小説制作開始
【私の先輩。】、【私の親友。】、【私の恋人。】の完結編です。
私の恋愛対象は女性だ。私の体と心も女性だ。私は同性愛者だ。そんな、私を受け入れてくれた人が二人居る。一人はミチル。ミチルには二回告白している。しかも同じ日に数分以内に二回だ。一回目は振られたが、直後の私の強引なアプローチのおかげでミチルに心境の変化があったらしく、私はその変化を見逃さず二回目の告白をした。そして、今は私の恋人だ。
もう一人、こんな私を受け入れてくれてるのが先輩だ。いま思えば先輩は私の初恋かもしれない。ミチルと出会うより前に先輩にも告白している。だけど、これは完全に振られた。でも、今はそれでよかったと思ってる。だって、先輩は私を親友と呼び、それは告白後も変わらず同じ立ち位置で私に接してくれる。そのおかげで私はミチルに告白する勇気が出た。
そして、私は先輩にミチルを紹介するついでに私が本当に同性愛者である事を突きつけた。それでも先輩の立ち位置は変わらなかった。私はこの先も進めそうだ。
「失恋した私の前でイチャイチャしてくれちゃって。サキ、あんたじゃなかったら、今すぐに追い出してる所よ」
「えへへ、イチャイチャだなんて………え!先輩、失恋したんですか!?」
先輩が失恋……そもそも先輩に好きな人が居るなんて初めて聞いた。私の事を親友って呼んでくれるのに……
「なんで私に相談してくれなかったんですか!」
「仕方ないでしょ。いきなり、ヨータが家に来て彼女を紹介したのよ」
つまり、告白する事なく失恋したって事か。それにヨータ? 誰だろう。
「ていうか、その人は男ですよね?わざわざ彼女を紹介に先輩に会いに来るなんて、性格がネジ曲がってます!そのヨータって人はどこに居るんですか?私が説教します!」
「ヨータを悪く言うなら許さないわよ!あの子はわざわざ彼女を紹介しに来た律儀な子よ!」
律儀? なんで好きな人が自分に彼女を紹介したのに庇うの? そんなの普通に振られるより酷い仕打ちじゃない! そのヨータって人は悪くないかもしれないけど愚痴の一つは言ってもいいと思う。
「どこが律儀なんですか!先輩の好意に気づいてなかったとしても先輩は不満を漏らしてもいいと思います!」
「律儀よ!両親ならともかく姉の私に紹介しに来たのよ!」
あれ? 私は何か勘違いしてる? 先輩の好きなヨータって人は男性で、そのヨータって人は律儀に姉に彼女を紹介、ヨータって人は先輩の家に訪れた……………ダメだ、答えは単純そうなのに考えが纏まらない。
「先輩、そのヨータって人は何者なんですか?」
「私の……弟よ」
なんだ、弟かぁ。あれよね、兄、姉、弟、妹の弟よね。兄弟、兄妹、姉弟、姉妹………先輩は姉だから姉弟って事になるのか………
「えーーー!」
「えーーー!」
突然のカミングアウトに私は声を上げていた。隣のミチルも今日が初対面の相手のカミングアウトに声を上げる。
「ミチルさんが驚くのはわかるけど、なんであんたも驚いてるのよ?」
「だって、初めて聞きましたよ!」
いくら付き合いが長いからといっても、こんなカミングアウトに驚かない方がおかしい。
「あんたには話したはずよ。覚えてないの?」
私に話した事がある? 全然記憶にない。
「いつですか?」
「あんたが私に告白した日よ」
私が先輩に告白した日、私が先輩に振られた
日。こんな衝撃的な事を忘れるはずがない。あの日は振られた後の記憶がほとんど無い。気がつけば自宅に着いていた。たぶん、その時に話したのだろう。
「……覚えてないです」
「まぁ、そうね。あの時のあんたは感情がいっぱいいっぱいだったもんね。あーあ、覚えてないなら話すんじゃなかった」
「えへへ、つまり弟さんは私にとって恋敵って訳ですか」
「違う!サキはいま私の事が好きだから、弟さんは恋敵でもなんでもないよ!」
「へぇ、ミチルさんは思ってた以上にサキに夢中みたいね」
もしかして、今のはヤキモチってやつ? 嬉しい♪
「ミチルぅ♪さっきの続きしようか?」
「え!?……あ」
抱きつき迫るが、ミチルは抵抗する素振りはない。これはOKってこと? ホントに続き始めちゃうよ?
「ミチルさん、少しは抵抗したら?一応、私が目の前に居るんだけど?もしかして、そういう趣味?」
「はい!ミチルはそういう子なんです!」
「勝手に決めつけないでよ、サキ!」
「えへへ、冗談だよ♪」
先輩、ナイスツッコみでした。危うくホントに始めてた所だった。
「このままだとホントにあんた達のあれやこれやを見せられかねないから今日はお開きにしましょ」
「そうですね!続きは二人っきりになってからだね♪ミチル」
「………うん」
ミチルって私の事、ほとんど拒まないなぁ、今も恥ずかしがりながら頷いてくれたし。可愛い♪
「ミチルさんって、もしかしてM?」
「そうなんです!ミチルはMなんです!」
「勝手に決めつけないでってばー!」
「ごめん、ごめん。ほら、行こ♪」
「うん」
私とミチルは先輩の家を後にした。それにしても先輩が失恋かぁ、しかも相手は弟……たぶん、私以上に苦労してきたんだよね。私も世話になってるだけじゃダメだ。今度、なにか協力してあげよう。
そして、その日は私とミチルもあっさり解散した。続きがおあづけになってしまった時のミチルの顔……すごく可愛かった♪ こういう事を自分から言えないのもミチルの可愛い所。ついついイジメたくなっちゃうんだよね。
次の日、私は今日もミチルが働く喫茶店へ。昨日、おあづけにしちゃったしミチルの機嫌を取ってあげよう。
カランカラン
「ミ~チ~ルぅ♪」
「サキ!?ん、んんん!」
お店に入るなり私はミチルの唇へ一直線。
「ちょっと、サキ!」
ミチルに突き放された。やっぱり、おあづけにされた事でご機嫌斜めなんだ。
「昨日はごめ~ん。今日はホントに続きしてもいいから~」
「そうじゃなくて……」
「あ、でも、いくら店に他の客が居ないからってここで始めるのはダメだよ」
「………」
ミチルは黙りどこかを指差す。その方向を見ると一人の男性がトーストを片手に持ちフリーズしていた。ガッツリ見てる。でも、問題ない。この店に何度も来る人なんて私くらいだ。この男性ともこの先会うことはないだろう。だから、なんの問題はない。
「あ、あの店長……いまのは……」
ミチルはわなわなした様子で男性に呼びかける。てんちょう……テンチョウ………テン・チョウさんか。ミチルの知り合いっぽい、紹介してもらおう。
「ミチル、知り合い?」
「うん、この店の……店長」
私はミチルとテン・チョウさんの関係を聞きたかったのにまた名前を紹介された。しかも店のテン・チョウさん………ん? 店の……てんちょう…………店長さん!
「えーーー!この人がパチンコばっかりやってる店長さん!?」
これはヤバイ。差別や偏見でミチルがバイトをクビになるかも! そしたら居心地の良いこの場所にも来れなくなっちゃう。
「俺ね、昔は小説を書いてたりしたんだよ。それでね、運良く作品がヒットして映像化もして印税という大金を手にしてね。正直、この店なんて赤字でも問題ないのよ。パチンコだって負け続けても平気なくらい……」
なんだろう、店長さんが自分語り始めちゃった。
「長い間、小説を書く理由がなかったんだけど、いま書きたくなってきたんだよ……」
店長さんはなんの話してるんだろう。ちょっとヤバイ人なのかな? ミチルはこんな人の下で働いてるんだよね。心配になってきた。
「でも、二人を見て創作欲が湧いてきた!是非、二人をモデルに小説を書かせてくれ!」
私達をモデルに小説……つまり、映画とかでたまにある“この物語は実話に基づいた作品です”みたいなやつ。私とミチルの恋愛が文章として残るのか………
「ぜひ♪」
「イヤです!」
私は快くその申し出を受け入れたが、すぐ隣で真逆の意見が聞こえた気がした。隣の人物、ミチルの顔を見ると理解出来ないと言いたそうな顔で私を見てる。
「サキ、いまなんて言ったの?」
「『ぜひ♪』って。ミチルこそなんて言ったの?」
「『イヤです!』……って」
互いに真逆の意見である事を確認した。これはマズイ、こういうのは両者の承諾ナシには話が進まない。なんとしても説得しなきゃ。
「ミチルはなんでイヤなの?」
まずは理由だ。もし、その理由を解消できればミチルも首を縦に振ってくれるはず。
「は、恥ずかしいから」
恥ずかしいから………かぁ、解決策が思いつかない。私に関しては先輩という不動の味方が居るから恥をかこうが平気だけど、ミチルはそうはいかないよね。仕方ない、私の華麗な話術で説得しよう。
「大丈夫!私も恥ずかしいから!」
「それのどこが大丈夫なのー」
あれ? 説得失敗。私の同調、共感作戦が効かないなんて。じゃあ、次は……体を使った色仕掛けだ。
「もし、この小説が出来上がったら、とびっきりの思い出になると思うんだぁ。だから、お願ぁい」
私はミチルの手を両手で握る。これはまだ一段階目だ。ミチルが首を縦に振らなければ段階を上げていき、全部で十段階用意している。もちろん、数字が上がる度に過激度が増していく。
「……わかった」
あれ? 私の色仕掛けはまだ一段階目だよ? もしかして、私の色気ってすごいのかも
「やった♪」
「よし、決まったみたいだな!それで、二人の物語を書く上で実名で書きたいんだけど大丈夫かい?」
実名かぁ………リアリティが出ていいかも。
「喜んで♪」
「絶対ダメです!」
あれ? またミチルと意見が別れた。
「サキー、君はなんで、そんなに積極的なんだよー」
「あああああ」
ミチルに両肩を掴まれ前後に揺すられた。
「ミチル、次はなんでイヤなの?」
ミチルの腕から抜け出し尋ねた。
「だって、実名だと私達の事だとバレちゃう」
「大丈夫だよ、この世界にサキとミチルって名前の人は沢山いるんだよ!」
「それは違うよ!サキとミチルって名前の人が沢山いるのは日本だけだよ!アメリカでサキとミチルって名前の人を探したら数えられるくらいしか居ないはずだよ!」
「ミチル、なに言ってるの?」
「私もわかんない」
実名使用を阻止する為に必死なんだね。それにしても反論が真面目というか天然というか………まぁ、私は退く気はないよ。また色仕掛けでミチル攻略だ。どこまで耐えられるかな?
「ミチルぅ、おねがぁい」
まずは一段階目の手を握る攻撃。さっきはここまでしか披露できなかったから、すぐ二段階目に突入するよ。
「わかった」
えーーー! もう堕ちちゃったの? ミチルってチョロい。
実名使用も受け入れてくれた事で小説の構想に入り私は今までの私の恋愛歴を大まかに話したが店長さんは少し難しそうな顔をしていた。
店長さんが言うにはもう一人の登場人物にも話を聞きたいらしい。その人物は先輩だ。店長さん、お目が高い。先輩がいなければ、今の私は存在していない。断言できる。
という訳で早速、先輩を説得しに行き、渋々だが先輩の承諾を得た。ただし絶対条件として弟さんカップルは絶対に実名の使用は禁止。仮名だとしても本名に近い名前も禁止という条件だ。私はミチルの時のように説得しようと思ったが、先輩の雰囲気がそれを許さなかった。殺気すら感じた。いくら親友の私でも強行すれば確実に縁を切られるだろう。
先輩も小説の制作に参加する事になり必然的に店長さんと引き合わせる事になる。最初、先輩は胡散臭そうに店長さんを見ていたが、店長さんの代表作を聞いて見る目が180度変わったらしい。そんなに凄い人だったんだ。
とにかく、本格的に小説の制作が始まった。実話を小説にするという事で私達の当時の出来事や思った事などを店長さんに話す必要が出てきた。店長さんの気遣いなのか、それは店長さんと1対1で話す事になる。私達は空いてる時間に店長さんと面談をしていった。小説の完成が楽しみ♪
私の。シリーズ完結編です。文字数が2万越えそうなので、この完結編は連載という形で投稿します。(^-^; 良い作品に仕上げるよう頑張ります! それでは