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つまり、俺が彼女の夫でして  作者: 森都 めい
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20. お祝いの会


馬のリアンの寝床の掃除をして藁を敷き詰めた後、シャワーを浴びてリビングに行くともうウェインがいた。


「ウェイン、留守の間のリアンの世話、ありがとうな。

困らせたりしなかったか?」

「大丈夫でしたよ。

賢い馬です。 ご主人がいない間、誰の言うことを聞くのか、ちゃんとわかっています。」

「じゃあ乗るときも、リアンは快く乗らせてくれたんだ。」

「はい、問題ありませんでした。」


俺がいない間は、一日おきぐらいでいいからと、馬を走らせることをウェインに頼んでいた。

約一週間とはいえ、ずっと厩では馬と言えども体がなまってしまうだろう。

今までは出かけるときはリアンに乗っていくことが多かったから、こんなに長く離れたことはなくて、俺もちょっと心配だったけどよかった。


ダイニングの方から食器の音がするので見ると、マーヤが料理を運んでいた。

マーヤの方へ行って、声をかけた。

「マーヤ、今日はゆっくりしていればいいのに。 手伝っているのか?」

「リヒト様、シャワーも浴びてサッパリですね。

お皿や料理を運ぶことぐらいならできるかな、と思って。

もう!お料理、とっても美味しそうですよ。」

「ああ、すごいな。

お、ワインも用意してくれたんだ。 マーヤはお酒は飲めるのか?」

「お酒はあまり量は飲めないんですけど、好きですよ。

どちらかというと白ワインが好きです。」

「いーねー、今日はみんなで飲もう。」

「ロッテも飲めるんですか?」

「あはは、あの夫婦は飲めるなんて優しいものじゃないよ。」

「うぐっ、3人寄ると凄そうですね。

私は自分のペースで飲まさせてもらいます。」

「それがいいよ。

俺たちに付き合ってると、大変なことになっちゃうからな!」


マーヤもお酒を飲めるんだ!

いいこと聞いた、夫婦でちょっと一杯って憧れなんだよ。


「こっちの料理もできましたよ~。」

「あ、ロッテが呼んでますから行ってきます。

多分これで料理がそろうと思うので、二人とも席についていてくださいね。」

マーヤは、返事をしながらロッテのところに行った。


ウェインを呼んで席につくと、ちょうどロッテとマーヤが料理を運んできた。

「お待たせしましたね。

さあ、リルマーヤ様も席について。 ウェイン、ワインを開けて。」

ロッテが俺の横の席にマーヤを座らせて、ウェインが開けてくれた白ワインをみんなのグラスに注いでいった。

ロッテも席に着くと、ウェインが仕切ってくれた。


「コーリヒト様、リルマーヤ様、ご結婚おめでとうございます。

このウェインとロッテ、心よりお祝い申し上げます。

どうぞ、これからよろしくお願いします。

では、お祝いの乾杯といたしましょう。」


俺たちは白ワインの入ったグラスを持ち、上に掲げた。

そのあと、マーヤは俺のグラスに自分のグラスを当てた。

かちん、とグラスが鳴った。

貴族の乾杯ってこうするのかな?

「おや、乾杯ってそうやってするのかい?

ウェイン、私たちもやりましょうよ。」

ロッテは気に入ったのか、ウェインのグラスにかちん、と当てた。


ワインを飲むと、お腹に染み渡る。

「くー、美味しいね。

ウェイン、ロッテ、ありがとう。」

「今日はありがとうございます。 こちらこそ、よろしくお願いします。」

「さあさあ、お酒も料理もたくさんありますからね。

各自で自由にやってくださいよ。」


マーヤは、お皿に料理を取り分けてくれたものを俺に渡してくれた。

さっきの料理運びといい、取り分けてくれることといい、なかなか気が利くよ。

こういうところもお嬢様っぽくないなぁ。


「それで、婚姻の儀式はちゃんとできたんですか?コーリヒト様。」

「えー、大丈夫だったよ。

俺はいざという時は、ちゃんとできるヤツなんだよ、ロッテ!」

儀式のことを二人に伝えながら、あの時のマーヤは真っ白で本当にきれいだったなぁと思い返していた。

すかさずロッテから、顔がにやけていて気持ちが悪いからやめてください、と突っ込まれる。

ヤバいヤバい、顔に出ていたらしい。

それにしても、気持ちが悪いとは・・・。

マーヤの前でそういうことは言わないで欲しいんだけど。


「コーリヒト様、酔いが回る前に、あの『剣の舞』をお願いします。」

ウェインからリクエストがかかった。

お祝いされる側が最初に披露って、どうなんだよ。

「あぁ、あの舞はいいですね。

リルマーヤ様も惚れ直しちゃいますよ。」

ロッテまでそんなことを言っている。

マーヤは、直すほどまだ、俺に惚れていないと思うけどなっ!


俺は壁にかかっていた剣を二本取ってきて鞘から出して、両手に持った。

「それでは、二刀流の剣舞を行います。」

俺は二本の剣を使って舞を披露した。

二本の剣がぶつかって音が響くたび、ポーズを取るたびに、『わー』とか『すごいわ』とかマーヤが言ってくれるので、俺は調子に乗っちゃって、いつもより長く舞ってしまった。

せっかくシャワーを浴びたのに、少し汗を掻いちゃったよ。

終わって席に戻ると、マーヤからすごい拍手をもらった。


「リヒト様、すごいです!

力強さの中に華麗さもあって、とってもカッコよかったですわ!」

「ほーら、私の言った通りだよ。

剣舞の時のコーリヒト様はカッコいいんだよ。」

ロッテがドヤ顔で、嬉しそうに言っている。

“剣舞の時”って・・・、いつもかっこいいとは言ってくれないんだね・・・。


「じゃあ、ウェイン、私たちも酔っぱらっちゃう前に踊りましょう。」

「ああ、そうだな。」

「お二人は手拍子をお願いしますよ。」

ウェインとロッテは、毎年10月に行われる収穫祭の踊りを披露してくれた。

楽しそうに踊る二人、それを笑顔で手拍子するマーヤ、そんな三人を見ているとなぜだか、俺はとっても幸せな気持ちになった。


「素敵です! 二人とも、息がピッタリですね。」

「もう何年も踊っているからですよ。

今から新しい曲を覚えろって言われたら、できないって断言できますけどね。

ふぅー、動くと熱くなるね。

酔いがさめちゃったよ。 飲み直しだねぇ。」

戻ってきた二人は、今度は赤ワインを開けて飲み始めた。


「リルマーヤ様も何かやってみますか?」

ロッテがマーヤに聞いている。

「え、私ですか? どうしましょう、何も考えてなかったのですが・・・。

うーん、では歌を歌わせてもらいましょう。」


マーヤは席を立って前に出て、一礼してから歌い始めた。

異国の歌だろうか、歌詞の意味はわからないがゆっくりした曲調で、透き通るマーヤの声が心に染み入る。

もうちょっと聞いていたいと思ったが、曲が終わってしまった。

「失礼いたしました。 1番しか知らないので、これで終わります。」

1番って何かはわからないが、俺たちは拍手喝采でマーヤを迎えた。


「マーヤ、すごいじゃあないか! こんな特技があるとは。

聞きほれちゃったよ。」

「きれいな歌ですね。

言葉がわからなかったけど、他の国の歌ですか?」

ロッテも歌が気に入ったようで、歌について聞いた。

「そ、そうですね、遠いところの歌でしょうか。

えっと、あの、お、おばあ様に小さい頃教えてもらったので、私もよくは知らないのですが・・・。」

「どんな内容の歌なんだ?」

「月夜の様子を歌にしたもので、内容は確か、春の山に陽が沈んでいく昼と夜が入れ替わるころ、風が吹きわたり、辺りは霞み花が香り、空を見あげれば月が浮かんでいる、って感じでしょうか。」

「歌詞は情景的な素朴な歌だな。」

「ちょうど今頃の季節の歌ですね。久しぶりに素敵な歌を聞きましたよ。

ウェインもそうでしょう?」

「ああ。」

ウェインの返事は素っ気なかったが、目を瞑りしみじみとかみしめているようだった。


そのあとは、ヴォルグ家の様子や、俺がいなかった間の町の様子などを話した。

ロッテは、俺が手をつないで家に入ってきたことを聞きたがり、話をはぐらかすのに苦労した。

話好きなロッテのおかげで話題も尽きることなく、四人でわいわい言いながら夜が更けていった。




お祝い会もお開きとなり、ロッテとマーヤは食器を片付けてくれた(ロッテはあんなに飲んだのに、キッチリ片付けて行くところはすごい)。

ウェインとロッテを玄関で見送り、俺たちも二階の部屋へ上がった。


マーヤを部屋まで送る。

「おやすみ、マーヤ。 今日はゆっくり寝ろよ。」

ドアの前に止まり、俺は酔いの勢いもあり、マーヤの手を取ってその指に口づけをした。


「おやすみなさい。」

返事をしたマーヤを見ると、顔が真っ赤だった。


マーヤはそんなに飲んでいなかったけど顔に出るタイプかな、と思いながら、俺は自分の部屋へ行き、ベッドに沈み込むと3秒で寝た。


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