、そしてカウントダウンが始まった

文化祭編スタートです。

 体育祭が終わってからというもの、光ヶ峰高校では学年を問わず、一つのことについて様々な噂が囁かれていた。

 それは白月雪愛という女子生徒のこと。

 すなわち。

 あの白月雪愛に彼氏ができた。

 その相手は陰キャのクラスメイトでとてもじゃないけど釣り合っていない。

 どうしてあんなのと付き合っているのか。

 今まで告白を断ってきた相手の中にもっといい男はいただろうに。

 白月雪愛は趣味が悪い。

 あんな男と付き合うだなんて幻滅だ。

 今まで告白したやつが可哀そうだ。

 あんな男が好みだから、これまで誰とも付き合わなかったのか。


 これらは噂の一部だ。

 実際はもっと色々と言われている。

 だが、どれも言いたいことは同じだった。


 こうした噂は、当初本人達の耳に届かないところで言われていた。

 いや、噂というよりも陰口と言った方がいいかもしれない。


 それほど生徒達にとっては、白月雪愛に彼氏ができたこと、相手が風見春陽という男子生徒であること、そしてそれを体育祭中に全校生徒の前で言ったこと、すべてが衝撃的だったのだろう。


 けれど、人というのは慣れていくものだ。

 最初は陰でこそこそと言っていたものが、次第に当人にもわかるように言うようになり、そして当人に対して直接言うようになるまでそれほど多くの時間はかからなかった。



 実は体育祭翌日にこんなこともあった。

 体育祭の日の朝、雪愛に付き合っているのかと聞いてきた女子生徒三人が、バツの悪そうな顔をして、雪愛に謝ってきたのだ。

 それは、付き合っているのが春陽の方だったため、勘違いしてごめんなさい、という内容だった。

 その顔には多分にどうしてそっち?という感情が浮かんではいたが、春陽に対して否定的なことを言ってしまったことは申し訳なく思っており、すぐにでも謝罪したかったそうだ。雪愛は大丈夫だから気にしないで、と彼女達の謝罪を受け入れた。彼女達がどう思っているかは雪愛にもわかったが、何も言わなかった。自分達と親しい友人がわかってくれていればそれでいいと思っていたから。

 他のクラスメイト達は、体育祭の昼休みのときに雪愛がはっきりと春陽と付き合っていること、春陽のことが好きだと肯定したのを聞いていたため、雪愛に直接春陽との関係について尋ねる者はもういなかった。

 ただし、他の生徒達同様、本人のいないところでは同じように陰口を言っている者はいた。


 そんな中でも、体育祭を終えた今、生徒達は次のイベントである文化祭の準備を進めていた。

 春陽たちのクラスでもそれは同じだ。

 春陽たちのクラスの出し物はコスプレ喫茶。

 体育祭後、翌週のロングホームルームで、そのコスプレ内容が決まり、クラスメイト各々の役割分担も決まった。


 だが、ここで春陽にとって一つ想定外のことが起こった。


 コスプレはクラスメイト全員がすることになったのだ。

 これはコスプレを避けたいがために裏方に徹する人を出さないようにするため、と表向きの理由は言われていたが、そう言いだしたのが男子達という時点で別の思惑が透けて見えてくる。

 つまり、なるべく女子にコスプレをしてほしいということだ。

 それに、雪愛に彼氏ができたことはわかったが、それとこれとは別、という思いもありそうだ。

 春陽は本気でコスプレなんてするつもりはなかったため、この提案が通ったとき、愕然としていた。


 そんな春陽の心情とは関係なく、役割分担は順調に決まった。

 衣装は手芸部の生徒がリーダーとなり、メニューに関しては調理部の生徒がリーダーとなった。

 部活動が盛んな光ヶ峰高校らしく、それぞれの役割に適任のリーダーを選出できた。

 衣装は体格が近い人でペアを組み、着回しすることに決まったが、それでもそれなりの数を揃えなければならないため、衣装担当は大変そうだ。

 ちなみに、春陽は悠介と、雪愛は瑞穂とペアになっている。


 そして、春陽は内装や装飾の担当となった。

 というよりも、男子は皆この担当だ。

 加えて、買い出しの荷物持ちなども行うことになる。

 雑用係も兼任というところだろうか。

 この内装・装飾のリーダーは、クラス委員の葵が務めることになった。


 雪愛はメニュー担当だ。

 これは、料理やお菓子作りが得意な人をメニュー担当にと調理部のリーダーが募ったためだ。


 こうして、放課後はそれぞれ担当ごとに分かれ、作業が行われることになった。


 そんな風にして文化祭の準備をする日々が続いたある日。

 春陽はとうとう陰口を耳にしてしまった。

「ほら、あいつだろ?白月さんと付き合ってるっていう男」

「ああ。でもなんであんなやつと付き合ってるんだ?」

「な。あんな陰キャいいところなんてないだろ。あんなやつでいいなら俺らにもワンチャンあったかもしれないよな」

「本当だぜ。今からでも告ったらうまくいったりしねえかな」

 男子生徒二人が春陽を見かけ、わざと聞こえるように言っているのか、春陽を貶していたのだ。


 春陽はそれを聞いても、怒ることはなかった。

 こういう輩に対し、いちいち反論しても意味がないことはよくわかっている。むしろ反論は火に油を注ぐだけだ。

 それは幼少期に静香相手に学んでしまったことだった。こんなこと程度で心がざわつくということもない。

 これが雪愛を直接悪く言っていたりすれば違っていたかもしれないが、春陽は自分のことを悪く言っていると受け取った。

 だから春陽は無視することを選んだ。


 こうした態度が相手をさらにつけ上がらせることになるのだが、中学のバスケ部でも春陽はこうだったのだ。

 そういうところは変わっていなかった。


 だが、これは春陽だけでは当然なかった。

 春陽が聞こえるように言われて間もなく、雪愛の耳にも届いてしまったのだ。

「白月雪愛の人気もこれでお終いだね」

「ほんと。高嶺の花気取りだったのが、結局付き合い始めたのがあれじゃあね。ちょっと幻滅かな」

「告られても全部振ってたのは単に男の趣味が悪かっただけっていうね」

 雪愛が自分の名前が聞こえてそちらに目を遣ると、女子生徒二人が雪愛のことを蔑むように笑いながら見ており、そのまま会話を続けたのだ。


 聞こえた会話に雪愛は怒りを覚えた。

 自分が悪く言われたからではない。

 男の趣味が悪い、つまり春陽を悪く言われたと受け取ったからだ。

 けれど同時に、春陽がそう言われるのは自分のせいだという思いもあった。

 この女子生徒二人が自分への悪口として春陽のことを言っているに過ぎないと正確に理解してしまったからだ。


 雪愛は雪愛で、人付き合いにはそれなりに苦労してきた。

 中学の頃から自分の思いとは裏腹に男子にモテてしまっていたため、同性の中にはそれをあまりよく思わない人もいたのだ。

 親しくなる女子生徒もたくさんいたため、友人に困ったことはないし、気にしないようにしてきたが、そうした人達が陰口を言っているのを聞いたことは以前にもあり、この女子生徒二人のことも雪愛はその類の人だろうと思った。

 こういう人は言葉を交わしても表面上取り繕うだけで、陰口は言い続ける。

 自分をよく思っていない相手に何を言っても仕方がないのだ。


 だから雪愛は、春陽を悪く言われたことに悔しさを感じながらも、言い返すことはしなかった。


 そして春陽も雪愛も互いに相手に心配をかけたくないという思いから、聞いてしまった陰口のことを相手に話すことはなかった。


 ただ、一度気づいてしまえば、自分たちのことを言われているということにはすぐに気づくようになる。

 互いに一人でいるときは二人とも無視するようにしていたが、登下校の際、昇降口と教室の間の廊下を二人で歩いているときにも聞こえるように言われることがあった。

 初めて二人でいるときに雪愛が悪く言われた際、春陽は咄嗟に言い返そうとした。

 自分のことなら無視するだけだが、雪愛が悪く言われることは我慢できなかったからだ。

 だが、そんな春陽の腕を雪愛が掴んで止めた。

「春陽くん、私は大丈夫だから。気にせず行こ?」

「……雪愛?」

「ね?」

 そう言って笑みを浮かべてみせる。

 雪愛に止められてしまい、春陽の勢いは削がれ、何も言えなくなってしまった。二人はお互いが周囲から色々言われていることをこのとき初めて知った。


 また、二人でいるときに、春陽が悪く言われた際には、春陽が気にするなと雪愛に言うので、雪愛もうん、と頷くしかなかった。


 春陽も雪愛も何とかしたいと思っているが、どうすればいいかがわからなかった。いちいち相手になんてしていられない。何百人も生徒がいる中、たった一組カップルができただけだ。きっと周囲の関心も長続きはしない。時間が解決してくれるだろうと考えた。

 だから二人は何を言われても気にしないようにして、いつも通りの二人の時間を過ごすようにしたのだった。


 そして、とうとう雪愛が瑞穂達といるとき、春陽が悠介達といるときにも聞こえる声で言われるようになった。

 それは、今まで瑞穂達や悠介達の前では言わないようにしていたのに、彼らの前でも関係なく言うほど、言い慣れてしまっていることを意味していた。

 そのときは瑞穂達、悠介達が雪愛、春陽のことを話している生徒達に対して、止めるように言ったが、その生徒達は冗談だと、本気にするなと言って、流して終わってしまった。

 雪愛も春陽も友人達にお礼を言ったが、彼らは憤っていた。

 友人達はこのとき初めて春陽と雪愛が心無い言葉を言われていることを知ったのだ。

 どうして二人がそんなことを言われなければならないのだ。

 好きな相手と付き合っている、ただそれだけだというのに。

 言われている内容が春陽を貶し、雪愛を悪趣味というものなのも腹立たしかった。

 いったい春陽の何を知っているというのか。

 雪愛の想いの何を知っているというのか。

 二人が気にしなくていいから、と言うのも彼らはもどかしく思った。


 文化祭まで一週間を切ったこの日。

 ついに男子生徒二人が雪愛に直接言葉をぶつけてきた。

「なあ、白月さん、風見なんかと付き合うくらいなら俺と付き合ってよ?」

「おおそれいいな。けどこいつじゃなくてさ、俺とじゃダメ?」

 二人とも冗談なのか何なのか、ニヤニヤとした笑みを浮かべている。彼氏がいるとわかっている女子に対して普通の感覚ならこんなことは言えないだろう。冗談になんてなっていない。だが、相手が春陽ということが彼らの気を変な風に大きくしていた。

「…………」

 雪愛の表情は険しかった。怒りが沸々と湧いてくる。こんなことを彼らのような人間に言われることが悔しい。

「そんな顔しないでさ。試しでいいから。絶対俺の方があいつよりいいと思うんだよ」

「いや、それを言うなら俺の方がいいと思う!試すなら俺とぜひ!」

「……嫌です」

 雪愛は嫌悪感を隠すことなく二人に向かって言った。

 そこに男子達の声が聞こえていたのか、瑞穂が血相を変えて飛び込んできた。

「あんたたち、やめなよ!雪愛は風見と付き合ってるの!あんたたちみたいなのと雪愛なんてありえないから!」

 瑞穂の乱入で少しやり取りがあったが、男子生徒二人は文句を言いながら去っていった。

「ごめんね、瑞穂。ありがとう」

「そんなこといいよ。それより雪愛大丈夫?」

 瑞穂は心配そうに眉を下げている。

「ええ。私は大丈夫」

 そう言って浮かべた雪愛の笑みが瑞穂には弱弱しく映った。

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