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つまり、俺が彼女の夫でして  作者: 森都 めい
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38. ピクニック


「マーヤ、行ける?」

「うん、お待たせ~。

ピクニックなんて、最初の時以来だね。」



今日はマーヤと川の上流へ、涼みもかねて馬で遠乗りを計画した。

マーヤのパンツスタイルは、いつ見てもカッコいいぜ。

二人で玄関を出て、戸締り、よし。


今日も、馬一頭で二人乗りをしていく。

リアンなら、マーヤが増えるぐらいなら、二人乗りも余裕だろう。

前に二人乗りをしたときは、馬に乗ってから二人の距離感に戸惑ったが、今回はちゃんとそれも理解して一緒に行くのだ。


俺も成長したなぁ、どんなところがって? 言わせるなよ~。

いけない、いけない、変な妄想はよくない。


「大丈夫? リヒト、顔が変だけど。

はいこれ、今日のお弁当ね。」

「顔が変なのは元からだい!

あれ、弁当箱が冷たい。」

「そう、暑くなってきたから食べ物が痛んじゃうのが心配で、氷の魔法陣のカード、買ってきちゃった。

それと、リヒトはいつもの顔は変じゃないよ。」

「え?! もう一回言って!」


「・・・暑くなってきたから・・・」


「そこじゃない!」



魔石を持ち歩くのは大変なので、この世界には魔石の効力に代わる、魔法陣を描いた携帯用のカードがある。

旅や遠出の時にはすごく便利だ。

値段によって、1回だけ使用できるものや10回まで可能のものだったり、3時間や半日持続など、それぞれの属性に合わせて使用回数や持続時間で選べるようになっている。

マーヤは今回、氷属性の、3時間持続ぐらいのカードを買ってきてくれたのだろう。


「ありがとう、気が利くな、さすがマーヤ!」

「ふふふ、じゃあリヒト、あとはお願いね。」


俺は荷物を馬用のバッグに詰めてから馬にまたがり、マーヤを馬の上に上げた。

マーヤは、一人でも馬に乗れるから馬に慣れていて、こちらも安心だ。

「じゃあ、のんびりと行くか。」

川に沿って馬を歩かせていく。

スピードがあまり出ていなくても、馬の高さもあり、顔に当たる風が心地よい。


だんだん木々が多くなってきた。

山に差し掛かってきたが、北に抜ける道が続くので迷うこともない。


「夏の花は色鮮やかできれいね。 太陽にキラキラ輝いているわ。」

マーヤは花が好きなようで、花に目が行くらしい。

俺は、今まで花なんて全然気にしていなかったが、マーヤと一緒に歩くようになってから花にも関心がいくようになってきた。

「そうだな、木々の濃い緑と花の赤やオレンジが、夏~って感じを醸し出しているな。」

「そうね、この色の濃さは夏ならではの色よね~。」


俺たちは、周りの景色のことを話したり、途中に小さな滝があるので、馬を下りて歩いて散策したりしながら、ゆっくりと目的地の場所へ向かった。



「うわ、すごい! こんなに開けているところが山の中にあるのね。

ここなら、バーベキューとかやったら楽しそうだわ。」

「ばーべきゅーって、外で、鉄板の上に食材を並べて焼く料理だっけ?

鉄板は重いから持ってこれないけど、この場所は広いし川もあるから騎士団の野営演習にも使われているぞ。」


王都の騎士団は、地方の視察も兼ねていろいろな地域へ野営演習をしながら廻っている。

あれ、そういえば今年って騎士団が来る年だよな?

だめだめ、今は仕事の話はなし!

今日はマーヤと一緒に楽しく過ごすのだ。


リアンに川の水を飲ませてから、木陰に連れて行き木に繋ぐ。

リアンはもぐもぐと草を食べ始めた。

マーヤの方を見ると、ブーツを脱いでパンツの裾を捲り上げている。


「ま、マーヤ?! 何をしてる~。」

「えー、川の水が気持ちよさそうだから浸かろうかと思って。

リヒトもやろうよ!」


規格外お嬢様、そんな姿、誰かに見られたらどうするんだよ。

うーん、とりあえず誰もいないからいいか。

俺もブーツを脱いで準備をして、川に入る。

ふほっ、気持ちいい! 水の冷たさが体に沁みるぜ。

岸に近いところはくるぶしくらいまでしか水がなくて、ちょうどいい遊び場になっている。

マーヤはというと、へっぴり腰だ。


「? マーヤ、どうした? 水が冷たかった?」

「違うの、リヒトは大丈夫?

石のごつごつが足のツボに、は、はまって、い、痛い、歩けなーい!」

「ははは、軟弱だな、ほら、手を貸して、歩くぞ。」

「ぎゃー、ゆっくり、ゆ、ゆっくり歩いてよ~、いけず~。」

「いけずとは何だ?

ほら、気持ちいいじゃないか。」


手を取って強制的に歩かせると、マーヤは涙目になりながらも歩き、そのうち慣れてきたのか足取りもよくなってきた。


「コーリヒト様、スパルタなご指導ありがとうございました。

おかげさまで、裸足でも歩けるようになってきたわ。」

「うん? 何か怒ってる?

・・・歩けるようになったのなら、あっちの方も行ってみようぜ。」


俺たちは浅瀬をバシャバシャとさせながら歩いた。

岸から少し離れると膝ぐらいまでの深さになったり、大きな岩があったので登ってみたり、流れの速いところで足を取られそうになったりと、日常と違う景色を楽しんだ。


「そろそろお昼ご飯にするか。」

「そうね、お腹が空いてきたね。」


リアンをつないである木々の方は砂地になっているので、そこに敷物を敷いて食べることにした。

そこに歩いて行くまでの小石で、濡れた足は乾くだろう。

リアンは草を食べてすっかりお腹も膨れたようで、足を折って休んでいた。

馬のところに着いた俺たちはバッグからお弁当を出して敷物の上に広げた。


「ブーツはあとで履けばいいよな。

さあ、食べよう。 すっごくおいしそうだな!」

「ハムレタスと、キュウリトマト、卵と、ハンバーグがあるけど何から食べる?」

「卵!」

「やっぱり、リヒト、卵が好きになったね。」

「ああ、卵とマヨネーズの相性は最高だよ。」

「どっちも卵なんだけどね、ふふふ。」


俺は、マヨネーズで和えた卵のサンドが大好きだ。

こんなにうまいものがあったのかってぐらい、驚いた。

これは、前の記憶を持っているマーヤに感謝だな。

今日のサンドイッチにはマヨネーズを使ってあるが、今まで食べていたマヨネーズなしのサンドイッチも、その時はおいしいと思って食べていた。

でも、マヨネーズの味を知ってしまった今ではもう前のサンドイッチには戻れない!

このハンバーグサンド(マーヤに言わせると“ハンバーガー”というらしい)だって、パンにレタスとチーズとマヨネーズ、それとケチャップが一緒に挟んであるだけなのに、外で食べるお弁当とは思えないほどの美味しさだ!


「本当にうまいな。

マーヤの作るサンドイッチは最高だな!」

「そうでしょ。 もう、褒めてもサンドイッチしか出ないけど!

リヒトがこんなに喜んでくれるとは! マヨネーズの作り方を覚えていて、ホントによかったよ。」


本当は、そう言ってくれるマーヤが隣にいてくれることが一番うれしいんだ。

なーんて、面と向かっては言えないからマーヤのほっぺをつまんでおいた。


「もう、なにするんだよぉ。」


そう言いながらマーヤも俺のほっぺをつまむ。

他の人が誰もいないところでよかった!


俺たちは、わいわい言いながらゆっくり昼ご飯を楽しんだ。



読んでくださり、ありがとうございます。

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