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つまり、俺が彼女の夫でして  作者: 森都 めい
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31. 事故との遭遇 その1

いつもお読みいただきありがとうございます。

お話が長くなってしまったので、2話に分けました。

前編です。


「エルノん、今日はよろしくお願いしますね!」



開けてある二階の窓に、マーヤの元気な声が届く。

ロバのエルノに向かって話しかけているマーヤと、エルノに荷台をつけているウェインの姿が見えた。

今日はマーヤ一人で買い出しに行くと言っていたからその準備をしているのだろう。


マーヤは、いつもの帽子を被り、水色のワンピースを着ていた。

さわやかな季節にピッタリな涼し気な色合いだ。


「エルノんと二人でお出かけよ、エルノんが頼りだから頑張ってくださいな!」

「ヒーヒーハー。 ブフォブフォ!」

なんだ? 俺には全然なつかないエルノがマーヤの言葉に合わせて相槌を打っているみたいだ。

あいつめ~、美人には弱いのか!

マーヤも“エルノん”なんてかわいらしく名前を呼んじゃってさ~。



~コーリヒト妄想中~


「リヒトん、今日はお出かけですよ~。

リヒトんだけが頼りだよ~、いっぱい甘えちゃおうかな。」

「はい、マーヤ様、いっぱい甘えちゃって大丈夫です。

俺にお任せください!」

「リヒトん、頼りになるし、優しいし、頼もしいし、カッコいいし、仕事できるし、強いし、守ってくれるし、家もあるし、馬もいるし、ロバもいるし、リルマーヤ、リヒトんの事好きになっちゃうわ!」


なーんてな!



今の俺は、他の人から見たら 『コイツ、どーしちゃったの?』 っていうぐらい浮かれた顔をしているだろう、と心の片隅ではわかっている。

でもそんなこと、どーでもいいぐらい俺はマーヤで満たされている!


先日、マーヤが前の記憶を持っていると俺に告白してくれたことで、二人だけの秘密を持っている、という気持ちがより親密度を増している、ような気がする。

そして、この魔石のリング!

左手を上げて、リングの嵌った自分の指を見てみる・・・ごつい手なんだけどさ。

多分この魔石のおかげでマーヤを身近に感じている、ような気がする。

あれ、そんな気がするっていうのは俺だけ?

いやいや、マーヤもそう思っているさ。

それに、左手を見ればすぐに目に入るこのリングも、二人だけのもの、という感情がふつふつとこみあげてくる。


もー、仕事なんてどうでもいいから、俺も一緒に買い物に行きたいな~。

明日と明後日に、今日の分の仕事を頑張ればいいんじゃないか?

ちょっと今日はお休みにしてもらって俺も買い物に行こうかな。

そう思いながら窓から振り返ってみれば、そこにはフェルナンの顔があった。


「何をお考えですか? コーリヒト様。

だらしのない顔をして、自分の手を眺めて・・・。

もしかして、今日の仕事を明日と明後日に回して、今日はお休みにしようなんて考えていらっしゃらないでしょうね。」

「うぐっ、・・・な、なんでそれを・・・」

「はー、あなたって人は全く・・・

言いましたよね、今週中に提出する報告書があるって。

まだ5分の1しかできていません。

明日と明後日はまた別のことを決めなくてはいけませんから、今日は絶対にはずせません。

おわかりですねっ!」

「わ、わかってるよ。

ちょっと、どうかな~って考えただけだよ。

さて、仕事しようかな~。」

「ほら、さっさと座る!」


フェルナン、怖いなぁ。

俺の小さな希望も塵と消えたよ。

まぁ、フェルナンの言ってることの方が正しいからしょうがないんだけど。

俺は、マーヤとエルノが楽しそうに買い物に出かける姿を想像しながら、仕事を始めた。



◇◆◇



フェルナンに指示を受けながら報告書をまとめていたが、お腹が『ぐ~』と鳴った。

ということはそろそろお昼時かな。

俺の腹時計は自慢じゃないが正確だ!

そう思っていた時、開いた窓から声が聞こえた。


「誰か~、誰かいますか~。」

「おや、どうしたんだい。」

お昼の準備をしていたロッテが対応しているようだ。


「フェルナン、ちょっと下の様子を見てくるよ。」

「誰か来たようですね、もうすぐお昼ですし・・・。

そうですね、ちょうどキリもいいですから、お昼休みにしましょうか。」


俺は階段を降りて玄関へ向かうと、ロッテと男の声が聞こえてきた。

「ロッテ、どうしたんだい?」

「あ、コーリヒト様、この男性が伝言を持ってきてくれて、リルマーヤ様が・・・」

「え、マーヤが何だって?」

俺は玄関を出たところだったが、走って二人のところへ行った。

「それが、リルマーヤ様が事故の 「え、事故?! どこで!」

「え?」


「だからっ! どこで事故が起こったんだよ!」


俺は気がせいているのもあり、声が大きくなった。

「あー、肉屋のガルボの店の前で・・・」


男から場所を聞いた途端、俺は走り出していた。


「コーリヒト様、待って~」

「あの、まだ話が~」


なんであの二人はのんびりしているんだよ~、そういえばマーヤ、買い物の最後に肉屋に行くって言っていた。

なんだよ、事故って! 朝はあんなに楽しそうにしていたのに!

どうか、マーヤが事故なんかにあっていませんように、巻き込まれていませんように、俺の聞き間違いでありますように・・・そう思いながら俺は無我夢中で肉屋へと走った。




◇◆◇




「それでですね、この大通りを走っていた馬車の荷台に、この横道から出てきて曲がろうとした馬車の荷台が当たってそれぞれの荷物が散乱したようです。」

「・・・そうなのか。」



俺は今、警ら隊から事故の状況の説明を受けている。

そう! すべては俺の聞き間違いであった・・・。



『事故!』と聞いたときには気が動転して勢いよく家を出てきちゃったけど、走っている途中で、何となく、マーヤは無事だな、と感じた。

これも魔石の力なんだろうか、確信はなかったけど大丈夫だと思った。

でも、マーヤの顔を見るまでは安心できなかったから、足を止めずに突っ走ってきた。



事故の現場が見えてきて、片づけをしている水色のワンピースが見えたとき、やっとホッとして緊張が解けて走るのを止めて歩いた。

マーヤを目で追っていたが、みんなも片づけをしている様子に、結構協力してやってくれているんだな、と少し驚きながら近づいていくと、マーヤも俺に気が付き、一瞬びっくりした顔を見せたが笑顔で小さく手を振ったので、俺も小さく手を挙げた。

あー、よかった、家を出たときは、生きた心地がしなかったぜ。

マーヤのそばに行こうと思ったところで、警ら隊に『町長!』と呼び止められ、事故の報告に捕まったのだ。



マーヤが無事だったのはよかったけど、早とちりをしてちょっと恥ずかしい。

警ら隊には俺の勘違いは気づかれていないようだけど、着いたときは『なぜ町長が走ってここに来たんだ?』という顔をされてしまった。



「それで、けが人はいるのか?」

「はい、それぞれの御者は手綱を持っていたので大丈夫だったのですが、大通りを走っていた馬車に乗っていた御者見習いは何も掴まっていなかったため振り落とされたようです。

外見は擦り傷だけのように見えますが、先ほどここに着いた医者に診てもらっています。」

「ん? ずいぶん医者が来るのが早いな?」

「ええ、私たちも驚いています。

私たちも呼びに来てくれた人たちに連れてきてもらったのですが、みんなで手分けして事故の処理をしてくれているので本当に助かりました。

この通りに入らない様迂回する交通整理もしてくれているし、こんなに早く事故処理ができる現場は初めてです。

そういえば、指示を出してくれる人がいるって言っていたな・・・確か・・・町長の奥さんだって言って・・・あー、だから町長!」

人差し指をピンと立てて気が付いた警ら隊の隊員は、俺の顔を見てにんまりと笑った。



俺がここに走ってきた理由が、ばれた!



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