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つまり、俺が彼女の夫でして  作者: 森都 めい
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25. リルマーヤ・コンヴィスカント その4

今回のお話もリルマーヤ視点になります。


リヒトは、少し赤みがかった鳶色の短髪で、瞳は少しくすんだグラスグリーン。



顔はヴォルグのお義父様やモルドレッドお兄様に似ている。

口元はお義父様にそっくりだけど、目元はご両親の感じがちょうどよく混ざり合っているのか、目つきの鋭いお義父様より柔らかい感じ。

先日リヒトがシャワーを浴びていて、ちょっとドアが開いていたから覗いたら、引き締まった体躯をしていた。

朝の鍛錬も欠かさないようだし、そういうところは見習いたい。


私から見ると、リヒトはイケメンだと思う。

自分の夫を捕まえて、イケメンと言い切るのもアレだが、少なくとも私は好きな顔である。


そんな彼なんだけど、本人の自己評価は低い。

なぜならば、超イケメンのトリスタンお兄様がいるからである。


以前、仲良くなった女性がいて、いいなぁと思い始めた頃、その女性からトリスお兄様を紹介してほしいと言われたらしい。

結局トリスお兄様と仲良くなりたいからとりあえずリヒトに声をかけたらしく、それからは声をかけてくる女性はみんな、お兄様狙いじゃないかと疑ってしまうようになったようだ。

そして自分に興味を持つ女性もいないとも思うようになってしまった・・・。


超イケメンの兄を持つ、イケメンの弟の悩み。


真面目なリヒトは、本人なりに結構悩んでいたようだ。

以前、兄弟の話題の時にぼそっと話してくれた。

それでもリヒトがトリスお兄様を慕うのは、お兄様が弟思いで愛情たっぷりだからかな。

お兄様の愛情はちょっとブラコンの域に足を突っ込みかけている気もするけどね。



◇◆◇



ジャガイモの収穫が始まった。

一日目は収穫がまだ途中だから、昼ご飯は普通のサンドイッチを作った。

二日目からロッテの蒸かし芋が登場する。


「ロッテ、すごいね。

みんなで食べるし、夕ご飯用にも作っておくからって、お芋、二十個くらいお鍋二つで蒸かしているんだもん。 びっくりしちゃった。」

昼ご飯の時、こっそりリヒトに囁いた。

「そうだろう、っていうか、今年もそんなに大量に蒸かしたのか。

マーヤ、頼りにしているからな!」


「お昼ご飯のお芋をどうぞ。

今回は、リルマーヤ様が、塩コショウをしてバターを乗せるとおいしいですよって言ったので、そうしてみました。」

じゃがバターは最高だよ~、簡単だからぜひみんなも試して欲しい。


「はむ、はむ。

おお、バターを乗せただけで全然違う。うまいっ!」

リヒトが叫んでいる。

良い反応じゃん!

「おー、これはバターの塩気が動いた体にしみますな。」

「ええ、簡単なのにすごくおいしくなりますね。」

畑仕事を手伝ってくれている近所のオスナ夫婦も気に入ったようだ。

「あら、ホントだ。 とってもおいしくなるわね。」

ロッテの評価も上々ね、よかった!


午後の畑仕事も終えると、みんなは公衆浴場へ行くというので私も一緒に行った。

久しぶりの広いお風呂、温泉じゃないのが残念だけどそれでもワクワクする。

浴場には、まだ時間が少し早いのか、あまり人がいなかった。


ロッテに習って料金を払って一緒に中に入る。

「ここが脱衣所です。

自分の服を入れるかごの番号を覚えておくんですよ。

覚えていないと、お風呂から出て裸でウロウロすることになりますからね。

あのドアがお風呂の入り口です。

最初に体を洗ってから湯船には入ってください。

帰りは、大体男の方がお風呂は短いですからね。

入り終わって外に出れば、椅子のところに男性陣が座っていると思いますからそこに集合しましょう。」


ロッテから簡単な説明を受ける。

お風呂の入り方ってどこも同じような感じだな。

ロッテの言った通りに入り、湯船につかる。


「はあ~、いいお湯~。」


私は畑仕事はしていないけれど、これは疲れが取れそうだわ。

やっぱり広いお風呂っていいよね~。

お風呂に入るときって、どうして声が漏れちゃうんだろう。

そう思っていると、ロッテがそそそ、と側にやってきた。


「リルマーヤ様。

最近はリルマーヤ様がお嬢様だってことすっかり忘れていましたけど、その体は確かにお嬢様です!

あまりここに来てはいけません。 その体では目立ってしまいます。

周りを見てごらんなさい。

そんなにきれいな体をしている人はいませんから!

み~んな、リルマーヤ様を二度見してましたよ。」


そうかなぁ。 ロッテの思い過ごしだと思うけど。

ここにいる人たちって、まだ時間が早いからかロッテより年上の人しかいないので、若い私が目立っているのはわかるけど。

「ありがとう、ロッテ。

ここに来るときは、あまり人がいないような時間に来るようにするね。」

「そうしましょう。 それがいいです。」


ホカホカの体で家に戻ってきた。

リヒトはちょっと休むと言って部屋に行った。

私はのんびりと夕ご飯の支度をした。


「もうすぐご飯ができるから、ちょっと待っていてね。」

「ああ、頼むよ、お腹が空いたなぁ。

あ、お芋料理はどうなった?」


台所を覗いてくるリヒトは味見したいようだ。

最初は恥ずかしそうだったけど、最近はつまみ食いが楽しみになってきているのがわかる。

毎日のように台所を覗きに来て、口開けて待ってるもん。

慣れって恐ろしいかも。


「お芋は、ポテトサラダにしてみました。

ちょっと食べてみる? はい、あーん。」

「あーん・・!」

リヒトが固まっている。

「どう? 慣れない味かな。初めて出す料理だけど。」

「うまい、うますぎる~。 これは!なんだ~!」

リヒトが吠えている。

相当衝撃的だったらしい。

かわい過ぎて笑ってしまう。


「ふふふ、だから、ポテトサラダだよ。

お芋とマヨネーズって合うよね~。

リヒトも気に入ってくれたようね。

やっぱりマヨって最強だよ。」

「まよって言うのか? 初めて食べた!

これも、貴族の食べ物なのか?

こんなのがあるなんて知らなかった、というか、こんなにおいしいのに何で俺たちは知らないんだ?」

「いえ、あー、そのー、そうそう、うちの料理長の秘伝らしくて。

リヒトもマヨネーズのことは秘密にしてね。」

「お、おお。

そんな秘伝の味付けを教えてくれたのか、すごいな、さすがだな、料理長!」

お昼にあんなにお芋を食べたのに、リヒトは芋三個分で作ったポテトサラダもおかわりしまくって、食べつくしてしまった。


そんなにおいしかったのか! さすがマヨネーズ。みんな大好きマヨだよね。

マヨネーズというものを気に入ったからまた作ってくれって言うから、生の卵を使うから取れたての卵が手に入った時じゃないと作れないと言ったら、しょんぼりしていた。

それに卵と油を使うから、食べ過ぎると太るし体にもよくないしね。


「嫌いになりかけていたジャガイモが、マーヤのおかげで大好きになったよ。

また作ってくれ!」

リヒトは余程刺激を受けたのか、マヨネーズを絶賛し、次の料理も楽しみだとうれしそうだった。


うへ~、料理、前の知識をフル回転してがんばらなくちゃ。

そうなのだ、私の知識の半分は前の世界のもの。

こっちで見かけない料理は、リヒトは貴族のものだと思い込んでいるけど、本当は半分以上・・・七割ぐらいは前の世界の知識なの。


リヒトが『貴族の料理はすごいな』と言ってくれる度に、嘘をついている・・・という気持ちが増す。

ちょっと罪悪感・・・。


だけど、だからといって本当のことを言ってもどうしようもない。

私はリルマーヤだけど中身は違うの、なんて言われて、はいそうですか、と言う人はいないだろう。

私だって、もし他の人にそんなことを言われたら『この人大丈夫?』と距離を置いちゃう。


嘘をついている、でも言っても無駄、という気持ちがどんどん心の中にたまっていく・・・。


刺激がある毎日、楽しい毎日が続くたび、この生活を手放したくないと思う。

そして、リヒトを知っていくにつれ、この人に嫌われたくないと思うようになっていく。


多分、リヒトは私のことを悪くは思っていないだろう。

手を差し出してくれるくらいには。

そして、この結婚を楽しいものにしようと頑張ってくれていることもわかる。


これからも、この人についていきたい。

これからも、この人の笑顔を見ていたい。

そう思うと、叶うなら私のことをわかって欲しいと願ってしまう。


・・・でも、話してみてもいいんじゃない・・・?


バカが付くほど真面目でお人好しで単純で、優しくて頼もしくて、私のことをわかろうとしてくれているこの人ならもしかして、この荒唐無稽な話を信じてくれるかも・・・、と思い始めている自分がいた。



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