37. レイナ・シアーズ
今回のお話は、レイナ視点です。
登場人物は、役場に勤めている、魔石課のレイナ、受付のルミナ、住民課のリエナと、リルマーヤです。
最初の場面は、コーリヒトとリルマーヤが魔石のリングを受け取りに行った後に寄った、ランチのお店です。(27話参照です!)
ガールズトークを楽しんでいただけたら嬉しいです!
「ねぇ、あれ、町長じゃない?
あ、奥さんも一緒にいるわ!」
「ほんと? 先日町長から、いいお店を紹介してほしいっていうからこのお店を教えたんだけど、今日のためだったのね。
ね、ね、奥さんってどんな人?」
月替わりのランチを出す、このお気に入りのお店で今日も、職場の仲良し三人組でランチを堪能していると、出入り口の方を向いて座っているルミナが店に入ってくる町長を見つけた。
私だけ出入り口に背を向けているので、二人に聞かないと状況がわからない。
「あー、帽子を被っているから顔はよく見えないなぁ。
でも、背が高いよ、町長より少し低いくらい。」
「あら、手をつないでいるわよ、あの町長が!
噂は本当だったみたいね。」
噂というのは、町長夫妻はいつも手をつないでいるらしいってことだ。
家の中までつないでいるわけはないので、外を歩くときはってことだろうけど、それでもあの町長が女性と手をつなぐっていうことが想像できなくてみんな半信半疑だった。
「あの町長がねぇ・・・男の人って結婚すると変わっちゃうのかしら。」
「でもあの感じは・・・女性と手をつなぎたいってことではなくて、大事に思っているって見えるわ。」
「そうそう、そんな感じ! ルミナ、さすがだね。」
町長は、歳も私たちぐらいだし、家柄良し、顔良し、性格良しの好物件だったけど、女性に関して全くと言っていいほど関心がなさそうな残念な人なのよね。
そんな彼が結婚したっていうから、ホント役場中大騒ぎだったわ。
親の決めた結婚らしいけど、奥さんを大事に思っているようなら、いい縁だったのね。
「ねぇ、町長に挨拶してからお店を出る?」
リエナが聞いてきた。
「うん、このお店を教えたの、私だし、気が付いているのに挨拶無しで帰っちゃうのもねぇ。」
「それに、奥さん、紹介して欲しいわね!」
ルミナは町長の奥さんが気になるみたい。
そういう私も、もちろん気になるけど。
ということで、町長に挨拶に行き、奥さんを紹介してもらった。
リルマーヤさんという彼女は、真っ白な髪で背が高く、なんとも清楚な感じの女性だった。
違う街から来たようで、同年代の友達が近くにいないらしい。
店を出てから、他の二人と話をして、今度お茶にでも誘ってみようということになった。
◇◆◇
早速、町長を通じてリルマーヤさんと連絡を取った。
最近開店したという、気になっていた紅茶のお店に偵察がてら四人で会った。
リルマーヤさんは優しそうで、歳を聞いたら私たちより年下というのには驚いた。
すごく落ち着いているから絶対年上だと思っていたのに。
それに、仕草の端々に見える所作がすごくきれいだ。
町長から、以前少し辛いことがあったから、前のことはあまり詮索しないでやって欲しいと聞いていたので、アグラン市の生まれだと聞いただけで他のことは聞かなかった。
私が思うに、この人、貴族出身じゃあないかな。
男爵家の兄三人、姉四人の末っ子で、両親からはどこでもいいから嫁いで欲しいと思われたか、巡り巡ってヴォルグ家の三男の嫁になる、ってところじゃない?
(注、リルマーヤは子爵家長女です)
この人も案外苦労してきたのかもしれないな。
なーんて、勝手に想像したけど中らずとも遠からずってところでしょ!
お友達が増えるのは嬉しいので、これからも仲良くできたらいいな。
このお店は、店内でも飲めるし、茶葉を買って帰ることもできるようで、リルマーヤさんは今日飲んだ紅茶の茶葉を買っていた。
店員に、香りを確認したいから茶葉を見ることはできるのか尋ねていたけれど、なるほど、買う前に香りだけでもわかると買いやすい。
リルマーヤさん、しっかり者の主婦みたいじゃない!
他の二人もリルマーヤさんとは仲良くなりたいということだったので、今度は例のお店で月替わりのランチを一緒に楽しむことを約束してその日は終わった。
◇◆◇
「注文をお願いしまーす、月替わりのランチを四つで。」
前回初めて会った時の緊張もほぐれ、今日は前より話が弾む。
呼び方も私たちは名前で、リルマーヤさんは、リルと呼ぶことにした。
「そうだ、皆さんに聞きたいことがあって。」
リルが話題を振ってきた。
「どうしたの?
夫婦のことについてはちょっといい答えができないかもしれないけど、他のことならなんでも聞くよ~。」
リエナがちょっと興味深々で会話を受ける。
「いえ、くだらないことなんですけど・・・。
ほら、暑くなってきたでしょ?
魔石で家の中の温度が涼しく保たれているとはいえ、やっぱり真夏は暑いし。
皆さん、寝夜着は何を着ているのかな~って。」
「私は寒がりだから夏でも長いパンツと、上は半そでの普通の寝夜着だわね。」
ルミナは冷え性みたいで、夏でもしっかり着ていることが多い。
「私はナイトドレスっていうの? 膝くらいまであるワンピースだよ。」
お転婆っぽいイメージのあるリエナだけど、寝るときは可愛い恰好なのね。
「私は半そでのシャツと、下は腿くらいまでの短いフレアパンツ。
暑がりだし、寝るときは開放感が欲しいのよね~。」
母親には『そんな寝夜着!』ってびっくりされたけど、暑いんだもん、寝るときぐらい肌を出してもいいよね。
「そう! 私も短いパンツを履きたいんだけど、どこで買えるのかな?」
「リルは短いパンツ派なんだ。
そーいえば、男性のパンツも短いよね、あはは。」
「え?!」
「え?」
「えー、もしかしてリル、町長のパンツを履いたんじゃないでしょうね? 信じられないっ!」
「は、は、履いてないわよ~。
ちょっと・・・これ涼しそうかな~と思って、体にあててみただけよ。
ぶかぶかだったからやめたけど。」
この子・・・この慌てようはきっと履いてみたのねっ。
清楚そうな顔をしていて、結構大胆かも・・・。
「もう、ダメダメ!
ねぇこのあと、リルの寝夜着を見に行くっていうのはどう?
絶対可愛いのを見つけてあげる!」
「そうしよう。
そんな、町長のパンツなんか駄目だよ!」
「は、履いてないってば~。」
リエナもリルのこと疑ってるわね。
でも、ちょっと親近感が持てたかな。
なんて話していると料理が運ばれてきたので、この話は終わりになった。
今月のランチは、白身魚のソテーにトマトのソースがかかっていた。
魚は臭みもなく、トマトソースはバジルが効いていておいしい。
今回はちょっとお得だったな。
そう思いながら舌鼓を打っていると、ルミナが話し出した。
「今度は、私からリルに聞きたいことがあるんですけど。」
「あら、何でしょうか?」
「その・・・先日、役場に町長の友人という警ら隊の方が見えたのだけど・・・リルは、その方のことは知ってるの?」
「あー、私も見たよ!
警ら隊がいきなり来るから何事かと思っていたら、町長がそこにやって来て、二人で楽しそうに話をしてたよね。
もう、周りの女性たちの視線の的で、私もすっかり見入っちゃったよ!」
「え、何それ! 私、知らないよ~。」
リエナもルミナも仕事場が、役場の一階だからその様子を見れたんだろう。
ルミナなんて受付だから、その警ら隊の人と話もしたのかもしれない。
私のいる魔石課は二階だから、全然知らなかった。
「あー、じゃあネイトさんだと思うよ。
リヒトの幼馴染だけど、この町に転勤になって来たみたい。
この前、役場に顔を出してくれたって言ってたから。
でも、視線の的って、そんなに目立っていたの?」
「警ら隊の制服がすごく似合っていて、爽やかな感じの人で、そこに町長が加わって二人で笑いながら和やかな雰囲気で話をしていたから、そこだけ別世界みたいだったわ~。」
「そうそう、ほら、町長も一般論ではカッコいいからさ。」
リエナ、リルの前でその言い方は・・・。
「ふふふ、一般論ではリヒト、カッコいいよね。」
「あー、惚気てる!」
リルも言うなぁ。
「リヒトの友人の警ら隊の人って、なぜか制服が似合ってカッコいい人が多いのよね。」
「そうなのね!」
「あー、私も見たかったな。
誰か、呼びに来て欲しかったよ。」
「こほん、そこでお願いなんですけど・・・。
その警ら隊の方、ネイトさん?を紹介して欲しいと町長に頼んでもらえないかしら。」
「「えー」」
「ルミナ、ずるいよ~、私も私も!」
「え、それなら私も紹介して!
私だけその人、見てないし。」
「「「お願いしまーす。」」」
「え、えー、皆さん、積極的ですね。
うーん、じゃあリヒトに聞いてみるよ。
いい知らせができるように頑張ってみるかな。」
「わーい、リル、ステキ!」
リエナは、リルの言葉を聞いてノリノリだ。
いつもはのんびり屋のルミナも、今回は積極的だし。
私もなんか、楽しくなってきた!
こんな風に毎月おいしいランチを楽しむのもいいけれど、リルの参加で私たちに新しい風が吹いてきたみたい。
やっぱり女の子同士の会話って、こういう話をしなくっちゃね!
そんなことを思いながら、運ばれてきたデザートに心を弾ませた。
お話の中にあった年齢についてですが、設定はコーリヒト23歳、レイナたちは22歳、リルマーヤは20歳です。
リルマーヤの精神年齢は、23歳で転移、3年後に結婚という設定です。
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