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つまり、俺が彼女の夫でして  作者: 森都 めい
37/46

35. 泥棒がやってきた!


「おい、まだドアは開かないのか!」

「すみやせん、やっぱり大きい家は鍵も良いものを使ってるみたいで、なかなか開かないんですよ。

ふぅー、もう少しだと思いますがね。」

「お、お頭、やっぱりこの家は止めておいた方がいいんじゃないですか?」

「馬鹿を言え!

ここまで来て止めるなんてできるかっ。

このあたりで一番大きい家なんだ、絶対金はあるぞ。

この町では稼ぎが少なかったからな、ここでがっつり頂いてとんずらするんだ。」

「まったく、この人は頑固なんだから・・・。」

「なんか言ったか!」

「いいえ、何も・・・」


俺たちは、お頭と、鍵師と子分の俺の三人組の泥棒だ。

玄関ドアの鍵を開け、こっそりと中に入り、こっそりと金目の物をあさり、こっそりと出ていく。

そして、警ら隊の手が及ぶ前に次の町へ向かう。

今まではそれで何とかやってきたのだが、この町に来て狙った家の当てが外れた。

それが二軒も続いたので、お頭は少し焦っているようだった。



かちゃ



「お頭、お待たせいたしました、やっと開きましたぜ、ってあれ? ドアが開かない・・・?」

「どうした?何やってるんだ!」

「いえ、鍵は開いたのにドアが開かなくて・・・あれ~? あ、まだほかにも鍵が付いているみたいですぜ。

用心深いな。」

「なに~、まだ鍵があるのか!」

「へい、二つか三つか、それとも四つか、まさか五つ以上はさすがに付いていないと思いますがね。」

「お頭、やっぱり止めておいた方が・・・。」

「ここまで来て引き下がれるかってんだ。

鍵が多いってことは、金目の物もたくさんあるってことだろう。

おい、窓を壊せ。 窓から入るぞ。」


「「えー」」


「それじゃあ家の人が起きてしまいますよ。」

「さっきから馬が騒いでいるんだ、もう家の連中は起きてるかもしれん。

ほれ、行くぞ。」


『なんだよ~、それならなおさら止めればいいのに。

この仕事も、今回で潮時かもな~。』


俺はそう思いながら、剣の束で窓を壊した。




◇◆◇




真夜中にふと目が覚めた。


馬のリアンが何か騒いでいるような気がした。

・・・うん、やっぱり落ち着かないようだ。

俺はそっとベッドから降りて慎重に音をたてないように窓のそばに寄った。


玄関の辺りから何か話声がする。

そういえば、最近この町に泥棒が現れた、と報告を受けたな。

そいつらか?

うーん、三人ぐらいいそうだな。


下に様子を見に行こうかと思っていると、部屋どうしが通じているドアからマーヤが入ってきた。

「ねえリヒト、リアンの様子がおかしいんだけど、見に行ってみる?」

「いや、なんか、外から話声がする。

最近この町を荒らしている泥棒かもしれない。」

「えー、ど、泥棒?!」


俺はそう伝えて、壁に掛けてある木剣を取った。

この木剣は中に鉄芯が入っている。

一瞬、普通の剣にしようか迷ったが、マーヤの前で血生臭い争いは嫌だし、この木剣でも今の俺の力なら、力いっぱい叩けば骨ぐらい折れるだろう。


「俺は下の様子を見に行くけど、マーヤはどうする? ここにいるか?」

「ううん、私も一緒に行く。 ちょっと待ってて。」

そう言うとマーヤは一旦部屋に戻り、寝夜着の上に黒いはおり物を着てきた。

ん? 足元に違和感があるが、暗くてあまりよく見えない・・・まあいいか。


「灯りは持っていけないから階段の上に置いておく。

ゆっくり降りるけど、足元に気を付けて。」

マーヤは俺の言葉にうなずき、俺はそーっと部屋のドアを開け、階段を音をたてないように降りた。


階段の途中まで降りたところで・・・



がん、がん、がっしゃーん



大きな音が響いた。

うわー、応接間の窓を壊したな。

あの部屋の窓ガラスは高いんだぞ!

俺は後ろを振り返り、マーヤの顔を見た。

マーヤも驚いているがうなずいたので、俺もうなずき返した。


暗闇に目が慣れてきた。

階段を降り、応接間の、玄関側のドアの取っ手に手をかけ、マーヤの顔をもう一度見てうなずいてから、がっとドアを開け、木剣を構える。



「何をしている!」



俺が応接間に入ると、中にいた二人が振り向いて剣を構えた。

にじりにじりと中にいる人物から目を離さずに中に移動する。

あれ、二人だったか?


「きゃっ」


はっ? マーヤ!

声がする方を見ると、やっぱり三人目がいたのか! 片方の手でマーヤの両手を掴み、もう片方はマーヤの首に腕を回している男が見えた。


「! おまえ、離れろ!」

「ははは、はいそうですかと離れるものか!

女に傷をつけられたくなかったら、その剣を放り投げろ。

おまえら、やっちまえ!」


『むむむ、マーヤは大事だし・・・』

俺は言われて、しばし考えたがやむを得ないと思い、剣を下ろそうとした・・・そのとき・・・



ことり



窓から音がした。

泥棒たちも外に気を取られた。


ウェインが来てくれたんだ!

マーヤを見ると、俺の顔を見てうなずいた。

俺も、もう大丈夫だとうなずく。


これでよか・・・あら、マーヤさん?!

俺がうなずいた途端、マーヤは思い切り腕を引いたかと思うと捕まえている男の腹に、いきなり鉄肘をかました。



ばふっ



よそ見をして無防備だった男はマーヤに気が付かず、突然肘鉄がお腹に入り、さらに急所にヒットしたようで、マーヤから手を離し前のめりで苦しんだ。



「がはっ、この、なに、する・・・ぐはっ」



男は前に体を倒しながら苦しそうに咳き込んだ。

手の離れたマーヤは、半回転して構えたかと思ったら、突然くるっと右足を回した。



がごーーーん



前のめりになっていた男の頭に、マーヤが回した足がぶち当たった。

な、なんか、すげー音がしたけど・・・だ、大丈夫か?


俺はすかさず、あっけにとられている目の前の二人の腹と首の後ろに木剣を打ち込んだ。



がつっ、がつっ、どさっ、どさっ



二人が気絶して倒れたのを確認し、それからマーヤの方を見ると、回し蹴りをされた男が白目をむいて倒れていた。


「マーヤ、大丈夫だったか!

ものすごい音がしたけど、足は大丈夫か?」

「うん、あー、こんなにきれいに蹴りが入るとは思わなかった!ふふふ。」

「足は痛くないか?」

「ちょっと痛いけど、大丈夫。

災害用に作ってもらったこの靴がここで活躍するとは・・・履いてきて正解だったわ。」

「もう、危ないことするなよ。」


俺はマーヤを抱きしめた。

あー、どうなることかと思ったが何とかなってよかった、というか、マーヤ、想定外過ぎなんですけど!


靴のことを聞くと、子爵家にいた頃、何かあったとき用に自分の足を守るため、鉄板を入れた靴を作ってもらったそうだ。

子爵様に言うと変に思われるからと、侍女に頼んでこっそり作ってもらったらしいがやっぱり変に思われたらしい。

まあ、そんな靴、見たことないからな。


ちなみに、靴は“安全靴”というらしい。

足元の違和感は、この靴のことだったみたいだ。

武器を持たない自分でも何かできればと思い履いてみたんだけど、勝手なことをしてごめんなさいと言いながらも、マーヤは笑って答えてくれた。


そこへ、ろうそくの灯りと綱を持ったウェインがやってきた。

白目をむいている男は・・・後にして、先に気絶している二人を縛る。

ウェインにこっそり聞いてみた。


「マーヤの蹴りは見たか?」

「・・・はい、すばらしい蹴りでした。」

「あー、このことは内密に。」

「・・・わかっております。」


泥棒三人のうち一人はうちの妻が蹴り落としました、なんて事が広まってもマーヤも困るだろう。

俺も困るし!

三人目の男を縛り上げたところで、ロッテが警ら隊を連れてきた。

玄関のドアを開けると、鍵が一つ開いていた。

「コーリヒト様、警ら隊が来ました、ってもう終わっちゃってますか。」


マーヤは応接間に入ってきたロッテの顔を見るなり、そばに寄って抱きついた。

「あー、ロッテ! 怖かったよ~。」

「リルマーヤ様、遅くなってすみません。

ご無事でしたか? こんな夜中に怖い思いをして、かわいそうに。」


抱きつかれたロッテは、子供をあやすかのようにマーヤの背中をポンポンと叩いている。

警ら隊は、怖かったんだろうな、というような目で二人を見ていた。

俺とウェインは顔を見合わせて、笑ってしまった。

マーヤ、あんな蹴りを披露しておいてよく言うよな!


「皆さん、ご無事で何よりです。

さすが町長、三人とも捕まえてくれましたね。」


警ら隊は、被害にあった箇所を確認し状況を聞いてきたので、俺はわかる範囲で説明した。

「話を聞く限りでは、最近このあたりを荒らしている泥棒のようですね。

でも、なぜ今回は窓を壊して入ってきたんですかね?

今までの被害にあった家は、鍵を開けて玄関から入って、家人にも気が付かれないように静かに物色していたのですが・・・。」

「そう言えば玄関の鍵は一つ開いていましたよ。」

「一つ、というといくつか付けてあるんですか?」

「ええ、三つ付けてありますけど。」

「ああ、それですね、きっと一つ開錠したけどまだ鍵がかかっているから面倒になって、窓を壊したんでしょう。

それなら家に入るのを止めればいいものを・・・。」


今まではうちの玄関の鍵は一つしか付けていなかったが、二つ以上つけた方が泥棒が入りにくいとマーヤが言うから、それならってことで三つ取り付けたんだ。

泥棒は時間が勝負だから、鍵が二つ以上付いていると普通は諦めるそうだ。

こいつらも、諦めればよかったのに。


「さすがコーリだな。」

「え? おー、ネイトじゃないか。

あれ、こっちに来ているのか?」

警ら隊の一人が話しかけてきたのでよく見れば、披露宴にも来てくれたネイトだった。

「ああ、先月からこの町の勤務になってな。

おまえのところに顔を出そうと思いながら、なかなか忙しくて、挨拶が遅くなってしまった。」

「いいよ、また時間の空いた時にゆっくり会おうぜ。」

「それにしても一人で三人も捕まえるなんて、剣の腕はなまっていないな!」

「アハハ。それほどでも・・・。」


俺はちらりとマーヤの方を見ると、マーヤは人差し指を口に添えていた。

きっと 『しゃべるな!』 ってことだろう。


「それにしても、一人はまだ起きないけど、何をしたんだい?」

「あー、その、なんだ・・・ちょっと打ちどころが悪かったみたいだな・・・木剣ががっつり入ってしまったみたいで・・・。」

「なるほどな、まあ、自業自得だな。」

うちの妻がやったんですよ~、とは言えない。



マーヤに、蹴りのことを聞いてみると、前の世界で健康のため“きっくぼくしんぐ”なるものを習っていたそうだ。

健康のためだったから、人に向けて蹴ったのは初めてらしく、ちゃんと当たってよかった!と言っていた。

そして、今回は“びぎなーずらっく”というものらしいので、次からはきっとできないから、リヒトがちゃんと守ってね!と言われた。



はい、しっかり守りますので、無茶なことはしないでください!

こんなことばかりされていたら、俺の心の臓はいくつあっても足りないぜ・・・。



感想をいただきました。

ありがとうございます。


読んでくださり、ありがとうございます。

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