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つまり、俺が彼女の夫でして  作者: 森都 めい
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19. わが家を案内する

前回の続きです。


ガタン、と馬車が止まり、馬がいなないた。


「んんっ?!」

御者のラリーが、前の窓をトントンと叩いた。

「コーリヒト様、着きましたよ~。」


やっば~、俺まで寝てた。

横を見ると、まだ眠そうなマーヤが目をこすっている。

「マーヤ、起きろ、着いたみたいだ。 下りるぞ。」

「あー、いつの間に! すみません、思いっきり寝てましたっ!」


ラリーが馬車のドアを開けてくれた。

俺たちは何事もなかったように涼しい顔をして、まず俺が下りた。

そしてマーヤの手を取り馬車から降ろした。

「ラリー、ありがとうな。 荷物を家まで頼むよ。」

「かしこまりました。」

頭を下げてお辞儀をしたラリーと目が合った。

ラリーは満面の笑みだった。

「仲が良くて、誠によろしゅうございます。」

だから、言わないでくれよ!

手をつないでいるのは、マーヤが離してくれないからであり・・・。

でも、これから一緒に住んでいく家に奥さんと手をつないで入れるのは、ちょっと嬉しいかも。


俺はマーヤの手を引いて、家の玄関に案内した。

家に入ると、ウェインとロッテの夫婦が出迎えてくれた。

「おかえりなさいませ、コーリヒト様。」

「ただいま。 長い留守を預かってくれて、ありがとう。」

二人の顔を見ると、目が点になっていた。

ロッテなんて、開いた口がふさがらない感じで、あふあふ言っていた。

そんな二人はスルーだ。

お願いだから言葉にするなよ! こっちが恥ずかしくなるからっ!


「マーヤ、紹介するよ。ウェインとロッテだ。

二人には家のこと、畑のことなど、いろいろ頼んでいるから何でも聞いてみるといいよ。」

「ウェインと申します。 よろしくお願いいたします。」

「コーリヒト様、どうしちゃったんですか? その手・・・。」

「ロッテ、それはいいからまずはご挨拶をしなさい。」

ロッテはウェインに言われて俺たちの顔を見回し、あっと気づいて挨拶をした。

「ロッテです。 よろしくお願いいたします。」

「そして、リルマーヤだ。 二人ともよろしく頼む。」

「リルマーヤです。 これからどうぞよろしくお願いします。」


挨拶を交わしている間に、ラリーが荷物を運んでくれた。

「では、コーリヒト様、私はこれで失礼いたします。」

「ああ、ありがとう、ラリー。世話になったな。

帰り道、気を付けて帰ってくれよ。」

ラリーは、馬車に乗って戻っていった。


「ふぅー、びっくりしていろいろ聞きたいことはあるけれど。

積もる話はあとにして、コーリヒト様、夕食はいつもの時間でよろしいですか。」

「ああ、大変だけどよろしく頼むな、ロッテ。」

「四人分くらいは全然大丈夫ですよ。

お任せください。

夕食までまだ時間はありますから、ゆっくりしてください。」

「そうさせてもらうよ。ありがとう。」

ロッテが気をきかせてくれたので、俺はその言葉に甘えさせてもらうことにした。



「マーヤ、この家を案内するよ。

まず、こっち側がリビングと台所だ。」

リビングと、食卓と台所は一間続きでつながっている。

リビングにはソファを置いてある。

食卓は、みんなで食べることが多いから、一人暮らしとしては大きめのテーブルだ。


「ここで過ごすことが多くなるな。

そして、その奥が風呂場とトイレだよ。

俺は町の公衆浴場によく行くから、家ではシャワーがほとんどだな。

ご希望通りのお風呂になっているといいんだけど。

また、ゆっくり見てくれ。」


この国では、町には必ずと言っていいほど公衆浴場が建てられている。

魔石を使った娯楽の一つで、役場で管理されている。

お風呂も広いし、町の人からの話もいろいろ聞けるから俺はよく利用する。


「そして玄関ホールの西側は、こっちは応接間で、廊下をはさんで反対側は物置部屋かな。

日が当たらないから、こういう使い方になっちゃった、というのが今の現状だ。

そして奥には地下に降りる階段があって、保冷庫があるよ。

灯りがなくて、ろうそくを持っていかなくちゃいけないから気をつけて。」

「保冷庫ですか。 冷凍庫もありますか?」

「鉄製の箱を置いてあるけど、小さいから氷を作るくらいしかできないと思うよ。

コンヴィスカント家には大きいサイズの冷凍庫があったのか?」

「そうですね。

それなりに大きかったような気がしますけど、やはり主に氷かな。

料理長は、夏に氷菓子を作ってくれて、お兄様と一緒に食べたのを覚えています。」

「氷菓子か。それはおいしそうだな。

俺なんか、氷菓子なんてほとんど食べたことがないからなぁ。

保冷庫の管理もロッテにお願いしてあるから、また今度ロッテに教えてもらえばいいね。

それから、二階だな。」


階段を上がって、今度は二階を案内する。

「北側は、客人用の寝室が大小合わせて三つ。

といっても、使うのは時々来るトリス兄様ぐらいかな。

南側は、俺の仕事場と、寝室、そしてマーヤはこの部屋を使ってくれ。

母上がいろいろ整えていたからきれいになっていると思うよ。

あと、最初に言っておくけど、俺の部屋とマーヤの部屋は中で行き来ができるようになっているからさ・・・。」

ちゃんと最初に言っておかないと、あとで問題になっても困るしな。

行き来ができるドアにカギをかけられたらかなりショックだけど・・・。


「ラリーが運んでくれた荷物は、マーヤの分も俺の部屋にあるから運ぶよ。」

「ありがとうございます。」

「食事までまだ時間があるから、ゆっくりしていていいよ。

俺は、馬の様子でも見てこようかな。

留守の間、ウェインに馬のことはお願いしていたけど、こんなに長く世話を他の人にお願いしたのは初めてだから。」

「いいですけど・・・リヒト様の荷物はいつ片付けますか?」

「え?」

「えぇ?! もしかして、放置ですか?」

「あはははは。」

「うふふふふ。 もう!一緒に片付けますから、今すぐやってしまいましょう。」

「いや~、また今度でいいよ。」

「いーえ、バタバタしているうちに片付けちゃいましょう。

私も、どこに何を片付けるのか教えてもらいながら手伝いますから。」

「えーと・・・。」

「ねっ!」

「・・・はい、わかりました・・・。」


世の男性は、こうやって徐々に妻の尻に敷かれていくんだろうか・・・。

マーヤの言っていることの方が正論だから、何も言えないんだけどさぁ。

今回持って行った俺の荷物って、何を隠そう、マーヤとの結婚の話を親父殿にされたときに持って行ったものなんだよな。

下着だけ入れ替えてそのあとも使っていたけど、ほぼ置きっぱなしの荷物だった。


しょうがない!ここでちゃんと片付けるのもいいか、と思って、マーヤと片付けました。

洗濯物を出して、着ていない服はクローゼットにしまって、小物類も片付けて、バッグも物置部屋において。

二人でやればあっという間なんだけど・・・。

片付けようって、気合い入れて手を出すまでになかなか時間がかかるものなんだよ。


「リヒト様の荷物は片付きましたね。

これで、心置きなく馬さんのところに行ってあげてください。」

「ありがとうな。 マーヤは何をしてるんだ?」

「私は何がどこにあるかを確認しながら、自分の荷物を片付けていますね。」

「あー、マーヤの引っ越しの荷物は、俺たちがヴォルグの家に行っている間に侍女さんたちが片付けておいてくれたからな。」

「はい、新しい家具も入れてもらったし、ちょっと楽しみです。」

「今日は移動で疲れただろうから、のんびりやれよ。

これから、時間はたっぷりあるからさ。

じゃあ、行ってくるよ。」


俺は、マーヤの荷物を部屋に運んだ後、家の外に出て厩に行った。

馬は、俺がこの仕事に就くときに親父殿がお祝いだと言って選んでくれた。

明るい栗毛色をした牡馬だが、性格がおとなしく、クリクリっとした黒目がかわいい。

鼻筋に白い毛が通っているのが、アクセントになってカッコイイんだ。

厩に近づくと、俺の気配を感じたのか、ブルルルルと鼻を鳴らしている。


「よお、リアン。 元気にしていたか!

長く留守番をさせてごめんな。」

手を伸ばすと、リアンは顔を俺の手に寄せてくる。

前足をガッ、ガッ、と足踏みしている。

ゆらゆらと揺れるしっぽが嬉しそうだ。

「俺もお前に会えてうれしいよ。 ブラッシングしてやるからな。」

ブラシを取ってきて、馬の首から背中、お腹、お尻と念入りにブラッシングしていく。

単純な作業だが、うまく考えがまとまらない時やモヤモヤしている時に、集中してやると結構気持ちが落ち着くんだ。

尻尾も梳かしてようやく終了。

馬って体が大きいから、やり始めると時間がかかる。


前に戻って、顔を撫でてあげると、気持ちよさそうに目を細めている。

「リアン、俺、嫁さんをもらっちゃったよ。

リルマーヤっていう、とっても素敵な女性だよ。

今度紹介するからな。

きっとリアンも気に入ってくれると思う。

マーヤもリアンのこと、絶対好きになってくれると思うから、仲良くしてくれよな。」


リアンは、『そんなことわかってるよ』と言いたげに、頬を寄せてきた。



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