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つまり、俺が彼女の夫でして  作者: 森都 めい
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3.リルマーヤ・コンヴィスカント その1

初めて投稿します。

よろしくお願いします。


今回はリルマーヤ視点です。


誤字の訂正と行間の修正をしました。


声が聞こえて、目を開けてみると見たことのない空間があった。


『あれ、私の部屋ってこんなに広かったかな・・・。

え?ここはどこ?』

そう思ったけど、体が重くて動くことがとても嫌で、顔を動かすことすらしたくなかった。

のどが渇いている。


「んんっ、こふっ。」

少しせき込むと、誰かが顔を覗いてきた。

「〇△◇※!〇△□◇※◎▽・・・」

何を言っているのかわからなかったが、私以上に驚いているようだ。

他の人、別の女性が私の体を少し起こし、何か言っている。

コップを持っているみたい。

どうしようかと思ったけど、頭の中で『水を飲みましょう』と聞こえた。

私は、抗う方法もなく、されるがままにコップの水を口に流し込んだ。

のどを潤す水がすごくおいしい。

ありがとうと言いたかったけど、やっぱり言葉を発するのもおっくうだったので小さくうなずくのが精一杯だった。


私が水を飲んでいる間に、部屋を出て行った女性が誰かを連れてきた。

やっぱりなんて言っているのかわからなかったけれど、部屋に連れてこられた男女、ご夫婦かな?顔に疲れが見えているけど、私を見てほっとした様子だった。

女性の方は涙が目からこぼれている。

男性の方は私の頭を撫でた。

状況がわからなかったからいろいろ聞いてみたいんだけど、それよりも今はすごく眠い。

私は、また目を閉じた。


寝ている間、私は夢を見るときと、深い眠りにつくときがある。

寝て、時々目を覚ます。

起きると、必ず誰かがいてくれて、水や簡単な消化によさそうな食べ物を食べさせてくれる。

とてもありがたい。

私は夢と現実と暗闇の間を行き来した。

そして、この夢が夢ではないことに気が付く。

これは誰かの記憶だ。

そして、その誰かとは、いつも自分と一緒にいるような気配のするこの人の記憶だと思う。


夢、いや記憶は小さいころから始まった。

記憶を見て、そして目が覚めるとやはりそこに少し年を取った記憶と同じ人たちがいた。

記憶を見ていくにつれて、子供が言葉を覚えていくように私も言葉を学んでいった。

目を覚ますと、言葉がだんだんわかるようになっていった。

そして、みんなが私を “リルマーヤ” と呼ぶ。

なぜかわからなかった。

私は違う名前なのに・・・。


少しずつだけど、私は目を開けている時間が長くなっていった。

起きているときに思い出した。

リルマーヤの記憶を見る前は、自分の記憶も見たんだと。

人は死ぬとき、走馬灯のように自分の人生が頭の中を駆け巡るって聞いたことがあったけど、私の場合は牛が歩くようにゆっくり見たのだ。

私の生涯を確かめながらもう一度見直すように。


大好きだったお父さん。

お父さんの手は、大きくてあったかくて、手を繋いでもらっているととても安心したから、小さい頃はいつも手を握っていた。

大好きだったお母さん。

裁縫や編み物が上手で、いろいろ作ってくれたなぁ。

冬は、編んでくれた毛糸の帽子がお気に入りだった。

学校には、作ってくれたバッグや給食袋を持って行った。

大好きだったお姉ちゃん。

小さい頃はいつもお姉ちゃんの後ろをついて回っていたから、時々うるさがられたけど、どこに行くにも一緒だった。

公園で遊んだり、家ではブロック遊びをしたり。

懐かしいな。


それから私は、学校に行き、受験をして、短大に入って一人暮らしをして、就職したんだ。

いろんな人に出会い、別れもあったけど、確かに私はあの場所にいた。

そして、今、目の前に見ている場所を、私は知らない。

私はこことは全く違う別の場所に住んでいた・・・生きていた。

私の記憶の最後のところを考えるととても気持ちが悪くなってしまうので、考えないようにしているけど、多分私、死んじゃったんだ。

何かに突き飛ばされた感覚は残っている。

そして、なぜかこの世界に飛ばされて、そのうち、すぽん、とここにはまっちゃったのよね。

この、リルマーヤという子の体に入っちゃったんだ。


眠っている間、最初に私の記憶をたどり、そして今はリルマーヤの記憶を見ている。

リルマーヤの手を見る限り、そんなに年は取っていないだろう。

私と同じくらいかな。

そう思うと、リルマーヤの記憶ももうすぐで終わりそうだ。

見終わったら、私たちどうなるんだろう・・・。


そんなことを思った数日後、夢に見る記憶は、熱を出したところだった。

寒い、熱い、苦しい、辛い・・・意識が遠のいていく・・・。

夢と重なるように私の頭の中も暗くなった。

そして声が聞こえてきた。


『本当なら、私はもっと前に消えていたわ。

でも、あなたがここに来てくれた。

あなたの記憶を見ることも、私の記憶をたどることも、とても楽しかった。

最後に、今までに出会えた人たちを思い出すことができたわ。

ありがとう。

あなたには大変なことをお願いしちゃうけれど、いつもあなたのことを見守っているから・・・』


そして、いつも隣にいた気配がすぅーと消えた。

それから、全身に、頭のてっぺんから足の指の先まで、力が巡るような感じがした。


しばらく経ってから、私は瞼をゆっくりと開けた。

辺りはまだ暗かった。

窓から差し込む月明りしかなかったけど、だんだん暗闇に目が慣れてきた。

そこは、私が住んでいた部屋ではなく、記憶で見てきた“リルマーヤ”という女性の部屋だった。

私は布団から体を起こし、自分の手を出して握ったり開いたりしてみる。

これは私の体だけど、この中にはもうリルマーヤはいなかった。

そして、泣いた。




次の日、体が重かった。

寝不足だ。

昨日の夜は、泣いて泣いて、泣き止んだ後、どっと押し寄せてきた現実感。

私がリルマーヤになってしまったという事実、そしてこれからはリルマーヤとしてこの世界で生きていかなければならないという現実。

それを考えていたら目がさえてしまって、全然寝付けなかった。

今日は申し訳ないけど、だらけさせてもらおう。


「おはようございます、お嬢様。

まあたいへん!目が腫れていますよ。

どこか、痛みますか?お医者様を呼びますか?何かして欲しいことはありますか?」

侍女のジゼルが、私がどこか痛くて泣いて目を腫らせてしまったと思ったようで、慌てている。

「おはよう、ジゼル。

大丈夫よ、どこも痛くないわ。

夜中に目が覚めて、いろんなことを考えていたらちょっと涙が出ちゃっただけだから。」

「本当に大丈夫ですか?

このジゼルに何でも言ってください。

大抵のことはできますから!」

そういってジゼルはにっこりと笑った。

彼女は笑顔がとても素敵だ。

いつもこの笑顔に支えられてきたんだったな、リルマーヤは。

「ありがとう、何でも相談するから。

頼りにしているわ、ジゼル。

今日はちょっと体がだるいから、もう少しベッドの中にいたいんだけど、いいかしら。」


私は苦し紛れな理由をつけて話を合わせた。

まさか、リルマーヤが消えちゃったの、とは言えない。

私がリルマーヤだし、この体の中身は違う人間だと知れたら、とりあえず頭の方も疑われるし、信じられても、それもそれで困るし。


そうなのだ、これからはリルマーヤとして生きていかなくてはいけない。

リルマーヤに頼まれちゃったし、第二の人生、この世界で歩んでいかなくちゃ。



読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマ、ありがとうございます。

とても励みになります!

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