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〈改稿版〉人間不信の俺が恋なんてできるわけがない  作者: 柚希乃愁
第六章 体育祭

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第60話 自分の気持ちに正直な彼女達

 続いては、二人三脚だ。

 和樹と瑞穂、隆弥と未来のペアが出場する。

 待機場所での雰囲気を見る限り、他の出場選手も多くが仲の良い男女かカップルの組み合わせのようだ。体育祭の賑やかさで浮かれているのか、冷やかしの声援が多くなっている。中には思い切り僻んでいる生徒もいるようだが、そちらは少数派だ。

 そしてこれもただの二人三脚ではなかった。

 折り返し地点が設置され、そこで、二人が協力して体だけで風船を割らなければならないルールだった。

 今年の実行委員は色々と悪ノリしている。

 和樹と瑞穂は、息の合った走りで順調にきていたが、風船割りが問題だった。

「ち、ちょっと和樹。くっつき過ぎじゃない!?」

 顔を赤くし、声が若干ひっくり返っている。

「いや、こうしないと割れないだろ?」

 和樹は瑞穂の肩に手を置き、自分の方に引き寄せるように力を入れる。衆人の前でと考えるとちょっと恥ずかしいが、していること自体はそこまで照れるようなものではない。

「そうだけど!で、でも……」

 だが、瑞穂がそれに逆らって離れようとするため、風船に圧力がかからない。

 結果、瑞穂がこの風船割りをすごく照れてしまい、中々割ることができず、五組中四着となった。

 中には背中合わせになり、風船を割っているペアもおり、瑞穂にとってはそちらの方がよかったかもしれない。

 やっているときには、思いつかず、周囲を見る余裕もなかったので、どうしようもなかったのだが。


 隆弥と未来は、逆に隆弥が照れてしまっていたが、走りでも風船割りでも未来がやる気に満ちていて、隆弥をリードしていた。

「隆弥っち、もっとぎゅーってしないと割れないよー?」

「う、うん。それはわかってるんだけど」

「それじゃあ隆弥っちもー。ほら、ぎゅー!」

「ぎゅ、ぎゅー」

 顔を赤くしながらも未来の声に合わせる隆弥。

 未来だって恥ずかしくない訳ではない。頬を染めながらも、あくまで競技だと自分に言い聞かせ、思いっきり隆弥の背に腕を回し、風船が割れたときには完全に抱き合う体勢になっていた。

 未来のこうした積極性のおかげで、未来達のペアは見事一着でゴールした。

 未来は本当に嬉しそうで、そんな未来の様子に隆弥も笑顔になっていた。


 二人三脚を皆で応援していた雪愛と香奈は、瑞穂の照れっぷりに苦笑しながらお疲れさまと拍手を送り、未来の積極的な姿に驚いたが、未来の楽しそうな様子に、二人も笑顔になり、拍手を送った。

 春陽達は、和樹の困った様子や隆弥の顔を赤くしてあたふたしている様子に笑いながらも声援を送っていた。

 その後、女子全員参加の玉入れが行われ、次が午前中最後の種目である借り物競争だ。

 雪愛と香奈が待機場所に着くと、そこには詩那もいた。

「あ、詩那ちゃん」

「?雪愛先輩」

 雪愛が呼ぶ声に詩那が反応し、雪愛達の方を向く。

 お互い名前で呼ぶようになったようだ。

「詩那ちゃんも借り物競争に出るのね。それに同じ白組だったなんて。頑張りましょう」

 詩那も雪愛達と同じく白いハチマキをしていた。

「はい。そうですね」

 そこで、初対面の香奈が雪愛に詩那のことを聞いた。

 簡単に互いを紹介する雪愛。

「詩那~。何してるの~?」

 そこに詩那を呼ぶ声がした。

「ごめん!すぐ行くから!」

 詩那は友達と一緒だったようだ。雪愛が引き留めてしまったことを謝罪し、詩那は友達のところへと行った。


 競技が始まる前に、放送部から注意事項が告げられた。

「今回の借り物競争では、選んだお題がどうしても難しい場合、救済措置として、コースを一周走ればもう一度お題の紙を選び直せるというルールになっています。ですが、その場合遅れることは必至。ぜひ皆様、最初に手にしたお題のクリアを目指しましょう!」


 そんなアナウンスをされれば、一体どんなお題が用意されているのかと不安になるというもの。

「どんなお題があるんだろうね?」

 香奈が少し不安そうに雪愛に聞く。

「わからないけど、この種目でも実行委員は楽しんでるみたいね」

 雪愛は苦笑しながら香奈に答えた。


 一組目がスタートした。

 皆一斉にお題の書かれた紙を取る。

 お題を見た者はすぐに該当するものを探しに行った。

 そんな中、一人、お題を見た瞬間から動揺している女子生徒がいた。

 クラスTシャツから彼女が一年生だとわかる。

 周囲を見回しては、お題を見てを繰り返し、どうしようかと迷っている様子だ。

 応援している生徒達は早速難題が当たったのかと、頑張れーと声援を送っている。


 春陽達のいるところでは、和樹が件の女子生徒を心配していた。春陽が気づいて訊いてみるとどうやら彼女はサッカー部のマネージャーらしい。

 すると、その女子生徒が意を決したように、走り出した。向かってきたのは春陽達のクラスが集まっている場所だった。

「新条先輩!一緒に来てもらえますか?」

「俺?あ、ああ、わかった」

 和樹がすぐに立ち上がり、女子生徒のもとへ行く。彼女はそこで、瑞穂に向かって一度勢いよく頭を下げた。そのまま二人は三着でゴールし、ゴール地点にいる実行委員にお題の紙を渡すとその内容を読み上げた。

「それではお題を確認します!えーと、お題は、『同級生以外で可愛い(カッコいい)と思う異性』ですね!確かにイケメンですねー!合格です!」

 どうやらそういうことらしい。

 この実行委員はお題はお題として、そこから何でもかんでも恋愛的な方向に話をもっていくつもりはないようだ。

 彼女は何度も和樹に頭を下げており、和樹がそれを宥めている。春陽が瑞穂をチラリと見ると、瑞穂は少し頬を膨らませていた。瑞穂の隣では未来が宥めている。

 瑞穂からすれば、こういうのも嫌なのかな、と春陽は思う。

 けれど、先ほどの彼女は瑞穂に一度頭を下げていた。まるですみませんと謝るみたいに。

 付き合ってることを秘密にしている二人だ。

 ということは、さっきの二人三脚で何かを感じ取ったのかもしれない。

 雪愛は瑞穂が和樹を誘って二人三脚に出ることに随分と驚いていた。

 自分も春陽と出たかったと言われたときは、返す言葉に困ってしまったが。

 瑞穂なりに和樹との関係をオープンにしようとしている、とも言っていた。

 本当にそうだとすれば、今の後輩女子の態度からも二人で出場したあれは効果があったということだろう。

 和樹も瑞穂に誘われて、驚いてはいたが嬉しそうだった。

 春陽がそんなことを考えていると、悠介が春陽の肩に手を置いてきた。

「なんか変わったよな、和樹と芝田。やっぱ好き同士、付き合ってるなら人の目なんか気にしないで好きにするのが一番だよ」

 瑞穂の方を見て言う悠介の言葉に春陽は目を大きくする。

「お前……気づいてたのか?」

「ん?まあ、確信があった訳じゃないけどな。さっきの見てたらさすがにわかるさ」

 相変わらず人のことをよく見ている悠介に春陽は呆れ顔になる。

「はぁ…お前のそういうとこ本当変わらないな。けど、そうだな……俺もそう思う」

「だろ?」

 春陽の言葉に悠介は笑みを浮かべる。そして、春陽と悠介は笑い合った。


 詩那は、待機場所で『同級生以外で可愛い(カッコいい)と思う異性』というお題を聞いて、自分なら誰を、と考えていた。


 実は、悠介が出場した百メートル走を同じ白組ということで、詩那は気兼ねすることなく応援できた。悠介が一位になったときも白組の勝ちということで喜んでいたのだが、隣にいた友人から呆れたようにツッコまれてしまった。クラスメイトが出てるときはクラスメイトの応援してあげようよ、と。どうやら悠介と同じ組でクラスメイトの男子生徒が走っていたらしい。クラスメイトのことは完全に意識の外で、悠介のことしか見えていなかった詩那はすごく恥ずかしくて頬を赤らめてしまった。そんな詩那の態度に、友人は呆れた表情をニヤニヤとしたものに変えた。

「あの人って一コ上の先輩だよね?」

「う、うん、そうだね」

「ふ~ん、詩那はああいう人がタイプなんだ?」

「ち、ちがっ。別にそんなんじゃ」

「え~。そうなの?それにしては熱心に応援してたみたいだけど?」

「それは、知ってる先輩だったからで……」

 この後もしばらく友人の攻勢は続き、詩那は終始タジタジになってしまった。

 そんな風に突発的に始まった友人との悠介についての会話も影響していたかもしれない。


(私なら……佐伯先輩にお願いしたいな)

 考えた瞬間、詩那は頬を染めてしまい、頭を振ってその考えを追い出すのだった。


 次は香奈の出番だった。

 これまで、各組で最低一人は戸惑っている者がいる。

 だが、皆体育祭というお祭りでテンションが上がっているからか、未だ救済措置を使う者はいなかった。

 香奈は、お題の紙を手に取り確認すると、簡単なお題だったのか、迷うことなく一目散に走り出した。

 先ほどの女子生徒と同じく、また春陽達の方へと向かってくる。

「高橋君、私と一緒に来てくれるかな?」

 蒼真の前まで行くと、香奈は胸元で両手を組むようにして蒼真の目を見て言った。

「え、あ、ああ。わかった」

 まさか自分が呼ばれるなんて思ってもいなかった蒼真は戸惑いの表情を浮かべたが、これは競争だ。

 蒼真は慌てて立ち上がる。

 お題のものを探す時間もなく、最短で蒼真を連れてゴールした香奈は、見事一着となった。

 ゴール地点にいる実行委員が香奈からお題の紙を受け取るとその内容を読み上げた。

「それではお題を確認します!お題は、『頼りになる人』です!それではお聞きします!お連れした方のどんなところが頼りになるんでしょうか!?」

 見た目でわからないお題には実行委員がこうして走者に対して聞いてくる。

「えっと、あの、私が勉強で悩んでるときに、話を聞いてくれて、それで、勉強を教えてくれるようになって。それがすごく嬉しくて……」

 頬を染めながらも一生懸命に話す香奈。

「おー!それは確かに頼りになりますねー!二年のこの時期ってだんだん進路のこと考えるようになって悩むんですよねー。同級生に教えられるなんて頭のいい人なんですね!それに教えてくれる優しさもあると!ありがとうございました!もちろん合格です!」

 去年自分も悩んだのか、実行委員の人の言葉に実感がこもっていた。

 香奈の言葉に、蒼真は照れているのを隠そうとしているようだが、顔は赤くなっていた。

 ゴール地点で待機しているときのこと。

「高橋君、急にごめんね。ありがとう」

「いや、驚きはしたけど、別に……」

「お題を見たときにね、高橋君がすぐに思い浮かんだの。予備校で、話聞いてくれて。それから何度も勉強教えてくれて。すごく嬉しかったから」

「そんな大したことできてないと思うんだけどな。それに、遠野に説明するのは俺にとっても理解を深めることに繋がってるから」

「ううん。私にとっては大したこと、なんだよ。……それでね、もし本当に迷惑じゃなかったらなんだけど、これからもずっと、受験まで、一緒に勉強させてもらえないかな?」

 香奈の手に力がこもっている。

「ああ、それくらい構わない。同じ大学目指してる仲間だしな」

「っ、ありがとう!」

 蒼真の答えに、香奈は満面の笑みを浮かべるのだった。

 その笑顔に蒼真は一瞬目を奪われた。いつも大人しい香奈のこんな笑顔は初めて見た。それにとても可愛かったのだ。

 自分が女子を可愛い、なんて思ったことに、自分で驚く。

 高校生になっても勉強ばかりしてきた蒼真は、特にカッコいい訳でもなく、運動ができる訳でもない自分には色恋沙汰なんて無縁だと思っていた。

 実際、誰かを好きになったことはない。それなのに、今は自分の心臓の音が煩いくらい高鳴っている。

 それは蒼真にとって初めての経験だったが、悪くないと感じるのだった。


 瑞穂達は香奈の大胆な行動に驚いたが、よくよく考えれば、瑞穂も、未来も、自分自身結構大胆な行動をしていると思い直した。

 恋が恋を呼んでいる、という訳ではないだろうが、最近一緒にいることの多かった四人だ。

 当然色々な話をしていた。もちろん、恋バナも。

 話すことで、気持ちも盛り上がっていったのか、彼女達は今、自分の気持ちに正直になっていた。


 そして、最後の組、雪愛の出番がやってきた。


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