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つまり、俺が彼女の夫でして  作者: 森都 めい
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24. リルマーヤ・コンヴィスカント その3

今回はリルマーヤ視点になります。



リヒトの手は大きくて温かかった。



こっちの世界に飛ばされて単身やってきた感じだったけど、リルマーヤの家族やいつも一緒にいて世話をしてくれた侍女がいて、寂しいと思ったことはなかった。

そんな生活にすっかり慣れたと思ったら、今度は単身ヴォルグ家に嫁ぐことが決まった。

自分で決めたこととはいえ、一人で見知らぬ市井の家に行き、ほとんど知らない人と一緒に住むことはやっぱり不安を拭えなかった。



そんな気持ちでいた頃、馬車を下りる時に添えてくれたリヒトの手は、一瞬で前の世界のお父さんを思い起こさせてくれた。


『この手を離したくない』


そう思ったら、そのまま手をつないでおいてしまった。

気が付いたときには、もう手を離すタイミングを逃してしまい、そのままにしておいた。

リヒトはどう思ったのかわからないけれど、何も言わず手をつないだままにしておいてくれた。



『この人、優しい人だ。』



手をつないで歩くなんて、気付いてしまうと恥ずかしかったけれど、でも安心を得たい気持ちの方が強かった。




◇◆◇




私がこの家に来て何日か経った、ある夕食の時にロッテが言った。


「リルマーヤ様がこの家に来てからそろそろ一週間が経とうとしています。

私のお手伝いも今日が最後で、明日からはリルマーヤ様、お一人でやってもらいますが、よろしいですか?」

「え、そ、それは・・・。

リ、リルマーヤさまはそれでいいのか?」

「リヒト、動揺しすぎ! ひどいなぁ、もう。

呼び方がリルマーヤさまになっているよ。」

「あ、わ、悪かった。」


リヒト、笑える~。

料理や家事で信用されていないのはわかるけど、動揺が態度に出過ぎよ、まったくもう。

「さっき、ロッテとも話をしたけど、ちゃんと合格を頂いたし、私は多分大丈夫よ。」

「そ、そうか・・・その自信はどこから・・・いや、何でもない・・・。」

「ここ、一日二日ほどは、リルマーヤ様が主になって家事をやられて、私がお手伝いぐらいですからね。

今召し上がっているお料理も、ほとんどリルマーヤ様がお作りになりましたよ。」

「そうなのか? 普通に美味しいよ。」

「褒められている気がしないんだけど!

でも、料理は実家の料理長にも教えてもらっていたし、ロッテの教え方も上手だから何とかなりそう・・・かな。」


ロッテは本当に良い先生だった。

ハッキリ物事を言うけど、嫌味じゃないからすごくわかりやすかった。

ロッテと顔を見合わせて笑う。


私たち二人の態度に、リヒトは目が点になっている。

まぁ、最初の時の、ロッテの『お嬢様だからって容赦しないよ~』っていう挑戦的な態度からしたら、すごい変化だと思う。

そう思うと、ロッテは私のこと、少しは見直してくれたんじゃないかな。


ロッテは“隣のおばさん”みたいに、すごく話しやすいし、何でも相談に乗ってくれそう。

実際、隣に住んでいるんだけどね。

ウェインの方を見ると、嬉しそうにこちらを見ている。

ウェインは無口だけど、頼れる“近所のおじさん”みたい。

欲を言えば、もう少し話をしてくれるとうれしいかな・・・必要最低事項は話してくれるからいいか。


「わかった。

マーヤに教えてくれてありがとうな、ロッテ、助かったよ。」

「いえいえ、私も楽しかったですから。

人手がいるときとか、また手伝いますのでいつでも言ってください。」

「ロッテ、ありがとうございました。

ちょこちょこ聞くと思うけど、その時はよろしくお願いします。」

そう伝えて、ロッテに頭を下げた。




次の日の朝・・・


「おはよう、リヒト。

もうすぐ朝ごはんができるから待ってて。」

「ああ、おはよう。 慌てなくていいからな。」


台所を覗くリヒトに声をかける。

「ねぇリヒト、はい、あー。」

「あー?」

「ん。」

私の声につられてリヒトが口を開ける。

小さなトマトを口の中に放り込んだ。

「んぐっ!」

「おいしい?

今朝、ロッテが取り立てだって持ってきてくれたんだよ。」

リヒトは口をもぐもぐさせながら、首をコクコクと縦にうなづいた。

ちょっと新婚さんっぽい。へへへ。


リヒトはテーブルの方へ行ったけど、多分顔が真っ赤になってるな。

私は知ってるんだぞ~。


リヒトはすぐ顔が赤くなっちゃうから、かわいくて、ついついからかってしまう。


朝ごはんをテーブルに運んで、この家でリヒトと初めて二人だけの食卓を囲む。

テーブルには庭で見つけた一輪の白い花。

おそろいのマグカップで紅茶を頂く。


私も結構、この生活に浮かれているのかもしれない。



◇◆◇



「今日ロッテが、来週からジャガイモの収穫が始まるって言ってたね。」

「あー、言ってたね。

またこの季節がやってきてしまったな・・・。」

「リヒトも手伝うんだよねぇ。 芋掘りってそんなに大変なの?」

「いや、芋掘り自体はそんなに大変じゃないよ。

体を動かすのは好きだし、いい気分転換になるから畑仕事は嫌いじゃないよ。」

「じゃあ、どうしてそんなに嫌そうなの?」

「ジャガイモの収穫の後は、ロッテが飽きるまで蒸かし芋の生活が始まるんだっ!

毎日毎日、芋、芋、芋で、あれがなければいいんだけど・・・。

あ! これからはマーヤも料理をしてくれるのか。

お願いだから、昼も夜も蒸かし芋!っていう献立はやめて欲しいっ。」


リヒトは土下座しそうな勢いで懇願してきた。

なるほど~、ロッテならジャガイモ十個くらいは普通にやりそう。


「ははは、蒸かし芋攻撃ね。

ジャガイモなら保存がきくから、そんなに毎日食べなくてもいいような気がするけど。」

「そうだろう?

でもロッテは、取れたてが一番だからって作ってくれるんだよ。

もうやめて!と毎回言いたかったけど、作ってくれるロッテに悪いと思うと言えなくてさ・・・。

せめて夕ご飯のときは、料理を変えて欲しいな。」

「ジャガイモね~。

みんなで食べるお昼ご飯はまだ私一人では大変だから、ロッテも一緒に作ってくれるの。

お昼ご飯の蒸かし芋は避けられないけど、夜はちょっと考えてみるわ。」


リヒトによると、うちの畑のジャガイモの収穫は三日かけて行うそうで、畑を三等分して、一区画ずつ、午前中は芋掘り、午後はその芋の茎や土を取ってきれいにする作業をするらしい。



ジャガイモかぁ。

やっぱり一番好きなのは、肉じゃがだけど、残念ながらそれは作れないな。

次に思いつくのはポテトサラダ!


あ、思い出しちゃうと、なんか無性にポテトサラダが食べたくなってきた。

マヨネーズ・・・作ってみようかな。


お酢で作るポテトサラダもあるけど、私はやっぱりマヨ派。

高校の時の家庭科の先生が教科書に載っていないものを教えてくれる先生で、調味料とか、紅茶で煮る豚肉とか、簡単美味しい中華料理とか、そんな料理を教えてくれた。


こんなところでその知識が活用されるとはっ!

学校で教わったことって、その時はあまり思わないけど後々活かされてくるのよね。

そうね、マヨネーズとケチャップはここでも作れそうだわ。


“とれたて三日以内”じゃないけど、市場でとれたての卵を買ってくれば生の卵を調理しても大丈夫かな。

ケチャップも作ってみよう、オムレツとかフライドポテトに添えればもっとおいしくなるよ。

ここの世界は、農業が盛んなだけあって作物が豊富なのはすごくいい!

だけどみんなはまだ、それらの調理方法を知らないから味が単調だったり、一通りの調理法しか知らなかったり。


私はあまり料理が得意な方ではないけれど、いろいろな調理方法を知っているからおいしいと思われているところがあって、それはラッキーだったな。

リヒトは、何を作ってもおいしいと言ってくれるから恐縮する。

いやいや、それ、焼いただけですけど!って突っ込みたくなるけど、嬉しそうに食べてくれると、こっちもじゃあ次はどうしようかな、って思っちゃうよね。


まずはジャガイモ攻撃に打ち勝って、リヒトから“おいしい”の言葉をもらおう。



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